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導入事例

アサヒグループ食品株式会社|オーダーメイド型の組織サーベイで現状を可視化する

コラムプロジェクト例導入事例

(左から)アサヒグループ食品株式会社 研究開発本部 宮後元徳様、海老名彩乃様、川上徹様、株式会社ビジネスリサーチラボ 藤井貴之、伊達洋駆

アサヒグループの食品事業を支えるアサヒグループ食品株式会社。同社は、長期ビジョン「私たちは『おいしさ+α』を追求し、『心とからだの健やかさ』の実現に貢献する企業を目指します」を掲げ、グループ理念である“Asahi Group Philosophy”の実現を推進しています。

ビジネスリサーチラボは、同社で新しい価値を創出する組織づくりを進めている研究開発本部に対して、オーダーメイド型の組織サーベイを行いました。同部門の川上様、宮後様、海老名様にお話を伺いました。

研究開発本部の人材育成・評価方法への課題感

藤井:

ビジネスリサーチラボにご相談いただく前に、どのような課題を感じていたかをお伺いできればと思います。まずはサーベイの実施を検討することになった背景を教えていただけますか。 

川上様:

今回の取り組みは、研究開発本部独自の施策として始まりました。本部としては、今後全社をリードするような新しい価値を創出し続ける組織でありたいというビジョンを掲げています。

しかし、通常業務に加えて新たな挑戦を求める中で、一般部員やリーダーが現在どのような状況や心理にあるかが見えていないという課題がありました。そこで、まずは現状を可視化するためにサーベイを実施することとなり、ワーキングチームによる取り組みがスタートしました。 

宮後様:

私自身も研究開発本部の人材育成や評価に課題を感じており、特にその対策については、表面的な施策では効果が出にくく、複雑な要因が絡む領域だと実感していました。そこで、まずは課題の構造をしっかり可視化し、自分たちが抱く課題に関する仮説が正しいのかを確認するためにも、サーベイを実施したいと考えていました。 

海老名様:

最初にこのチームが集まって課題に取り組みを始めた際、大きく漠然とした課題を前に「どこから着手すべきか分からない」という難しさがありました。皆が何となく感じている問題意識はあるものの、それを明確に言語化できず、対策の立てようがない状態だったのです。

そこで、まずは全社で定期的に実施しているような「働き方」や「キャリア」に関するサーベイに近い形で、現状を可視化する手段としてサーベイを実施することにしました。 

伊達:

普段は別々の部署で業務を行っているメンバーが横断的なチームとして編成され、推進されてきたということですね。皆さんはどのように選ばれたのでしょうか。

宮後様:

研究開発拠点が3ヶ所と本社機能があり、各拠点で業務経験のあるメンバーが1名ずつ選出され、さらに年代も少しずつ異なるメンバーでチームが構成されています。サポート役として部長も入り、幅広い世代・拠点・職種の人材で多様な意見を取り入れたいという考えでした。 

伊達:

上司と部下など普段から一緒に働いている人たちでチームを組んでいるのかと思っていました。しかし実際は違っていて、それだけしっかりとチームビルディングされていたということですね。 

宮後様:

実際には、誰一人として同じ部署のメンバーはいませんでした。 

海老名様:

それが逆に良かったのかもしれません。普段の業務での関わりがない分、このプロジェクトに意識を集中させることができ、「この時間はこのことだけを考える」といったメリハリをもって取り組めていたと思います。 

組織サーベイ導入の背景とパートナー選定の決め手

藤井:

サーベイを実施するにあたり、どこに依頼するかを検討されたとのことですが、弊社をお選びいただいた理由について聞かせていただけますか。 

宮後様:

当初、実績のある既存のサーベイの活用を考えて調査していましたが、自分たちの課題感に合致するサーベイがなく、オリジナルサーベイを作らないと正確な現状認識はできないという考えに至りました。オリジナルサーベイを作る際、どうしても感覚的なもので設計してしまいがちだという印象があり、研究開発に携わる特性から学術情報に基づいて設計されたサーベイにしたいという考えがありました。御社はしっかりと学術的な研究に基づいてオリジナルサーベイを設計されている点に、非常に安心感を持ちました。所属部門のメンバーに説明する際にも、しっかりとロジックをもって説明できる点も、決定の大きな要因になりました。伊達さんの書籍なども大変参考になりました。 

川上様:

当初は何もわからない状態からのスタートでした。「オリジナル組織サーベイ」などのキーワードでネット検索をし、自分たちで情報収集を始めました。

その中で、親会社であるアサヒグループジャパン株式会社など、弊社のグループ会社が以前に御社の支援を受けていたことを知り、これが私たちの背中を押す一因になりました。実際に、それらの会社の担当者とも話す機会があり、非常に参考になりました。

私たちにとって、調査をすること自体が目的ではありませんでした。調査を通じて何を明らかにし、そこからどうアクションにつなげていくのかが重要だと考えていたため、その観点で御社の実績やホームページのコラムを読み込むほどに信頼感が高まり、最終的にお願いしようと決めました。

 

伊達:

ご縁がつながり大変うれしく思います。アサヒグループジャパン様やグループ会社様とテーマは異なるものの、オーダーメイドでサーベイを作り、分析を行うという点では共通する部分も多く、話を聞かれて共鳴される部分もあったのではないかと思います。 

実践知と自分ごと化が生んだ納得感

藤井:

私からプロジェクトの具体的な内容について振り返りをさせていただきます。まず、どのようなサーベイを作っていくのかについて、テーマやサーベイで注目する指標(成果指標)を相談しながら検討していきました。また、それらを高めることに繋がる指標(影響指標)についてはワーキングチーム以外のメンバーでもご検討いただき、議論をしました。

続いて、具体的な教示文や質問項目の作成に進みました。その際には、質問項目について実践的な観点から意見をいただきました。その後、アンケートを作成し、社員の方々に実施していただき、分析に必要なデータを無事に集めることができました。

弊社で分析を進め、先行研究も手がかりにしつつ、「どの指標に注目して対策をとっていくのが良さそうか」といった観点についても提案や議論をさせていただきました。 

宮後様:

特に印象的だったのは、所属部門のメンバーを巻き込んだワークショップを行い、そこで考えをすり合わせて言語化し、サーベイ設計に反映できたことです。こうしたプロジェクトは、通常はコンサルタントと担当者だけで進める印象がありましたが、所属部門のメンバーを巻き込んで進められたのは非常に良かったと思っています。プロジェクトへの関与が、高い回答率にもつながったのではないでしょうか。 

伊達:

たしかに、今回いただいた成果指標・影響指標の候補リストは圧巻のボリュームでした。多様な観点から挙げていただいたことが印象に残っています。 

川上様:

その点は、我々だけで決めなかったことが良かったと思います。 

海老名様:

社内のディスカッションには15名程度が参加し、それぞれが所属する拠点や業務内容、年次がうまく分散していました。同じくらいの若手メンバーからは「本部全体に関わるプロジェクトに若手も参加できるなんて」と驚きの声もありました。リーダーや年次の高い人だけでなく、入社34年目の若手が意見を出せたことは意義があったと思います。

最初はディスカッションへの参加に抵抗感があるのではないかと心配していましたし、スケジュール調整も大変でしたが、実際には前向きな意見が多く出て、良い時間になりました。研究開発本部は真面目な人が多く、取り組みに対するハードルが低かったこともあるかもしれません。結果的に、参加したメンバーがこのプロジェクトを「自分ごと」として捉えられたように思います。 

藤井:

「自分ごと化」は、こうしたプロジェクトにおいて重要なポイントです。サーベイの結果に納得感が生まれ、価値あるものとして捉えていただくことに繋がります。 

伊達:

組織サーベイでは「誰がやっているのか、どう活用されるのかが見えない」というケースが少なくないのですが、今回のように関わる人が一定数いて、当事者意識が芽生えている状況は良いですね。これこそがオーダーメイドサーベイの魅力の一つです。 

川上様:

私が最も印象に残っているのは、工程が進むごとに自分たちの納得感が積み重なっていったことです。自分たちの課題、自分たちの指標、自分たちの質問項目…と、すべてが「自分たちのこと」になっていたという実感がありました。 

伊達:

このような指標を挙げる作業は難しいと感じる方も多いのですが、皆さんがうまく挙げられたのは、研究開発に関連する知見があったからでしょうか。 

川上様:

商品開発や技術開発の場面で、何かの事象が起きた時に原因や次の打ち手を考えるというのは、我々の基本的な仕事の流れです。そういった思考の癖はあると思います。ただ、実際には進めながら困ったり、悩んだりもしていました。終わってみてこそ「よくやった」と思える部分もありますが、当時は不安も多かったですね。 

伊達:

人と組織についてまとまって考える時間は意外と少ないものです。今回のように、組織内の関係性や構造についてしっかり向き合い、そこに研究知見も融合できたことで有意義なサーベイになったのではないでしょうか。 

結果をどう活かすか、現場視点で考える

藤井:

プロジェクトを通じて得られたサーベイ結果を踏まえ、社内でどのように検討を進めていますか。うまく進められていること、逆に難しさを感じている点があればお聞かせください。

川上様:

現時点では、実行に移しやすいもの、またはやるべきと感じたものを中心に検討しています。既存制度との重複もないか確認しながら進めています。

また、押しつけ感や「やらされ感」が出てしまうのは避けたいと考えています。業務負担が増えるようなツールを導入する場合は、よほどの納得感と根拠が必要になると思います。 

伊達:

他にも大事にされた視点はありますか。

海老名様:

私たち自身も研究開発本部の一員であり、対策を“受ける側”としての視点を持っています。サーベイの課題を受けて、まずは「こういうことがあったらいいな」と感覚的なアイデアを出し合い、それを実現性、インパクトといった軸で整理していく形で進めました。 

伊達:

それは良いアプローチですね。「これならやってみてもいいかも」と思える施策は、シンプルですがとても大事な要素です。現場の実感に根ざしたアイデアは、形式的なロジック以上に受け入れやすさを生むと思います。 

言語化・可視化の重要性

藤井:

ビジネスリサーチラボに依頼していただいて良かった点、このプロジェクトを通じて何かお気づきになった点があればお聞かせください。 

宮後様:

良かった点としては、私たちの考えをうまく“言語化”していただけたことです。社内で話していると、「これでいいのか」「何か違う気がする」と感じる場面が多かったのですが、御社に相談した際、「それはこういうことですよね」と丁寧に整理・言語化していただき、とても腑に落ちる説明をいただきました。

一方で、結果として成果指標に対して多くの影響指標との相関関係が示され、豊富な対策案も提案いただき、良い意味で悩ましかったです。 

伊達:

たしかに、成果指標が独立性を持っていたため、影響指標も多様になりました。一般的には成果指標が似通っていると、共通の要因に絞られていくのですが、今回は指標ごとに違いがあり、要因も多岐に渡りました。 

海老名様:

最も良かったと思うのは、ぼんやりした感覚が「数字」として見える形で現れたことです。現場での違和感や不満は、時に愚痴のように扱われがちですが、今回はそれがきちんと可視化され、上層部にも伝えることができました。研究開発に携わる人間は、やはり数字で示されると納得しやすいと思います。

一方で、社内説明の際、伝わりきっているかどうかという点に課題があると感じています。 

伊達:

その点は、今後も継続的な情報発信をしていくことで補っていくことが大事ですね。データには強い力があります。特に上層部とのコミュニケーションでは、定性的な話以上に説得力を持ちます。ただし、その伝え方には工夫が必要で、ここは多くの日本企業が抱える共通課題かもしれません。 

データを活かした継続的な取り組みへの展望

藤井:

サーベイで得られたデータをどのように今後活用していきたいといった展望があればお聞かせください。 

川上様:

今回のサーベイでは、回答者の部署や役職、年代など属性ごとのデータを得ることができました。私たちの組織はそれぞれが専門性の高い業務を担っているという特徴があります。属性で分類されたデータを初期状態として手に入れられたのは、大きな意味があると思っています。

今後は、サーベイを継続実施していきたいと考えています。前回との比較によって、意識や行動がどう変化したかを見ていくことができますし、その際に属性別データが重要になるはずです。

また、我々の組織は固定的ではなく、メンバーが他のチームへ異動することも少なくありません。そうしたときに、「どこに行っても安心感がある」「公平な環境だ」と感じられるようになっていくことも、データを通じて確認していけたらいいなと思います。そうした変化の推移を見るのが楽しみです。 

宮後様:

今回得られた属性別のデータをもとに、全体施策に加えて、各部署や階層ごとに個別のアプローチができるようになると感じています。私たちが担う役割は「きっかけをつくること」であり、そこから先はそれぞれが考え、動くことが大切だと思っています。

全体に向けた打ち手だけではなく、立場ごとの解釈や対策へと展開していくことで、結果として私たちが目指す「ありたい姿」に近づいていけると考えています。 

海老名様:

今回のサーベイは本部全体に向けたものでしたので、マネージャー向けや全体的な施策が中心になりますが、個人にできることについてもデータからヒントが得られています。そこを今後はより活用していきたいと思っています。

組織を良くするためには、組織からのアプローチだけでなく、メンバー一人ひとりの主体的な動きが必要です。理想論かもしれませんが、データが個々の気づきや行動変容につながることで、双方向の取り組みになり、より良い組織が生まれていくと感じています。 

伊達:

組織全体に向けたアクションと、個人が自らの判断で起こすアクション。その両方が積み重なることで、大きな変化が生まれます。そういった循環が起きていくことを、私たちも心から願っています。

#藤井貴之 #伊達洋駆

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