2026年3月16日
株式会社ビジネスコンサルタント|学術と実践の融合で挑む、新入社員適応モデルの構築

(左から)株式会社ビジネスリサーチラボ 能渡真澄、同 藤井貴之、株式会社ビジネスコンサルタント Webマーケティング&コーポレートコミュニケーションGr.課長 山田有佳様、同Gr.小宅麗様、調査診断部モニタリングソリューションユニット イノベーションプロデューサーコンサルタント 熊谷麻衣子様、ゼネラルマネージャー星琢磨様
創業以来60年以上にわたり、組織開発と人材開発の領域で日本の企業を支援してきた株式会社ビジネスコンサルタント。同社では、新入社員の意識調査を長年実施し、知見を蓄積してきました。一方で、新卒を取り巻く環境の変化を踏まえ、取得したデータを施策の意思決定により直結させるために、「何を測り、どう活用するか」という設計思想から再整理する必要性が高まっていました。
そこで今回、同社が定義した活用シナリオと要件を起点に、ビジネスリサーチラボと共同で、学術的知見に基づいた新たな調査モデルの構築と検証を行いました。約8,000名のデータを分析して見えてきた「変化対応力」という鍵、そしてプロジェクトを通じて得られた発見について、プロジェクトを担当された星様、山田様、熊谷様、小宅様にお話を伺いました。
外部への依頼背景:調査の「活かし方」を再定義し、モデル構築に挑戦
藤井:
弊社にご相談いただく前は、どのような課題感をお持ちでしたか。今回は、御社がこれまでに実施されていた調査を刷新し、新たなモデルを構築するというプロジェクトでしたが、外部への依頼を検討されるに至った背景からお聞かせいただけますか。
山田様(以降、敬称略):
私と小宅はWebマーケティングを担当しているのですが、これまでも話題作りや、お客様の課題発見とコンサルティング提案の起点として、新人アンケートを10年以上実施してきました。当初は「社会人基礎力」に基づく質問項目で設計し、その後レジリエンスやエンゲージメントといった概念を追加していました。
新入社員の傾向を把握するデータとしては活用できていましたが、さらに踏み込んで、複数の概念から課題を整理し、意思決定につなげるための提示が不十分で、刷新したいと考えていました。
藤井:
取得したデータを、ソリューションにつなげる必要があったのですね。
山田:
ええ。そこでリニューアルにあたって他の人材開発会社がどのようなアンケートを行っているのかをリサーチしたところ、しっかりとした「モデル」に基づいてアンケートを実施している会社がほとんどないことに気づきました。他社と差別化すること。そして調査に終わらない、お客様と課題を議論できる状態にするためには、モデルが必要だと考えました。
長年組織開発に取り組んできた弊社では、モデルに基づいて職場を診断し、課題を形成してアクションを起こすというソリューションを大切にしています。そこで新人・若手領域でも、活用シナリオを明確にした上でモデルを再設計し、社外の専門性も取り入れてスピーディーに進めようと決断しました。

星様(以降、敬称略):
強いて言えば「社会人基礎力」をベースにアプローチしていましたが、課題の構造をよりクリアにし、解決策に結びつく提案の精度を上げたいという思いもあり、それが今回ご依頼した背景にあります。
依頼の決め手:学術に裏打ちされた設計とスピード
藤井:
数ある会社の中で、弊社を選んでいただけた理由についてお聞かせいただけますか。
山田:
実は、他社への相談はしていません。以前、私が関わっていた別の取り組みで、御社の代表である伊達さんにアンケート開発をお願いしたことがありました。その際、非常にスピーディーに仕事を進めてくださること、そして学術的なリサーチに基づいて設計される会社だということが分かっていましたので、社内で了承が取れたならぜひ御社にお願いしたいと考えていました。
星:
弊社は60年以上にわたり、海外の著名な方々の理論やモデルに基づいたソリューションを提供してきました。しかし、「新人・若手の定着と早期育成」という切り口においては、日本独自の「新卒一括採用」という背景もあり、海外の研究結果をそのまま適用するのが難しい側面がありました。かといって、日本国内でそれが体系的に整理されているかというと、そうでもないのが実情です。そんな中で、先行研究で示された知見を体系立てて整理し、ストーリーとしてまとめていただけた点は、社内リソースだけで短期間にやり切るのは難しかったと思います。共同で進められたことで、設計のスピードと品質の両立ができました。依頼して本当に良かったと感じています。
プロセスの価値:学術的裏付けと現場感のバランス
藤井:
プロジェクトのプロセスを振り返りますと、まずは学術知見を整理して概念とモデルを設計し、その後、約8,000名という貴重なデータを集めていただき、検証とモデルの精緻化を行いました。妥当性・信頼性の観点も踏まえ、現場で使える説明可能なモデルとして整備しています。この一連のプロセスについて、率直なご感想をお聞かせください。
熊谷様(以降、敬称略):
私は調査診断部に所属しており、本来当社でも取り組める領域ですが、今回は短期間で学術的な検証まで含めて進める必要があり、御社と共同で進めました。まず素晴らしいと思ったのは、学術的裏付けのプロセスを完璧に踏んでいただいた点です。世の中には簡易なアンケートも多いですが、御社はきちんと先行研究にあたり、概念を明確化し、設問項目を精緻に検討し、データを精査するという手順をきっちりと踏んでいらっしゃいました。実際にデータを取ってからの分析結果を見ても、データの測定精度も十分で、見事な結果となっていました。

藤井:
設計段階でしっかりと土台を作ることが、後の精度の高い結果につながると考えています。
熊谷:
本当にそう思います。ちょっとしたワーディング(言葉選び)の差で結果が出ないこともよくあるのですが、「この項目は失敗でしたね」というものがほぼなく、素晴らしい検証結果が出ました。ビジネスの現場では先行研究にあたる時間をなかなか取れないのが実情ですが、そこをかなりの量あたっていただいており、大変勉強になりました。
能渡:
一連のプロセスに価値を感じていただけて、非常に嬉しいです。今回は弊社の標準的なスケジュールに沿って進めさせていただきましたが、学術的裏付けの重要性を理解してくださっていたからこそ、今回のプロジェクトにおける弊社の専門性と、御社の実践知とのコラボレーションがうまくいき、最終的に有用なモデル構築につながったのだと感じています。
学術と実務のすり合わせ:言葉の定義、ワーディング、現場感
藤井:
学術的な理論・モデルをベースにしつつ、現場の感触を踏まえて調整した場面がありました。学術と実務のバランスで難しかった点はありましたか。
星:
私にとっては「言葉の定義」が一番難しかったですね。一般的に認識される言葉のイメージと、学術的に定義付けされている意味には差がある場合も多いことに今回気づかされました。また、私たちはプロジェクトに半年近くどっぷりと浸かっているため、言葉への馴染みが深くなっていますが、新人や若手の方々、あるいは弊社のコンサルタントが初めてその言葉に触れた時、現場の感覚と少しズレがあるのではないか、という懸念もありました。

能渡:
言葉の定義について議論させていただいたことは、とても印象的でした。学術的には妥当といえる調整を狙った項目に対して、「新人の方々にこの内容を問うのは、何か違う」と、様々なコメントをいただきました。多くの人に共通する平均的な特徴の検証成果が多い専門的な理論に対して、当事者に向き合っている皆様だからこそお持ちの現場の肌感覚をすり合わせていただけたこのプロセスは、本プロジェクトの面白さでもあったと思います。
山田:
弊社でも実際に入社1〜2年目の社員20名ほどに回答してもらい、その反応を集めたりもしました。議論の中で私たちが感じた違和感をお伝えすると、それを汲み取って適切なバランスで調整してくださったのがありがたかったです。やりすぎてしまうと本来聞くべきものが聞けなくなるリスクもありますが、その調整力が素晴らしかったです。
熊谷:
アンケートの文章というのは、こだわり始めると議論が紛糾して進まなくなることも多いのですが、御社は一つひとつに明確な意図を持って設計されているため、説明にも納得感がありました。だからこそ、私たちも違和感を率直に伝えることができ、建設的なディスカッションを経て納得できる形になったのだと思います。
小宅様(以降、敬称略):
私も同感です。社内トライアルの意見をしっかりと反映してくださった点や、学術的な理論の中で「介入可能性(変えられるものかどうか)」の議論を踏まえて要素を厳選してくださったことで、非常に納得感のあるモデルになったと思います。
藤井:
ありがとうございます。介入の可能性や変容の可能性など、学術的な観点と実務的な論点を交えながらディスカッションさせていただきました。そのプロセスを踏んで要素を厳選していったことが、良いモデルにつながったのだと感じています。

分析結果の発見:「変化対応力」が鍵を握る
藤井:
分析の結果、当初想定していたモデルとは少し異なる形で、「変化対応力」が適応において重要な役割を果たしていることが見えてきました。この結果について、どのようにお感じになりましたか。
星:
結果に違和感はなく、むしろ「そうなんだな」と腹落ちしました。これまで漠然としていた課題感が、データによって明確になった感覚です。私たちが元々大切にしていた「レジリエンス」に近い要素が、より広い概念としての「変化対応力」として、若手の定着や活躍に大きな影響があることが分かりました。 実際、ウェビナーを開催した際にも「変化対応力をどう高めたらいいのか」という具体的なご質問を多くいただきました。フォーカスすべきポイントが明らかになったのは非常にありがたいです。
山田:
私は率直に面白いなと思いました。8,000名のデータを丁寧に分析していただいたからこそ、従来の可視化だけでは捉えきれなかった構造として、「変化対応力が鍵になる」という事実が浮かび上がってきました。共同で進められたことで、私たちとしても確信を持って伝えられる示唆になり、本当に良かったです。
熊谷:
私は分析結果を見た時、率直に「面白い!」そして「やった!」と思いました(笑)。これほどきれいなモデルが出ることは珍しく、まさに「砂金探し」で金脈を掘り当てたような感覚です。ストーリーが明確で、私たちとしても今後のバックデータとして非常に使い勝手の良いものになりました。
能渡:
私も分析を進める中で、改めて理論の有用性を実感しました。理論を背景に大枠だけ定めた探索的モデルの分析検証を進めた結果、キャリアアダプタビリティの理論的背景とも合致する、非常に美しいモデルがデータにピタリと適合しました。このような結果は、事前の測定内容の選択において、自己効力感、リーダーシップ、周囲のサポート、ストレスなど、バリエーションに富んだ有効な指標を網羅的に選んでいただいた、現場目線のアイデアがとても優れていたためだと思います。

山田:
私たちBConは、何十年も前から「新人若手の活躍は、個人の能力・意欲と環境の掛け合わせである」と言い続けてきました。今回、周囲のサポートという環境要因も重要であることがデータで裏付けられ、改めて確信を持てました。
今後の活用:経年追跡とプログラム効果の検証へ
藤井:
今回のプロジェクトで得られた知見を、今後どのように活用していこうとお考えでしょうか。
星:
できれば経年で、1年目、2年目、3年目と追跡調査を行い、どう変化していくのかを見ていきたいですね。そうしたデータを蓄積することで、エビデンスベースで「だからこの時期にこのプログラムが必要だ」「こういう組織体制が必要だ」と自信を持って示せるようになりたいと考えています。「プログラムを受けたら変化対応力が上がりました」というエビデンスが出せれば、非常に強力なメッセージになります。ぜひ示していきたいです。
山田:
長年の実績はあるものの、データに基づいた効果検証というのは会社としてもあまり経験がありませんでした。今後は、プログラムをどうソリューションにつなげていくかという点において、データの面でも信頼感を高めていけると良いなと感じています。
熊谷:
今回のモデルは、上司の切り口もあれば本人の切り口もあり、範囲が広いのが特徴です。BConとしても検証できるプログラムがたくさんありますので、非常に使い勝手が良く、ぜひ活かしていきたいです。
振り返り:得られた学びと喜び
藤井:
最後に、プロジェクトを通しての気づきや学びについてお聞かせください。
星:
やはり、意図を持って取り組み、先行研究やデータに基づいて示すことの重要性を再認識しました。本成果についてお話した際のお客様の反応を見ても、納得感や説得力が格段に高まっているのを感じます。
熊谷:
しっかりとした設計があるからこそ、納得感のあるデータが得られる。そうしたプロセスを通じて、事業だけでなく社会にも貢献していきたいと改めて感じました。非常に楽しく、学びの多いプロジェクトでした。
小宅:
最初は難しいなと思いながら臨んでいましたが、進めるうちに理解が深まり、最終的に良いものができて良かったです。私はWebマーケティングのコラム執筆も担当しているのですが、今回のモデルや分析結果が自分の知見になり、それを記事に反映できるようになりました。これは自分にとって大きな成果であり、新しい学びでした。
山田:
本当にゼロから、どう形にしていいか分からないところからのスタートでしたが、御社と一緒に取り組んだからこそ、探求を深め、新しいモデルへと発展させることができました。非常に刺激的なプロジェクトでした。今回分かってきたことの価値を、もっと役立てていくためのアクションはこれからだと思っています。引き続き広い視野を持って、活用の道を模索していきたいです。
藤井:
本日は、貴重なお話をたくさんお聞かせいただき、誠にありがとうございました。
一同:
ありがとうございました。
