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コラム

若手育成の科学:タイプ分けから考える育成アプローチ(セミナーレポート)

コラムセミナー・研修

株式会社ビジネスリサーチラボは、2022831日に株式会社ファーストキャリアと共同で「若手育成の科学:タイプ分けから考える育成アプローチ」を開催しました。本セミナーでは、株式会社ビジネスリサーチラボの伊達洋駆と、株式会社ファーストキャリアの佐藤躍平氏が講師を務めました。

若手社員を育成するためには一律的なアプローチだと十分に機能しません。一方で、完全に個別対応するのは負担がかかります。ビジネスリサーチラボとファーストキャリアは共同調査を行い、若手社員のタイプごとに育成アプローチを検討しました。

伊達からは調査の背景や調査結果をもとにした5つのタイプを紹介し、佐藤氏からは、タイプごとの育成アプローチ例を解説しています。その後、対談形式で質疑応答する3部構成です。

本レポートはセミナーの内容をもとに編集・再構成したものです。

登壇者

伊達洋駆:株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。著書に『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)や『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)などがある。

佐藤躍平氏:株式会社ファーストキャリア 営業企画推進室 マネージャー
大手人材企業に入社後、採用~育成支援業務に携わる。
採用戦略設計、インターンシップコンテンツの制作、トレーニングプログラムの構築など
アンケート、インタビューでのファクトに基づいた施策づくりに10年以上従事。
現在は株式会社ファーストキャリアにてマーケティングリサーチ、調査レポート作成、コンテンツ開発等を行う。


1.若手社員のタイプ分け:新人対象の調査をもとに

1-1.共同調査の背景と方法

伊達:

若手育成について論じる際、「最近の若手はこうだ」「○○世代はこんな特徴がある」といった議論になりがちです。こうした世代論を否定するわけではありませんが、限界もあります。

確かに、世代論によって若手の全体傾向を大まかに把握できるかもしれません。しかし、若手社員と一口に言っても、色々なタイプの人がいます。例えば、皆さんは自分と同じ年に入った同期と、同じ性格や価値観を持っているでしょうか。そうではないはずです。

さらには近年、共通の方法で似たような人材を獲得する採用から、複数のアプローチで様々な人材を獲得するマルチルート化が進んでいます。同年代とはいえ、多様性が増しているということです。

とはいえ、この状況下で、若手育成について個別に対応していくのはコストフルです。そこで今回は若手社員のタイプ分けを目的に調査を行いました。20224月、同年に新卒入社した438名から回答を得て、若手社員を統計的に分類しました。

調査にあたっては、「新人の職場適応に影響を及ぼす個人の特性」を取り上げ、タイプ分けの軸としました。例えば、「自尊感情」という自分を肯定的に捉える傾向です。先行研究で、自尊感情が低い人ほど、能力不足だと思われると懸念して、周囲に情報を求めにくいことが分かっています。これは職場でうまくやっていく上で大切な特性です。

こうした軸をいくつか設定し、タイプ分けを行いました。タイプ分けには「クラスター分析」を用いています[1]

1-2.若手社員の5タイプとその特徴

クラスター分析によって抽出した、若手社員に関する5つのタイプを、「マイペース」「チームリーダー」「チームフォロワー」「モデスト」「ケアフル」と名付けました。

それぞれのタイプごとに軸の値が異なっています。軸の値を参考に、各タイプの特徴を読み解いていきましょう。身近な若手社員を思い浮かべながら、「どのタイプに近そうか」をイメージしてみてください。

マイペースタイプ

マイペースタイプは自分を高く評価しています。また、周囲からの評価や周囲の様子をあまり気にせず、自分の意見を周囲に積極的に伝えます。マイペースタイプは全体の中で24%です。

マイペースタイプの魅力は、自分の考えに基づいて物事を進められる点です。どんどん意見を言えるので、推進力があります。他方で、そのことによって周囲から浮いてしまう可能性や、若手らしくないと思われる可能性もあります。

チームリーダータイプ

チームリーダータイプは、他の人の様子に敏感で、周囲と良好な関係を構築したいと考えています。ただし、周囲に臆することなく自分の意見は伝えようとします。今回の調査では、18%の人がチームリーダータイプでした。

チームリーダータイプは、人当たりが良い上に、自分の意見を言って物事を推進していくことができるため、まさにリーダーを務められる人物です。他方で、自分の意見を言う積極性が、先輩や上司によっては煩わしく感じられるケースもあるかもしれません。

チームフォロワータイプ

チームフォロワータイプは、社交的で周囲との関係を重視します。自分の役割を認識し、状況に応じた振る舞いができます。ただし、自分の意見は積極的に主張しません。チームフォロワータイプは19%でした。

チームフォロワータイプの長所は、チーム内で求められる役割をうまく遂行でき、チームに溶け込みやすい点です。ただし、自分の意見をあまり述べないため、能力の割にチームの中に埋没してしまい、目立たない存在になる可能性があります。

モデストタイプ

モデストタイプは、控えめな性格で、他者とのコミュニケーションに緊張し、周囲とは慎重に関わっていきたいタイプです。周囲と積極的に関わる傾向のある、これまでのタイプとは異なります。モデストタイプは全体で30%でした。割合からすると、最も多いタイプです。

モデストタイプの長所は、周囲から見たときに自分がどう見えるかを意識できる点です。他方で、自分から周囲に対する働きかけについて消極的であるため、周囲との関係構築が遅れます。

ケアフルタイプ

ケアフルタイプは、対人関係に敏感です。自分にあまり自信を持っておらず、言ってみれば、自分を押し殺して周囲の人と接するようなタイプです。今回の調査では、8%がケアフルタイプに該当しています。

ケアフルタイプは、周囲の様子を敏感に察知できます。他方で、集団の中で強い不安を感じたり、対人関係や仕事のことで悩みを抱えたりする可能性があります。しっかりフォローが必要なタイプだと言えるでしょう。

2.若手社員の5タイプへの働きかけ

2-1.組織の雰囲気に関する4つの種類

佐藤:

新人の組織適応、すなわち、オンボーディングにおいて重要になるのは、組織の雰囲気です。組織の雰囲気は大きく4つに分けることができます。

プレーヤー主体組織

組織の雰囲気としては、個人主義の集まりです。上司もプレーヤーを兼務し、忙しくしています。OJT担当はいますが、先輩社員も忙しいので、分からないことがなかなか聞けません。中途入社が多く、社員ひとりの仕事量が多いなどの特徴があります。一般に即戦力採用を進めてきた会社はプレーヤー主体組織になりがちです。新卒の配属が数年から十数年ぶりということもあります。

関係重視組織

メンバーの仲が良く、プライベートでもよく会ったり遊んだりします。その反面、体育会色が強かったり、上下関係が厳しく上の意見が強かったりするケースもあります。関係重視組織は、コミュニケーションの量が多いのが特徴です。年齢の近いメンバーが多く、みんなで話し合って物事を決める雰囲気があります。

成果至上主義組織

成果が組織の共通言語になっていて、そのための思考や行動が求められます。成果を上げることが目的になってくるので、社内のプレッシャーが強い場面もあります。スピード感が重視され、ミスにも寛容ではありません。プレーヤー時代に成果を上げた社員が上司になり、上司のマネジメントスタイルが自己流のケースもみられます。

個人尊重型組織

先進的な取り組みをしている大手企業や、メガベンチャーなどはこの組織が多い印象です。若いうちからプロジェクトにアサインされ、部署異動も柔軟でチャレンジを歓迎する風潮があります。自由で開かれている分、成果に対してはある程度厳しく、責任が求められます。 

さて、4つの組織を挙げましたが、5つのタイプの若手社員は、どこの組織に配属されるとフィットしそう、あるいは苦労しそうですか。

例えば、マイペースタイプは、プレーヤー主体組織では自分の考えで仕事を進めても良いため、フィットしそうです。ただし、成果至上主義組織には、組織の価値観とズレがあると合わないでしょう。

また、チームフォロータイプが個人尊重型組織に配属された場合、なかなか主張をしないので、最初のうちは苦労するかもしれません。モデストタイプやケアフルタイプは自己主張をあまりしないため、関係重視組織やプレーヤー主体組織では放置される可能性があります。

これらの例は、配属や異動で、本人のタイプによってはビハインドから出発する可能性を示しています。若手社員の特徴と環境の相性を念頭に置いてアプローチする必要があります。 

2-2. 若手社員へのアプローチ方法

伊達さんが説明してくれた、若手社員の5タイプの特徴をさらに掘り下げるべく、タイプごとにペルソナを設定してみましょう。

マイペースタイプへの働きかけ

まず、マイペースタイプのペルソナですが、仕事に対して自分なりのスタイルで遂行でき、相応の自信があります。スキルや知識の習得は興味関心の向くタイミングで行い、自分の方法で吸収していく勘所の良さがあります。

自分の考えや世界を持っているため、それらを曲げることには抵抗があり、主張すべきときに意見を述べるのは当然と考えています。本人に悪気はなく、人に嫌われない程度の距離感を保っているつもりですが、周囲の反応にはそこまで敏感ではありません。

マイペースタイプは、仕事を任せると次々と進めてくれます。ただし、職場の目指す方向性や目標を一緒に確認することが重要です。定期的な共有の機会を設けて周囲とのずれを解消し、職場やメンバー側の考えや、今何をしようとしているのかを伝えることで、明後日の方向に突き進むリスクを低減できます。

チームリーダータイプへの働きかけ

チームリーダータイプのペルソナとしては、人当たりが良く、聞き手の反応を想像できるため、積極的に意見を述べても相手をあまり嫌な気持ちにはさせません。人から褒められたり慕われたりすることがモチベーションで、多くの人と関わって仕事をしていきたいタイプです。ただし、コミュニケーション以外の部分、例えば、細かい作業ができるか、仕事の覚えが悪いのでは、などと不安を抱いている可能性があります。

チームリーダータイプに対しては、人間関係をベースにした仕事上の助言が最も有効です。本人をよく知る周囲の人からの口頭でのフィードバックが良いでしょう。人事施策としては、様々な人と関わりを持たせ、振り返りの機会を提供しましょう。

チームフォロワータイプへの働きかけ

協調性があり、メンバーとの関係構築も上手く、チームで仕事をする場合、特に苦労はしません。ただし、周囲と同質であることに安心感を持つため、目立つことはあまり好みません。集団の中での自分の役割を正しく理解して動けます。一方で、意見をあまり言わないので掴みどころがないと思われるかもしれません。

チームフォロワータイプは、積極的に意見を述べないため、気付かないうちに色々と溜め込む可能性があります。働きかけとしては、遠慮がちなことを考慮し、意見を述べられる機会や質問を投げ掛ける1on1の機会があると有効に機能します。

モデストタイプへの働きかけ

出現率が一番高いタイプです。自分の言動に自信を持つまでには時間がかかる一方で、現状にそこまで不安は持っておらず、周囲に流されるままになりがちです。これまでも、限定されたコミュニティで自分なりの居場所を作ってきました。

コミュニティ内で行動した経験があるため、自分がどう見られているかは認識しています。周囲から浮くような行動はありません。ただし、周囲への働きかけは少なく、目立つ存在になりにくいため、他のタイプよりも消極的に見えます。

働きかけとしては、モデストタイプは消極的に見えることを上司に申し送りしましょう。ともすると「最近の若者は」といった世代論に陥るので、レッテル張りを回避する必要があります。加えて、助言をもらう機会も有益です。本人からはOJTトレーナーにアクセスしにくいため、誰にどのような助言を仰げばよいかを明らかにしておくことが重要です。

ケアフルタイプへの働きかけ

一番しっかりとケアする必要があります。ケアフルタイプは周囲との関わりに敏感です。自分を出すことに抵抗があり、コミュニケーション不安を感じています。行動する前には時間をかけて準備しておきたいタイプです。周囲の様子は察知できるのですが、相手と距離を詰めることに不安を感じやすく、人間関係で悩む可能性があります。 

働きかけとしては、対人関係で関係を築いていくのに時間がかかるため、関わるメンバーを固定化しするのが理想です。自ら働きかけることが苦手なため、周囲から声を掛けることも必要です。1on1をするにしても、心理的安全性の醸成を優先しましょう。

3.質疑応答

Q:5つのタイプに関し、1人の個人が複数のタイプを持っている場合はどのように扱うか

伊達:

どのタイプに近いかという考え方が基本です。目の前の人を仮に5つのタイプに分けるとしたら、どれに一番近いかを考えるということです。ただし、場面によってタイプが異なる可能性もあるので、注意深く観察する必要があります。

Q:タイプを変えるように促すことと、適応できる組織に配属することのバランスはどうしたらよいか

佐藤:

今回お話ししたタイプは、長期的にあまり変わらないであろう、本人のパーソナリティを軸に分類しています。したがって、タイプを変えるというのは簡単ではありません。ただし、配属できる組織を変化させようにも限界はあります。本人のタイプと有効なアプローチを申し送りしておくことが重要です。

伊達:

組織単位でフィットしていなくても、例えば上司や先輩などとフィットしていれば大丈夫かもしれません。例えば、職場としてはあまり自分に合っていないけれど、この上司は自分のことを分かってくれるということもあり得ます。

Q:働く覚悟や熱意を醸成しようと新人研修などを行っても、効果にばらつきが生まれてくるが、タイプの違いに関わらず集団教育の効果を高めていくためにはどうすればよいか 

伊達:

集団教育は「社会化戦術」と呼ばれ、組織からの働きかけに当たります。こうした働きかけを歓迎するタイプもいれば、自ら行動しながら学びたいタイプもいます。後者のタイプについては、現場に配属された後の育成に力を入れるなど、タイプごとに、注力すべき育成ポイントを検討すると良いと思います。

佐藤:

社会化戦術が刺さるタイプは刺さりますが、刺さらないタイプには、教育を通して伝えたいメッセージだけでも持って帰ってもらうなど、目的に幅を持たせておくことが大事です。

伊達:

「あのときに言われたのは、そういうことだったのか」と後から気づくケースもありますね。

Q:分析対象者は1社の新入社員の結果なのか、複数社の新入社員の結果をまとめたものか

伊達:

1社ではなく複数の企業の新入社員の方々が対象です。いわゆる中堅大手クラスの企業が多くなっています。

Q:タイプ分けは本人の申告か/クラスター分析のもとになったアンケート調査の内容について知りたい/どうやってクラスターに分けたか

伊達:

自尊感情などの個人特性の軸を定め、軸ごとに複数の質問項目を設定しました。本人に直接タイプは問うていません。回答データをもとに類似性を抽出するクラスター分析に基づいて、事後的にタイプ分けを行いました。その結果、5つのタイプに分かれました。 

Q:大卒新入社員か、高卒も含むか。今回の調査に、企業規模や業界的特徴はあるか

佐藤:

調査では、大卒の方々に回答をいただいています。企業規模は名前が知られているような大手企業、中堅企業です。業界は約半分がメーカーです。

Q:SPIなどよくあるものを使うことは検討しなかったか。完全オリジナルのアンケートか 

伊達:

職場で仕事をよりうまくやっていくために重要となる個人特性をもとにタイプ分けすることを狙いました。その目的のもと、完全にオリジナルでアンケートを設計しています。

Q:タイプとは性格の範疇と思われる部分が大きいのでは

佐藤:

タイプが個性の範疇ではないかという点は、まさしくそのとおりであり、それが今回の発見だと思います。例えば、価値観であれば、人の成長や時代の変遷で変わってきますが、今回のタイプ分けでは、時代によって変わらない性格をタイプ分けの軸にしています。 

Q:OJT的な育成を想定した場合、OJTリーダーやメンターにも5つのタイプがあると思われるが、若手社員との相性を意識したほうがよいか

伊達:

興味深い視点ですね。確かに先輩社員についてもタイプ分けが可能だと思います。今後、そうしたタイプ分けも行えると良いかもしれません。また、若手社員との相性という点では、類似性が高い方が良いかもしれません。しかし、それより重要に思うのは、お互いのタイプを理解し合うことでしょう。

(了)


[1] クラスター分析の詳細は、ビジネスリサーチラボのコラム「クラスター分析とは何か」をご覧ください。

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