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コラム

小さな休憩、大きな効果:マイクロブレイクの可能性

コラム

職場におけるマイクロブレイクの重要性が注目を集めています。マイクロブレイクとは短い休憩を指します。

長時間の集中作業は、従業員のストレスや疲労を蓄積させ、生産性の低下につながる可能性があります。一方、適切なタイミングでのマイクロブレイクは、ストレス解消や気分転換に役立ち、仕事のパフォーマンスを向上させることが期待されています。

本コラムでは、マイクロブレイクに関する研究を紹介し、その効果と実践的な示唆について解説します。

ポジティブ感情を喚起して成果につながる

マイクロブレイクを取ることが、良い気分になり、仕事の成果にもつながることがわかっています。韓国のコールセンターで働く人たちを対象に、10日間のデータを集めました[1]

マイクロブレイクは、リラックス(ストレッチや瞑想など)、軽食や飲み物をとること、同僚とおしゃべりすること、パズルや読書などの4つのタイプに分けられ、それぞれの回数が記録されました。

データを分析すると、リラックス、おしゃべり、パズルや読書などのマイクロブレイクは、良い気分になることと関係していました。これらの活動は、体と心の緊張をほぐし、周りの人に支えられている感覚を与え、仕事から少し離れられるため、良い気分になると考えられます。

また、良い気分になることで、マイクロブレイクと仕事の成果がつながっていました。マイクロブレイクで良い気分になると、やる気が出て、難しい仕事にも取り組みやすくなり、エネルギーにもなるので、仕事の成果が上がるのです。

仕事にどれくらい熱心かによって、マイクロブレイクの効果が変わることもわかりました。仕事にあまり熱心でない人では、マイクロブレイクで良い気分になることが、仕事の成果を上げることにつながっていました。しかし、仕事に熱心な人では、そのような効果は見られませんでした。

この結果は、人によってマイクロブレイクの効果が違うことを示しています。仕事にあまり熱心でない人は、マイクロブレイクで良い気分になる影響を受けやすく、その結果、仕事の成果も上がりやすいのかもしれません。一方、仕事に熱心な人は、もともとやる気が高いので、マイクロブレイクの効果があまり大きくないのでしょう。

短時間のマイクロブレイクでも効果がある

マイクロブレイクと言っても、どのぐらいの時間休めばいいのでしょうか。非常に短い休憩時間でも、仕事の成果を上げたり、疲れを取ったりする効果があることがわかっています[2]

参加者が退屈な編集作業をしている間に、リラックスするマイクロブレイク、達成感を感じるマイクロブレイク、休憩なしの3つのグループに分けた研究があります。

リラックスするマイクロブレイクは、休息を目的とした活動で、仕事から心を離して、良い気分になることを目指しています。一方、達成感を感じるマイクロブレイクは、自信を高めることを目的とした活動で、仕事とは違う活動に集中することで、回復することを目指しています。

それぞれのマイクロブレイクは「40秒間」行われ、マイクロブレイクの後に編集作業でどれくらい正確に修正できたかが記録されました。

結果を見ると、マイクロブレイクを取った人は、取らなかった人よりも良い成果を出し、心が仕事から離れている感覚がすると報告しています。

この研究の興味深いのは、非常に短い時間(40秒)のマイクロブレイクの効果を実験で確かめた点にあります。ほんの数十秒の休憩でも、仕事の成果を上げたり、疲れを取ったりする可能性があることが明らかになりました。

エネルギーマネジメントの一環として重要

マイクロブレイクは、働く人の毎日のエネルギーマネジメントに大切な役割を果たします。そのことを2つの研究を通じて検討した論文を紹介しましょう[3]

1つ目の研究では、働く人を対象に10日間のオンライン調査を行いました。結果、夜の寝付きが悪い日は、次の朝に疲れを感じやすくなり、仕事中のマイクロブレイクの回数が増えることがわかりました。

寝不足は自己調整リソースの回復を妨げるので、疲れを感じやすくなり、仕事中に自己調整リソースを節約するためにマイクロブレイクをたくさん取ります。

マイクロブレイクをたくさん取ると、その日の仕事への参加度が高くなり、仕事が終わる頃の疲れが少なくなることもわかりました。マイクロブレイクは、自己調整リソースを一時的に回復させ、仕事に集中できる状態を作り出します。

2つ目の研究では、今度は働く人を対象に5日間の調査を行いました。その結果、健康的な職場環境では、働く人はマイクロブレイクを自分で決めて取ることができ、マイクロブレイクを自分で決められるほど、朝の疲れとマイクロブレイクの関係が強くなることがわかりました。

これらの結果は、マイクロブレイクが働く人の毎日のエネルギーマネジメントに有効であることを示しています。寝不足や仕事のストレスで自己調整リソースがなくなった状態において、マイクロブレイクを取ることで、一時的にエネルギーを回復させ、仕事に取り組めるようになります。

ストレスの高い職業で特に有効

マイクロブレイクは、ストレスの高い仕事をしている人の心の健康に良い影響を与える可能性があります。

警察官を対象に、運動のマイクロブレイクが仕事のストレスと気分に与える影響を調べた結果が提出されています[4]。警察官はストレスの高い仕事の一つです。デスクワークが主な仕事の警察官も多いため、運動のマイクロブレイクでストレスが減るかを調べるのに適切です。

研究では、グループを無作為に分けて、一方のグループには13週間、職場のコンピュータに運動のマイクロブレイクのソフトウェアを入れ、もう一方のグループには何もせずに13週間様子を見ました。

運動のマイクロブレイクのソフトウェアは、一定の時間ごとに短い運動をするように促すもので、デスクワークで体と心に負担がかかるのを軽くすることを目指しています。

評価には、ストレスに関する質問票と気分を調べるテストが使われ、介入の前後と、介入が終わってから効果が消えるまでの一定期間(ウォッシュアウト期間)に測定されました。

結果としては、運動のマイクロブレイクをしたグループでは、仕事のストレスが減り、ウォッシュアウト期間の後もストレスのレベルが低いままでした。

これは、運動のマイクロブレイクの効果が、介入が終わった後もしばらく続いていたことを表しています。運動が習慣になったり、ストレスに対処する力が上がったりしたのかもしれません。

警察官のような仕事では、長く続くストレスがたまりやすく、精神的な問題を引き起こす可能性があります。運動のマイクロブレイクは、日常の仕事に取り入れやすい簡単な方法であり、ストレス軽減に役立つ可能性があります。

午前中のマイクロブレイクが効果的

一日の中でも特にどの時間帯において、マイクロブレイクの効果は高いのでしょうか。知識労働者の仕事の日において、会議と一人で行う仕事が、エネルギーのレベルにどのように影響するかを調べた研究が参考になります[5]

1つ目の研究では245人の知識労働者を、2つ目の研究では2つのテクノロジー企業の167人の従業員を対象に、5日間続けて朝と午後にアンケート調査を行いました。どちらの研究でも、会議と一人で行う仕事の時間の割合、マイクロブレイクへの参加の度合い、エネルギーのレベル(元気さと疲れ具合)などを評価しています。

分析の結果、会議に使う時間の割合が大きいほど、マイクロブレイクへの参加が減り、エネルギーのレベルが下がることがわかりました。会議は通常、一人で行う仕事よりも自由度が低く、他の人とのやり取りが必要であるため、エネルギーを使いやすいと考えられます。

興味深いことに、特に午前中のマイクロブレイクへの参加が、エネルギーのレベルと良い関係にあることがわかりました。午前中は集中力が高く、仕事の要求も高いので、マイクロブレイクがエネルギーの回復に重要な役割を果たすのでしょう。

午前中の高いエネルギーのレベルは、一日全体の成果と満足度に影響を与えます。一方、午後は、マイクロブレイクとエネルギーのレベルの関連が弱く、エネルギーのレベルが仕事の成果に与える影響も限られていました。

この研究は、主に知識労働者のエネルギーマネジメントにおいて、特に午前中のマイクロ休ブレイクの大切さを示しています。午前中は体のリズムの影響で集中力や覚醒の度合いが高い時間帯で、仕事の要求も高くなります。

午前にマイクロブレイクを取ることで、エネルギーを効果的に回復させ、一日の生産性を高めることができるかもしれません。一方、午後は疲れがたまり、マイクロブレイクの活動の効果が限られる可能性があります。

マイクロブレイクの戦略的活用

マイクロブレイクは疲れを取るための短い休憩という認識が多かったのではないでしょうか。しかし、最新の研究によれば、マイクロブレイクは働く人のエネルギーマネジメントに重要な役割を果たします。

長時間労働や休憩を取らないような働き方は、逆に生産性を下げることにつながります。働く人のエネルギーを適切にマネジメントすることは、組織の生産性を高める上で欠かせない要素の一つです。

従来の「働き方改革」を超えて、「小さな休み方改革」とも言うべきものが求められるのでしょう。「いかにうまく休むか」という視点から働き方を見直すことができます。

休憩と言うと、仕事の合間の「空白の時間」として捉えられがちでしたが、マイクロブレイクをエネルギーマネジメントのツールとして位置づけることで、休憩そのものが生産性を高める重要な活動として認識されるようになります。

他方で、休む時間まで会社が管理し、生産性向上のために利用するのはいかがなものかという懸念もあり得ます。

休憩時間は本来、従業員の心身の回復や私生活のために確保されるべきものです。休憩時間を会社が統制し、エネルギーマネジメントの名目で生産性向上のために利用することは、労働者の権利を侵害する恐れがあります。

法的な観点に限らず、休憩時間までも管理されるとなると、働く人にとってストレスを感じる要因になりかねません。会社から休み方を強制されることで、かえってリラックスできなくなる人もいるでしょう。

マイクロブレイクの実践において重要なのは、働く人の自律的なエネルギーマネジメントを促進することです。会社が一方的に休み方を管理するのではなく、働く人一人ひとりが自分に合った休み方を選択し、実践できるような環境を整備することが求められます。

例えば、マイクロブレイクの重要性を啓発し、適切な休憩を取りやすい職場の雰囲気を作ることはできます。しかし、個々人がどのようなマイクロブレイクを取るかは、あくまで裁量に任せるべきでしょう。

また、マイクロブレイクの効果を評価する際も、生産性の指標だけでなく、ウェルビーイングなど、多面的な視点を取り入れることが大切です。エネルギーマネジメントを考える中で、働く人の健康と幸福を除外してはならないのは、言うまでもありません。

脚注

[1] Kim, S., Park, Y., and Headrick, L. (2018). Daily micro-breaks and job performance: General work engagement as a cross-level moderator. Journal of Applied Psychology, 103(7), 772-786.

[2] Conlin, A., Hu, X. J., and Barber, L. K. (2021). Comparing relaxation versus mastery microbreak activity: A within-task recovery perspective. Psychological Reports124(1), 248-265.

[3] Kim, S., Cho, S., and Park, Y. (2022). Daily microbreaks in a self-regulatory resources lens: Perceived health climate as a contextual moderator via microbreak autonomy. Journal of Applied Psychology, 107(1), 60-77.

[4] Mainsbridge, C. P., Cooley, D., Dawkins, S., De Salas, K., Tong, J., Schmidt, M. W., and Pedersen, S. J. (2020). Taking a stand for office-based workers’ mental health: the return of the microbreak. Frontiers in Public Health, 8, 547969.

[5] Zhang, C., Spreitzer, G. M., and Qiu, Z. A. (2023). Meetings and individual work during the workday: Examining their interdependent impact on knowledge workers’ energy. Journal of Applied Psychology.


執筆者

伊達 洋駆 株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。著書に『60分でわかる!心理的安全性 超入門』(技術評論社)や『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)、『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)などがある。2022年に「日本の人事部 HRアワード2022」書籍部門 最優秀賞を受賞。

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