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コラム

仕事に関係ない遊びが仕事に活きる? 職場における”遊び”の科学(セミナーレポート)

コラム

ビジネスリサーチラボは、2023216日に「仕事に関係ない遊びが仕事に活きる?:職場における遊びの科学」を開催しました。冗談を言い合ったり、ふざけ合ったりする“遊び”。「仕事中に遊ぶ」と聞くと、「けしからん」と思う方が多いかもしれません。しかし“遊び”が良い効果をもたらすことを指摘する研究もあります。

本セミナーでは、ビジネスリサーチラボ フェローの小田切岳士と、代表取締役の伊達洋駆が講師を務めました。小田切からは、“仕事に関係ない遊び”が職場にもたらす効果についてご紹介しました。伊達からは、職場で仕事に関係ない遊びを促すアプローチや、注意すべき点について解説しています。

本レポートは、セミナーの内容を基に編集・再構成したものです。

登壇者

小田切 岳士

同志社大学心理学部卒業、京都文教大学大学院臨床心理学研究科博士課程(前期)修了。修士(臨床心理学)。公認心理師、臨床心理士。働く個人を対象にカウンセラーとしてのキャリアをスタートした後、現在は主な対象を企業や組織とし、臨床心理学や産業・組織心理学の知見をベースに経営学の観点を加えた「個人が健康に働き組織が活性化する」ための実践を行っている。特に、改正労働安全衛生法による「ストレスチェック」の集団分析結果に基づく職場環境改善コンサルティングや、職場活性化ワークショップの企画・ファシリテーションなどを多数実施している。

 

 

伊達洋駆

神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。著書に『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)や『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)などがある。2022年に「日本の人事部 HRアワード2022」書籍部門 最優秀賞を受賞。

 

1.“仕事に関係ない遊び”がもたらすもの

小田切:

まずは私から、「“仕事に関係ない遊び”がもたらすもの」をテーマにお話しします。突然ですが、皆さんに質問です。仕事中、図1のような行動を取る従業員がいた場合、あなたは許せますか。

図 1:“遊ぶ”従業員を許せますか?

おそらく多くの方は、「そんなのありえない」「不謹慎だ」と思われるでしょう。しかし、“仕事に関係ない遊び”が、実は良い効果をもたらすことが研究知見からわかっています。そこで今回は、仕事に関係ない遊びがもたらす効果、良い遊びの特徴、遊ぶ上での注意点などをご紹介します。

1)職場で起こる2つの遊び

職場で起こる遊びについて、研究では次の2つがあると指摘されています。

  • 仕事に“関係する”遊び
  • 仕事に“関係ない”遊び

今回のテーマは後者ですが、関係性を整理するために、まず前者からご紹介します。

仕事に関係する遊び

仕事に関係する遊びの例として、「ゲーミフィケーション」が挙げられます。ここで言うゲーミフィケーションとは、「仕事にゲームデザインの要素を用いること」を指します。例えば、図2のようなものです。

図 2:ゲーミフィケーションの例

ゲーミフィケーションは、様々な望ましい成果をもたらすことが、研究で示されています。例えば、次のようなものです。

  • パフォーマンスの向上
  • 学習意欲・学習行動の促進
  • 自律的な行動の促進
  • ストレスの抑制

ビジネスリサーチラボでは、ゲーミフィケーションをテーマにしたセミナーを開催しています。ゲーミフィケーションについて深く知りたい方は、セミナーレポートをご覧ください。

人事・HR事業者のためのゲーミフィケーション入門:ゲームの発想で人事を変える!?(セミナーレポート) 

自律型人材の育て方:ゲーミフィケーションの可能性(セミナーレポート) 

仕事に関係ない遊び

今回の本題である「仕事に関係ない遊び」ですが、なかなかイメージしにくい概念かと思います。そこで、いくつか例を見ていきます。図3,4は、工場現場と、ハイテク企業のオフィスで観察された事例です。

図 3:工場現場で観察された遊び

図 4:ハイテク企業で観察された遊び

2つとも、すごい例ですよね。もう少し、現実味のある例を考えてみましょう。例えば皆さんは、次のような経験をされたことはありませんか。このような出来事も、仕事に関係ない遊びを表しているといえます。

  • 社内で顔を合わせたとき、挨拶に続いてお決まりの雑談が始まる
  • 会議中、変な声で相づちや返答をして、それに対するツッコミが入る
  • 大したことのない個人的な相談を、深刻そうな雰囲気で始める

以上のような仕事に関係ない遊びに対して、やはり「ふざけるな」「いかがなものか」と思った方がいらっしゃるかもしれません。なぜそのように感じてしまうのか、その感情の背景を考えてみます。

先ほどご紹介した、仕事に“関係する”遊び、例えばゲーミフィケーションは、仕事を遊び化しています。つまり、仕事をしているので「問題ない」と感じる。他方で、仕事に“関係ない”遊びは、文字通り仕事に「関係ない」ので、仕事を中断して行われている。そのため、「それは問題なのでは」と感じてしまう。このような背景が考えられます。

ただし、この仕事に関係ない遊びが、職場に良い効果をもたらす可能性があると、研究では示されています。

2)仕事に関係ない遊びの効果

仕事に関係ない遊びが、職場に何をもたらすのか。それは、「“愚かでも良い”安心感」「仲間意識」の2つです。

「愚かでも良い」安心感

先ほど図4で挙げたハイテク企業のAさんの行動は、職務怠慢と思われるリスクがあるかもしれません。ただ、先輩のBさんや、社長にすら咎められず、むしろもっと遊ぶように促されています。

このような雰囲気の職場だと、「仕事上で失敗をしたり、突飛な意見を言ったりしたとしても、恥はかかないだろう」と安心できるのです。

仲間意識

仕事に関係ない遊びの中であれば、ただの遊びなので、「自分も相手も失敗しても問題ない」と感じながら交流ができます。また、例えばゲームをしている時は、ゲームに勝つためにお互いを応援したりするでしょう。

このようなことがあると、「この職場は自分を受け入れてくれていて励ましてくれる」「仕事を抜きにしても、本当の意味で仲間だな」と感じられるようになります。

「愚かでも良い」安心感と、仲間意識。この2つがあると、さらに次のような望ましい成果をもたらすことも示唆されています。

  • 意見を言うことへの安心感
  • お互いの能力や可能性の尊重
  • ネガティブフィードバックをする・されることへの安心感
  • リスクを取り、失敗するとしても挑戦する意欲
  • 助け合い行動

仕事に関係ない遊びは「人間関係」に効く

ここまでの議論を整理します。仕事に関係ない遊びは、いわば「人間関係」に効く。しかも最終的に個人の成果にも結びつく可能性もあります。

ここで興味深いのは、仕事に関係する遊びとの関係性です(図5)。仕事に関係する遊び、例えばゲーミフィケーションは、個人の成果を対象としたものが多いです。営業成績をランキング形式で表すことで、個人のモチベーションは促せるかもしれません。ただ、組織として人間関係が良くなるかと問われれば、少し難しいようにも思えます。

仕事に関係する遊びと、仕事に関係ない遊びを同時に考えていく。それにより、個人・組織どちらの成果にも結びつけられる可能性があるのです。

図 5:仕事に関係ない遊び・関係する遊びの関係性

3)良い遊びの特徴

仕事に関係ない遊びは、人間関係にポジティブな効果をもたらします。とはいえ、「とにかくずっとふざける」のは問題です。そこで、良い遊びの特徴や、遊ぶ上での注意点について、研究知見をご紹介していきます。なお今回の「良い、仕事に関係ない遊び」とは、職場の人間関係を良くする遊びと定義します。

研究で示唆されている良い遊びの特徴には、例えば次のようなものがあります。

  • 自発的に始めている
  • 立場にかかわらず誰もが始められる
  • 2人以上で行っている
  • 遊びの強度が増し、広がっていく
  • 仕事との境目が明確である など

この他にも様々な特徴が指摘されているのですが、今回私から強調してお伝えしたい、最も重要な特徴は、「自分の感情や愚かさを、遊びの中で見せられていること」です。

例えば遊びの中で、声を出して喜んだり悔しがったり、時には演技のように大げさに振る舞う。また、遊びの中で失敗したり下手な姿を周りに見せていたりする。このようなことが起こっている遊びは、良い遊びと言えます。逆に、相手ばかりを小馬鹿にしたり、蔑んだり傷つけたりするような発言があるのは、良い遊びとは言えません。

4)組織としてできること

仕事に関係ない遊びは強制すべきでない

注意点として、仕事に関係ない遊びは「強制すべきでない」ことが研究から示唆されています。施策や制度によって、組織が従業員を遊ばせようとすると失敗するのです。

Thorsted2008)は、ある企業における仕事に関係ない遊びが、社内の新しいソーシャルネットワークや情報のチャネルを生み出すことを発見しました(図6)。その結果を踏まえて、企業は施策として遊びを取り入れようとしました。例えば、遊び方を指定したり、特定の部署間の関係性を促したいので、その両者で遊ばせたりするといったことです。

そのような形で遊びを促そうとしたところ、興味深いことに、介入以前に見られていたようなポジティブな結果は再現されませんでした。この結果を踏まえ、Thorstedは「遊びは予測不可能であり、公式のように再現することができない」と結論づけています。

図 6:遊びは再現できない

自発的な遊びが生まれる環境をつくる

仕事に関係ない遊びは、強制すべきではない。その前提を踏まえて、組織としてできることは「自発的な遊びが生まれる環境をつくる」ことです。従業員自身が、遊んでもいい、ぜひ遊びたいと思える環境や状況を作っていく必要があります。例えば、次のような方法が考えられます。

  • ビリヤード台などがあるプレイルームを設置する
  • 遊びを許容する文化、ユーモアを大切にする文化を醸成する
  • 仕事に「あそび(余裕)」をもたせる。早く終わったからといってすぐ次の仕事を入れない

5)まとめ

遊びは自発的であることが重要ですので、「遊んでください」とは言いません。ただ、本日の内容を聞かれて、何かピンとくるものがあった方から、遊んでみてはどうでしょうか。しかも、遊びといってもゲームをする必要はありません。まずは雑談からで構わないので、遊び心やユーモアをもって、同僚の方と接してみてはいかがでしょうか。

また、「2人目に遊ぶ人を見つけること」も重要です。デレク・シヴァーズの『社会運動はどうやって起こすか』でも言及されていますが、2人目が遊び出せば、みんなが続く可能性が高くなります。皆さんご自身に加えて、2人目に遊ぶ人を見つけて誘ってみてはいかがでしょうか(図7)。

図 7:あなたから遊んでみてはどうでしょう?

2.仕事に関係ない遊びを職場に位置づける

伊達:

私のパートでは、どのように遊びを実践に移していけばいいかを考えます。ただ、これは難しい論点なので、何か明確に「これさえしておけば大丈夫」といった結論や、ノウハウを明示できるわけではないことをご了承ください。

小田切さんも触れていましたが、遊びの魅力かつ難しさとして、遊びがあくまで自発的なものであることが挙げられます。「遊べ」と強制してしまうと上手くいかないですし、強制した時点で、もはや仕事になってしまいかねません。

仕事に関係ない遊びを生み出していくためには、仕事に関係ない遊びが自然と生まれるようなトリガーを、職場の中に埋め込んでいく必要があります。その例として、ビリヤード台や卓球台が置くことなどが挙げられます。

他方で、「遊びのトリガーを埋め込むことは、本当に大丈夫なのだろうか」と疑問に感じる部分もあります。例えば、皆さんが学生で、受験勉強をしているとします。もしテレビやゲームが自分の部屋に置かれていたら、確かに自発的に遊びはするものの、勉強に戻ることはできなくなってしまいそうです。

1)仕事と仕事に関係ない遊びを共存させる4つの観点

このように、仕事と、仕事に関係ない遊びは、両立が簡単ではありません。その上で、仕事と遊びを共存させていく方向性を考えてみます。

仕事に関係ない遊びが厄介なのは、仕事から離れる「遠心力」が働いていることです。例えば受験生の部屋にゲームがあった場合、ゲームが遠心力として機能してしまい、勉強に戻れなくなります。逆に言えば、仕事に戻るための「求心力」が必要です。

仕事に戻る求心力を高めるアプローチとして、今回は4つの観点を紹介します。

遊びの空間と時間を区切る

例えば、「ここは遊びの場で、ここは仕事の場」といったように、場所で分けます。近年そうしたオフィスも登場しています。また、「今から○時までは遊びの時間です」と区切ったりするのもあり得ます。

このような方法をとると、確かに求心力が働いて仕事に戻ることはできそうです。ただ、設計されすぎているような気もします。遊びが持っている自然発生的な側面から距離が開く懸念もあります。

遊びを非同期化する

非同期のコミュニケーションを用いて、仕事に関係ない遊びを行う方法もあります。例えば、チャットでお互いにふざけ合うことが考えられます。どの企業のチャットツールにも多くのチャンネルがあります。その中で雑談するチャンネルを作ることもあるでしょう。

リアルタイムで遊ぶのではなく、非同期化することで、自分のタイミングで遊びに加わって、自分のタイミングで抜けることができる。そうすれば、仕事に戻りやすくなります。

ただ、リアルタイム性がないと、盛り上がりに欠ける可能性があります。小田切さんのパートでハイテク企業の例がありましたが、あの事例が非同期だったら、同じように盛り上がるでしょうか。非同期の良さが、遊びの盛り上がりを妨げる可能性があるかもしれません。

仕事に戻りやすい人を誘う

例えば、誠実性が高く、几帳面で真面目な性格の人を巻き込んだり、自分の行動を統制することができる人を遊びに誘ってみたりする方法も考えられます。仕事に戻りやすい人であれば、たとえ一度遊びを行ったとしてもすぐに仕事に切り替えて戻ってこられそうです。

一方で、仕事に戻りそうなタイプの人は、遊びから遠いタイプの人とも考えられるので、そもそも遊びに参加してくれないかもしれません。うまく巻き込む方法を考えていく必要がありそうです。

オンオフ切り替え風土を醸成する

例えば、オンとオフの切り替えを大切にする風土を醸成したり、仕事も遊びも集中して行う風土を作ったりする方法が考えられます。仕事に戻りやすい風土もいいでしょう。

ただ、風土の醸成はすぐにできることではありません。時間がかかることが、難しさとして挙げられます。

2)今起きている遊びを見つけ、守る

ここまでは新しく遊びを促していく方向性を示しましたが、もう一つの観点として、今起きている遊びを大切にする方向性もあります。

職場においてどのような遊びが起きているのか、ぜひ探ってみてください。皆さんの職場やチャットをよく観察すると、何らかの遊びが起きているはずです。現状起きている遊びがつぶされないように、守っていただきたいのです。

仕事に関係ない遊びなので、「遊んでいる暇があったら仕事してください」と圧力が加わってきます。ただ、今回見たように、仕事に関係ない遊びは、人間関係を良くします。遊びをつぶそうとする力から守ることが重要です。

参加者からのコメント・質疑応答

納会や暑気払い、工場で現場対抗の綱引き大会をやったところ、組織のまとまりが良くなった。会社としてイベントをやろうと投げかけた形だったが、意外に盛り上がった

小田切:

私のパートで、「仕事に関係ない遊びは、自発的に行われている必要がある」とお話ししました。このコメントを拝見すると、毎回ではなく、たまに組織が主導する形を取ることで、「この会社では遊びが許される風土なのだな」「仕事に関係ないことも楽しめる文化なのだな」といった感覚につながる可能性がありそうですね。気づきをいただけました。

伊達:

かつての日本の職場の中には、遊びがうまく埋め込まれていた可能性があります。例えば、飲みニケーションや無礼講なども、遊びの一形態だったのかもしれません。それらの方法が現在でも全て通用するわけではありませんが。

仕事は遊ぶべきものだと思っている。とんでもない発想の実験をやって大体失敗するがそれは内緒にする。実験結果に関してディスカッションしていて、実験前にコーヒー一杯を賭けるなど。

小田切:

今回は遊びを「仕事に関係する/しない」の二分論で紹介しましたが、分類自体が重要なのではありません。コメントのように遊び心を忘れずに仕事をするのは、素晴らしいと思いました。

遊びや遊び心は、クリエイティビティや自律に影響すると、研究の中でも指摘されています。研究職など、想像力や発想力が必要な領域では、特に良い効果をもたらすことが予測できます。しかも、他の人も含めて遊んでいるので、今回挙げた人間関係の円滑化にもつながっていますね。

真面目すぎて遊びが生まれにくい。効率やタイムパフォーマンスが求められ、遊んでいる社員に対して、「暇でいいよな」と捉えている雰囲気が感じられる。まずはその雰囲気をどう打破していくかが課題だと感じる

伊達:

心理的安全性が、一つの参考になりそうです。心理的安全性を高める際には、まず「上司が弱みを見せること」が重要だと指摘されています。これを応用すると、上司がまずふざけてみたり、冗談を言ってみたり、愚かさを見せたりすることが考えられます。

また、「ひそかに遊ぶ」こともありえるでしょう。みんなの前で公然と遊ぶのは難しくても、仲が良い者同士でふざけ合うことから始めてみるのは良いかもしれません。

小田切:

「遊び」と表現すると、「仕事ではないこと」と捉えられてしまい、冒頭でお話しした「ありえない!」といった倫理観的な話になってしまう傾向があります。ただ、逆に遊びや人間的な関わりを無視して、組織としてよいパフォーマンスを挙げられるのかについて、一度考えてみてもらうことは重要でしょう。

部や課に設定されている懇親費が使われない。「減っていないぞ」と強制して遊ばせるのは、ある意味文化形成だと思いますが、強制に当たるでしょうか

小田切:

まず、懇親費を設定されているのが素晴らしいです。そのうえで、「遊んでみたくなる状況や環境を作ること」が重要です。例えば、実際に懇親費を使って遊んでいる部署に取材して、その部署でどんな遊びしたか、遊びに参加したメンバーの感想などを集めて、それを広報していくことが考えられます。「遊べ」「懇親費を使え」と強制するのではなく、じわじわと遊びたい欲求を生む仕掛けを作れると良いでしょう。

遊びが定着しやすい職場と定着しづらい職場の風土特徴はあるでしょうか

小田切:

定着しにくい職場の特徴としては、例えば忙しすぎたり、仕事に余裕がなかったりすることが挙げられます。

伊達:

遊びは「資源」が必要になるのでしょう。遊びが定着しやすい職場は、遊ぶための資源がある職場と考えられます。

オンラインでの業務が中心になると相手の様子がわからないため、誘いの声がけすら抵抗感が出ていると思います。仕事の用件以外では会話すらしない(できない状況)が生まれていると思います

伊達:

先ほど挙げた「遊びの空間を区切る」「遊びの非同期化」を使用することが考えられます。例えば、チャットツールで情報共有用のチャンネルを作ってみると、ふざける余地が生まれます。ビジネスリサーチラボでも情報共有のチャンネルを作っていますが、そこでのやりとりは仕事と雑談的な内容が混在しています。

小田切:

初めて告白しますが、伊達さんが入ってない、フェローだけの雑談用チャンネルもあります。そこでは、より砕けた雑談が行われています。

伊達:

まさに「ひそかな遊び」ですね。全ての遊びが公開されている必要はありません。そのような発想でやってみると、身近なところから遊び始めることができますよね。

仕事に関係ない遊びと業績の相関関係について、経営層に説明したいと考えています。流れとしては、次の内容でよいでしょうか。「仕事に関係ない遊び→人間関係の向上→離職防止、生産性の向上、イノベーションの創出、心理的安全性の向上」

伊達:

途中の「人間関係の向上」が、まさに心理的安全性を指しています。心理的安全性は、人間関係を表す学術的な概念として、近年では有望なものの一つです。

他方で、経営層に説明する際には、「遊び」という言葉を使わない方法もあり得ます。例えば「非公式なコミュニケーション」など、伝え方は工夫できそうです。

 

以上で、全てのご質問にお答えできました。最後に小田切さんから一言お願いします。

小田切:

ありがとうございました。「遊び」と表現すると「仕事と正反対のもの」「いかがなものか」と捉えられがちです。ただ、今回紹介したように、遊びにはポジティブな効果をもたらす可能性があります。今後も遊びについて一緒に考えていければ幸いです。

伊達:

全員を無理に遊びに巻き込むのではなく、ひそかな遊びが縦横無尽に張り巡らされていると良いかもしれないと感じました。本日は、ありがとうございました。

(了)

 

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