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導入事例

パーソルキャリア株式会社|可能性を引き出すパーソナリティ検査開発支援

コラムプロジェクト例導入事例

(左から)株式会社ビジネスリサーチラボ 能渡真澄、同 藤井貴之、パーソルキャリア株式会社 川崎学様

大手人材サービス企業であるパーソルキャリア株式会社様。同社は、「スキルを可視化するテスト」を通じて、求職者と企業のより良いマッチングを支える取り組みを進めています。業務知識のように正誤が明確な領域は設計しやすい一方、心理的側面など“目に見えないもの”を科学的根拠を踏まえて扱うには、別種の専門性が求められます。

今回ビジネスリサーチラボは、求職者向けのパーソナリティ診断の一部として「ストレス耐性」をテーマにした検査開発を支援しました。なぜ「ストレス耐性」なのか、どのように概念を整理し、項目を作り、アウトプット(コメントや示し方)まで落とし込んだのか。プロジェクトを推進された川崎様とビジネスリサーチラボの藤井、能渡が語り合いました。

「目に見えないもの」をどう測るか。依頼の背景とパートナー選定の決め手

藤井:

まず、弊社にご相談いただく前、どのような課題感をお持ちでしたか。今回、スキルを可視化するテスト開発の中で、特にパーソナリティ(心理的側面)を測定する検査開発をご支援しましたが、依頼に至った背景から伺えますか。

川崎様(以降、敬称略):

一番大きいのは、「目に見えないもの」を測定して設計することの難しさですね。スキルテストは、いろいろな人のスキルを可視化するサービスで、たとえば簿記検定のように、業務スキルに関する知識やノウハウを測る——つまり答えがはっきりしているもの(知っている・いない、Yes/Noが明確なもの)については、私たちでも設計できる感覚がありました。

ただ、心理的側面や、本当にパーソナルな部分といった見えない領域を、科学的な根拠をもって判断できる形で設計していくのは、自分たちだけでは難しい。そこは専門家にお願いしようと考え、依頼に至りました。

スキルテストが扱う範囲を広げれば広げるほど、知識問題のような「正解がある」設計から、性格・思考傾向・ストレスの感じ方のような「個人差が前提」の設計へと、求められる考え方が変わっていきます。そこで重要になったのが、「学術的に妥当な扱い」と「事業で使える形」の両立でした。

藤井:

そのなかで弊社にご依頼をいただきましたが、まず、弊社を知っていただいたきっかけが、社内の別部署の方が弊社と関わりがあったことだったと伺いました。その経緯も教えていただけますか。

川崎:

はい。新卒採用領域で適性検査を開発する際に、御社に依頼した事例が社内にありました。私たちがパーソナル測定テストを開発するとなった時に、近い部署でもやっているという話を聞き、具体的にどんなことをしているのかヒアリングしました。その中で御社の取り組みを最初に耳にしました。

そこからホームページも拝見して、事例インタビューも読んで、「適性検査開発」に深い知見がありそうだなと感じ、お声がけしました。

藤井:

そのご検討の際には、他の支援先も並行してご検討されていたのでしょうか。

川崎:

いくつか調べてはいました。ただ、調べる中で、すでに社内でプロジェクトの接点があること、そしてインタビュー記事なども含めて、信頼してお任せできそうだと感じたことが大きかったです。なので、スキルテストのプロジェクトでも依頼したいと思いました。

藤井:

ありがたいです。特にこれが決め手だったというポイントはありましたか。

川崎:

この領域って、学術的なアカデミックの強さが必要な一方で、企業の内部でテストを開発してきた経験など、ビジネスの背景を理解して汲み取れる力も必要だと思っています。

御社は、専門的なアカデミックの知見がありそうだという点と、ビジネスの背景も理解した上で適性検査開発に協力してもらえそうだという点、その「バランス」が大きなポイントでした。

能渡:

ありがとうございます。学術とビジネスの両方の観点を持ってバランスを取りながら進めるのは、弊社としても大切にしているところです。その点を評価いただけて嬉しい限りです。

「見極め」ではなく「可視化」。思想に寄り添う設計と、学術知見を使える言葉にする翻訳

藤井:

ここからプロジェクトの具体の話に移ります。今回の枠組みは「適性検査」で、対象は求職者の方々を想定したパーソナリティ診断の開発です。テーマとして「ストレス耐性」を掲げました。

最初に取り組んだのは、「ストレス耐性」という言葉自体をどう捉えるか。その議論を踏まえて、今回はストレスへの反応傾向とストレス要因に注目して進める方針を決め、学術文献の整理から始めました。

その上で、各概念をどう扱うか、概念ごとにどんな質問項目を作るかを相談しながら設計し、モニター調査を行い、データ分析で測定精度や妥当性を検証しました。

そして分析結果を踏まえて検査に採用する概念を選択し、スコア算出と、アウトプットをどう見せるかも相談しながら形にしていきました。

この全体を振り返って、印象に残っていることを教えてください。

川崎:

印象に残っているのは、開発のスタンスというか方向性の部分です。私たちのサービスの思想に寄り添いながらテスト開発していただけたところが大きいですね。

私たちはテストを開発していますが、それは人を選別するとか、見極めるためというより、人の可能性を引き出す、目に見えないものをテストで可視化する、そういうところを大事にしています。

そこで今回のストレス耐性も、「ストレスがない人をあぶり出す」みたいなものではなく、どういう要素にストレスを感じやすい・感じにくいのかは人それぞれ違うので、それを客観的に可視化することを目的として考えていました。それが結果として企業の採用のマッチングに活きるといいな、という考えでした。

そういうスタンスに寄り添って、進め方や、項目選定の基準の考え方などのアドバイスをいただけたのが印象に残っています。

藤井:

ありがとうございます。「ストレスをどう捉えるか」はディスカッションでも丁寧に扱いましたね。

川崎:

はい。ストレス耐性というテーマに関しては、人事の方と会話すると「ストレス耐性を見極めるテストはないんですか?」といった声をよくいただくんですが、そもそも人事側もストレス耐性が何を指すのかを明確化できていないことが多いと感じていました。

その中で、「ストレス耐性にはこういう要素があって、それぞれにこういう学術・論文の背景がある」というのを、学術知見を噛み砕きながら分かりやすく伝えていただけたのも進めやすかったところで、印象に残っています。

能渡:

ストレスは身近で一般的だからこそ、人によって捉え方が千差万別になります。そこに捉え方の枠組みを与えるのが学術知見で、その部分を弊社がご提供できたのが功を奏したのだと思います。

川崎:

資料のなかで、「こんなに考え方があるんだ」という数の多さにも驚きましたし、その中からどれを選ぶかは迷うポイントでした。でも、私たちが考えるストレス耐性の前提をきちんとすり合わせた上で、選定の助言をいただけて、スムーズに開発できたのがありがたかったです。

能渡:

「ストレス耐性」という言葉を便利なラベルとして使うのではなく、要素に分解して、根拠とともに語れる状態にする。その土台があると、項目選定で迷ったときも、判断の軸が揺らぎにくくなります。そしてアウトプットでも、それぞれの要素が持つ背景やアイデアの基盤を把握しているため、「良い/悪い」の二分法に落ちず、「個人差を理解するための情報」として提示できるようになりますね。

想定外の結果を価値に変えるアウトプット設計

藤井:

データ分析では、当初の想定と違う結果が出ることがあります。今回、象徴的だったのが「誇張傾向(自分をよく見せようとする傾向)」の扱いでした。スコアそのものが示す意味はもちろん、受け手の解釈によってはネガティブに映りかねないため、結果をどう提示し、どう読み解いてもらうかが重要になります。

想定と違って印象的な結果が得られましたが、どのように感じられましたか。

川崎:

正直、意外でした。あと、この誇張傾向のような要素をアウトプットする時に、マイナスに映ってしまう可能性がある。これをどう見る側に届けるか、どう見せるかは、チーム内でも結構会話したポイントです。意外性がデータから出てきたこと自体も、話題になっていました。

藤井:

意外に感じられたということでは、進め方として困惑されることもあったでしょうか。

川崎:

いえ、意外ではあったのですが、結果を伝えていただいた上で「じゃあこの結果を踏まえてどう進めるか」という提案を何点かいただいたので、それに沿うことで考えやすかったと記憶しています。大きな困惑はありませんでした。

藤井:

数値の意味を丁寧に読み取りながら、受け手が誤解しない示し方、運用で活かせる示し方を検討していきましたね。想定と違う結果に対しても、「何が起きているのか」を解釈し、プロダクトの目的に照らして扱い方を決めていくプロセスは印象的でした。

リリース後の反響。「読める順番」と「次の打ち手」までつながる設計へ

藤井:

リリース後の反応についても伺いたいです。社内ではどのような反応や評価がありましたか。

川崎:

まず、「役立っている」という声があります。最初におおまかな人物像のコメントがあって、そこで人物の外観というか全体像を掴める。その後、各項目に分解して「どういう要素にストレスを感じやすい/感じにくいか」という個別具体まで降りていける。

それを把握した上で、面接内でどうコミュニケーションすればいいか、入社後にどうケアすればいいか、確認するために面接でどう質問を投げかけるとよいか——次のネクストアクションにつながるコメントが最後に出てくる。

上から下まで自然な流れで読める設計になっている点が、担当者から好評だと聞いています。

藤井:

ありがとうございます。プロジェクトの後、社内ではどんなアクションを取られたのでしょうか。

川崎:

ストレス耐性については「リリースされたら使いたい」と言ってくださるお客様がもともと多かったので、リリース後に実際に使っていただき、その後、複数件ヒアリングをしました。実際どういうテストだったか、運用として使っていけるかなど、直接のフィードバックをいただく動きはチーム内で取っていました。

開発の過程でしっかりすり合わせていたので、大きな課題なく、提供したかった価値を届けられたと思っています。

藤井:

それは何よりです。フィードバックのなかで、「もう少しこうだったら良い」などの改善要望はありましたか。

川崎:

正直、そのような声は特になくて「使いやすい」という声が多いです。回答・設問のボリュームも適切だと言われていますし、アウトプットも情報量が多すぎず少なすぎず、面接や現場で使える情報が提供できているという反応です。

他のテストだと「面接で何を聞けばいいか困る」という声もあるんですが、このテストは「どういうアクションを取ればよいか」まで提言してくれる点が前向きに受け止められている印象です。

能渡:

診断コンテンツが陥りやすい「面白いけれど使いどころが分からない」を避ける上で、理解できるだけでなく、次に何をするかまで接続することは、特に重要なポイントですね。それらをセットでご提供した成果を現場でもご好評いただき、とても嬉しいですね。

これからの構想。要件の言語化、データ活用、そして生成AI時代の納得感

藤井:

今後、データ活用の観点でやっていきたい展望があれば教えてください。

川崎:

構想段階ですが、スキルテスト自体は「目に見えないものを客観的に可視化する」サービスで、ストレス耐性のような適性検査も提供しています。

人事の方と相対する中で、自社に必要な人物像や必要スキルを言語化できている企業は多くないと感じます。テストというツールを通して人物の可視化の精度を上げ、判断を効率的に強いものにすることで貢献していきたいです。

藤井:

求める人物像・スキルを明確に言語化できていない、といったことは人事の現場での課題としても頻繁に聞きますね。

川崎:

たとえば企業のジョブディスクリプションを読み込ませて必要なスキルを可視化することや、そこからの活用方法まで提案できるサービスも構想としてあります。今あるデータも活用しながら実現していきたいです。

能渡:

近年隆盛している生成AIの活用とも結びつきそうですね。生成AI正解らしく思えるものはほどよく作れても、「なぜそれが正解か」の説明精度や納得感が課題になりやすい注意点もあり、そこを学術的背景も踏まえて解釈を洗練させていくことが重要になりそうです。

それに関して、学術的背景を踏まえてAIの解釈を洗練していくアプローチは有効で、そこは私たちの専門性を発揮できる領域でもあります。またぜひご支援できると嬉しいです。

川崎:

ぜひそのときはよろしくお願いします。

藤井:

最後に、今回の支援を通じて得られた学びや発見があれば教えてください。

川崎:

テストを最初から開発するプロセスを、一緒にしっかり行えたのは大きな学びでした。どういう手順を踏むのが適切か、その過程でどんな情報整理が必要か、自分の中でも整理がついたと思います。

また、日常業務ではデータや数値をまじまじと見て検討する機会は多くないのですが、今回のようにデータを客観的に見て、結論や解釈を考えるのは新鮮で、個人的に面白かったです。どの設問がその要素を適切に測定できているか、逆に関係していないか、といった結果が出てくるのは、心理要素の難しさがある分、なおさら興味深かったですね。

藤井:

ありがとうございます。開発の手順や判断の勘所が川崎さんの中で整理され、さらにデータから解釈を組み立てる面白さまで感じていただけたのは、私たちとしても嬉しいです。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

#藤井貴之 #能渡真澄

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