ビジネスリサーチラボ

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コラム

フェローの主な仕事

コラム

ビジネスリサーチラボにはフェローが在籍しており、毎年若干名の新しいフェローが入社します。本コラムでは、フェローが普段どのような仕事に取り組んでいるのかを紹介します。

本コラムは主に、ビジネスリサーチラボで働くことに関心がある方に向けたものですが、当社の専門性がどのように発揮されているか理解する内容にもなります。

当社のフェローの多くは、入社前に、学術研究に関する集中的なトレーニングを一定期間積んでいます。すなわち、研究能力を得た上で当社に入ります。当社の選考では研究面の能力を見極めるために、課題に取り組んでいただいています。

フェローの仕事は、研究能力を直接活かせるものから、当社での業務経験を通じて新たに得た能力をプラスして取り組む必要のあるものまで、幅広くなっています。以下、主な11種類の仕事を取り上げます。

① 研究レビュー

フェローが取り組む一つの仕事は、研究レビューです。先行研究を探し、読んで、内容をまとめる仕事であり、研究能力が活かしやすいものです。

レビューのテーマは多様で、必ずしもフェロー本人の元々の専門領域に限定されません。ほとんどが初めてのテーマに対するレビューとなることも少なくありません。

レビューは様々な目的のもとで実行されます。例えば、組織サーベイの設計、影響指標の候補挙げ、分析結果の解釈や対策の検討、セミナーのコンテンツ作成など、目的に応じてレビューの範囲、深さ、まとめ方が変わります。

ビジネスリサーチラボは、一般にデータ分析の会社として認識されているかもしれません。しかし、研究レビューは当社の基盤となる仕事であり、基本的でありながら重要です。

② 調べ物

当社のフェローは学術研究のレビューだけでなく、広く情報収集の作業にも取り組みます。特定のトレンドを調べるために、国内外のレポートをくまなく探し、短い期間で収集しまとめるなどの例が挙げられます。

調べ物は、様々な取り組みの序盤に、知識面の基礎を作るために実施する傾向があります。フェローには、研究はもちろん、ビジネスレポートなどの資料を素早く読み解く能力が求められます。

③ コラム執筆

当社は月に数本のコラムを公開しています。それらは当社のフェローによって執筆されています。コラム執筆もフェローの仕事の一つです。

コラムのテーマは多岐にわたるため、一言でその内容を説明するのは難しいですが、例えば次のようなものがあります。

  • 研究の最新知見を紹介するもの
  • 分析手法の専門的な解説を行ったもの
  • 特定のイベントでの発言を要約したレポートなど[1]

当社のコラムは数千字のボリュームがあるため、十分な下調べとまとまった時間を確保しつつも、効率的に執筆する必要があります[2]

④ データ分析

続くフェローの仕事として、データ分析が挙げられます。当社で扱う代表的なデータとしては、組織サーベイの回答データやクライアントから提供される社内のデータなどがあります。

データ分析の範囲は幅広く、初歩的なレベルの分析から、高度な技術や知識が求められる分析まで存在します。

フェローは、分析の目的を理解した上で、最も適切な手法を検討し、その分析を実行します。特定の手法での分析を依頼し、それを実行することもあります。

当社にはデータ分析を得意とするフェローが在籍しています。それぞれが得意とする分析手法や、まだ習得中の手法があります。分析能力は、選考プロセスで基本的な水準を確認していますが、データ分析は常に進化している領域であり、スキル面で成長の余地があるため、社内での業務を通じて、またフェロー同士の学び合いを大切にしています[3]

なお、当社で行われる分析はほとんどが定量的なものです。定性的な分析も行うことはあるものの、珍しいケースです。

⑤ セミナー登壇

フェローとしての仕事に、セミナーの登壇があります。イベントで講演をしたり、パネルディスカッションでパネラーを務めたりします。

最初のうちは、当社が主催するセミナーでの登壇が中心となりますが[4]、経験を積むことで、他社主催のイベントへの登壇の機会も増えてきます。

これらの登壇の聞き手は実務家の方々で、特に当社の場合、企業の人事部門やHR関連の事業者の方が多いです。

過去には、対面での登壇が主流でしたが、コロナ禍をきっかけに、オンラインでの登壇の機会が増えました。今後は、対面とオンラインの両方での登壇が考えられます。

セミナー登壇の前段階として、講演内容の検討から始め、発表用のスライドを作って、実際に講演を行います[5]

⑥ 学術的な活動

当社では日頃から研究知見を参照し、それを元にクライアントワークを行っています。その中で、理論的な観点から興味深い結果が得られることがあります。

当社では、業務時間を利用して、それらの結果を学術的な形式で発表することがあります。すなわち、フェローの仕事の一つとして、学会発表や論文執筆なども行っています。

とりわけ、クライアントとの相互作用を通じて、独自の視点から知識を生産することを目指しています。学術的な活動を通して、新たな知見や手法を身につける機会も得られます。今後も、当社にできる範囲で、学術界への貢献を、事業の一部として進めていきます。

⑦ 資料作成

当社のクライアントワークでは、さまざまな種類の資料を作成することが不可欠です。これらの資料は、クライアントに提出され、議論の素材や合意を得るための材料、さらには後年の振り返りの際の参考資料として用いられます。

資料作成の際は、コンテンツを整理し、わかりやすいデザインを心がける必要があります。そして、それぞれのクライアントの状況や特徴をしっかりと踏まえた上で、資料の内容と構成を検討することが大切です。

多くの場合、PowerPointExcelを使用して資料を作成します。短い時間内で高い品質を求められるため、要求水準を正確に理解し、それを満たすような資料を仕上げなければなりません[6]

資料作成は、他のフェローとのコミュニケーションを必要とする、相互依存性の高い仕事です。フェロー同士でやりとりしながら、資料を完成させます。

⑧ 調査設計

調査設計は、フェローとしての仕事の一部です。調査設計は重要性が高く、設計がうまくいかないと、その後が崩れてしまう可能性があります。

例えば、組織サーベイの場合、概念や項目を考えます[7]。また、社内データ分析の際には、どのデータを用いて、どのように分析するかを検討します。

調査設計を行う前提として、クライアントのニーズやプロジェクトの目的を理解しなければなりません。

加えて、先行研究の知識を持っていたり、新たな研究をレビューしながら進めたりすることも求められます。これらの側面を考慮すると、調査設計は難易度が高い仕事と言えます。

さらに、調査設計においては社内コミュニケーションも重要となります。特にプロジェクトを推進する他のフェローとの連携が不可欠です。

⑨ ミーティング参加

当社のサービスはオーダーメイド型が基本です。そのため、プロジェクトを進める中で、クライアントと何度も打ち合わせを行います。

打ち合わせは、クライアントとの意思疎通を継続し、各社が目指す方向に近づけるように、プロジェクトの進め方や内容を調整する重要な場となります。

フェローとしての仕事の一つに、こうした打ち合わせへの参加があります。議事録を取る役割の場合もあれば、分析結果をクライアントにフィードバックしたり、意見を述べたりする役割の場合もあります。

クライアントとのやりとりは、当社のサービスにおいて重要な局面を形成しており、打ち合わせはその最たる機会です。

打ち合わせに参加し、価値を発揮するためには、ビジネスマナーを当然クリアしながら、これまで紹介してきた仕事を一定の水準で遂行できる安定感が大事になります。

⑩ プロジェクトマネジメント

プロジェクトマネジメントは、クライアントワークを主導するという、より高度な仕事です。当社は、企業の人事部門をクライアントとして、組織サーベイや社内データ分析を提供しています。さらに、HR事業者に対しては、サーベイやアセスメントの開発、サービス開発のコンサルティングを行っています[8]

これらのサービスを自分で切り盛りし、初めから終わりまで一貫して関わります。クライアントとのやりとりも行います。

プロジェクトの円滑な進行を見守り、イレギュラーな出来事が起こった場合には迅速に対応しなければなりません。また、必要に応じて介入することが求められます。

プロジェクトマネジメントでは、社内とのコミュニケーションも必須です。期限に合わせて求められる品質の成果を出すために、様々なリソースを動員することが要求されます。

⑪ プロジェクト組成

最後に挙げるフェローの仕事に、プロジェクトの組成があります。基本的に、当社から営業をかけることはなく、いわゆるプッシュ営業は行っていません。普段取り組むプロジェクトは、クライアントからの相談や問い合わせがきっかけになっています。

相談や問い合わせをいただいてからプロジェクトを開始するまでには、いくつかの超えるべきステップがあります[9]

プロジェクト組成の仕事では、これらのステップを着実に進め、プロジェクトが開始できるようにします。プロジェクトの中身を深く理解している方が、実現可能な形で組成を行うことができます。

 

以上の11種類の仕事は、フェローの主な仕事ですが、他の仕事がないわけではありません。また、組織や事業が変化すれば、仕事の内容も変化する可能性があります。

これらはあくまで現時点でフェローが取り組んでいる仕事であり、その時々で要請に応じて変更が加わることがあり得ます。

脚注

[1] 最近のコラム一覧:https://www.business-research-lab.com/category/column/
[2] 参考:ビジネスリサーチラボにおけるコラムの位置づけと考え方
[3] データ分析に関するコラムの一例:潜在差得点モデルとは何か
[4] 当社の主催するイベント情報
[5] 参考:研究知見を実務家に伝える講演のポイント
[6] 組織サーベイの分析結果の場合のアウトプットイメージ:データ分析のアウトプットイメージ
[7] 質問項目の設計に関する知識をまとめたコラム:心理尺度の作り方・考え方:組織サーベイの質問項目作成のポイント
[8] 当社のサービス概要
[9] 参考:プロジェクトの始まり方:取引に至るまでの流れ


執筆者

伊達洋駆:株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。著書に『60分でわかる!心理的安全性 超入門』(技術評論社)や『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)、『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)などがある。2022年に「日本の人事部 HRアワード2022」書籍部門 最優秀賞を受賞。

#伊達洋駆

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