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コラム

リファラル採用の意義と、社員の紹介行動を促す方法

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本コラムでは「リファラル採用」をテーマに取り上げます。リファラル採用には、どのような意義があるのか。社員が自分の知人・友人を紹介する行動を促すには、どうすれば良いかを解説します。

リファラル採用は、社員が自分の知人・友人を自社に紹介する採用手法を指します。海外では主要な採用手法の一つであり、近年、日本においても導入が進んでいます。リファラル採用を支援するサービスも市場で提供されており、普及に拍車をかけています。

リファラル採用には、どのような意義があるのか

リファラル採用には、外部労働市場に出てこない人材にアプローチできるという特徴があります。明確に転職活動を行っていない人材も採用のターゲットにすることができるのです[1]

例えば、転職を検討しているもののまだ活動はしていない人、それから、転職を真剣に考えていないような人であっても、知人・友人からの声がけがあれば、「その会社に入社したい」という気持ちが芽生えるかもしれません。もちろん、皆が皆、声がけによって動くわけではありませんが、リファラル採用以外の採用手法では、なかなかこうはいきません。この点はリファラル採用の大きな独自性です。

リファラル採用においては、労働市場に出て来にくい人材にアプローチできた後も、実際に採用できる可能性が高いことが明らかになっています[2]。例えば、リファラル採用は、それ以外の採用方法と比べて、選考に合格する可能性が高いことが報告されています。リファラル採用は、少ない選考でも採用上の成果をあげることができ、選考の効率が高いのです。

それだけではありません。内定を出した後に承諾する可能性が高い点も、リファラル採用の特徴です。たとえ内定を出したとしても、辞退されてしまうと、すなわち、自社に入社してくれないと採用に成功したとは言えません。その意味で、リファラル採用の承諾率の高さには意義があります。

リファラル採用の効果は、入社後にも続きます[3]。リファラル採用とそれ以外の採用方法を比較した際、リファラル採用で入社した場合の方が離職の可能性が低いことが分かっています。内定を無事承諾して入社したとはいえ、その後に辞めてしまうと、再び採用をしなければなりません。定着効果を持つリファラル採用の有効性がうかがえます。

入社後に会社や仕事に満足して働くのも、リファラル採用に見られる特徴です。他の手法と比較した際に、リファラル採用のほうが入社後の満足度が高いことが実際に検証されています。

リファラル採用の効果は、なぜ生じるのか

ここまで紹介してきた通り、リファラル採用は他の手法よりも多くの効果が見込まれます。それにしても、なぜ、リファラル採用において様々な良い影響が現れるのでしょうか。主な理由は2つあります[4]

1.社員が紹介時点で選抜している

第1の理由は、事前の選抜が行われている点です。社員が自分の知人・友人を紹介する際に、「この会社に合っているか」を見極めているということです。自社に合っていないと思う知人・友人に、わざわざ自社を紹介することはありません。

社員が知人・友人に自社を紹介する時点で、ある程度の適合度が見込まれます。少なくとも、他の手法と比べて自社にフィットした人材が選考に来る可能性が高いのです。社員による事前の選考が済んでいるため、いざ紹介してもらった後は、合格率や承諾率が高く、入社後も満足度や定着率が高いと考えられます。

2.社員が自社の実態を伝えている

第2の理由は、リファラル採用で紹介された人は、企業の実態を分かった上で選考に参加している点です。社員は自分の知人・友人に自社を紹介する際に、「うちの会社は、こんな働き方をしている」といった具合に、自社の実際のところを伝える傾向があります。

対して、リファラル採用以外の手法の場合、こうした実態に関する情報を入手するのは簡単ではありません。入社して本格的に働き始めてから、様々な現実を目の当たりにするのが普通です。その結果、入社前の期待と入社後の現実の間に乖離が生まれ、衝撃を受けることもあり得ます。

これを「リアリティ・ショック」と呼びます[5]。リアリティ・ショックは、早期離職の要因の一つであることが検証されています[6]。入社前に企業の実態を知ることができれば、紹介される知人・友人も「自分がその会社に合っているか」を判断できます。

リファラル採用においては、紹介する社員側も、紹介される知人・友人側も、採用の精度を高めることに貢献します。そうして良質なマッチングが果たされ、良い成果に結びついているのです。

リファラル採用には限界もある

ここまでは、リファラル採用に関する長所を指摘してきました。しかし、他の手法がそうであるように、リファラル採用もまた完全無欠な手法であるわけではなく、注意すべき限界もあります。

リファラル採用は、紹介する社員と紹介される知人・友人の関係性を採用に動員します。社員と友人・知人の人間関係があるからこそ、会社に入った後も、紹介した社員のためにきちんと働こうとします。自分を紹介してくれた人の面子をつぶすわけにはいきません。

しかし、もし自分を紹介した社員が離職してしまったら、どうでしょうか。少し事情が違ってきます。紹介してくれた社員のために頑張ろうとする気持ちが保てなくなります。結果的に、紹介された知人・友人のパフォーマンス上昇が抑えられることが明らかになっています[7]

さらには、紹介した社員が会社を去ると、紹介された知人・友人も離職する可能性が高くなることも指摘されています。すなわち、紹介者と被紹介者の間で、離職が連鎖するかもしれないのです。

リファラル採用は人間関係を活用する手法です。この関係性が強みを生み出す一方、限界ももたらしているのは考えさせられます。こうした点を踏まえると、知人・友人を紹介してくれた社員の定着支援を積極的に行う必要がありそうです。

社員の紹介行動を促すには、どうすれば良いか

確かに、リファラル採用は完ぺきな手法ではありません。ただし、それは他の採用手法も同じです。むしろ総じて見れば、リファラル採用は効果の高い手法であると言えます。では、リファラル採用を社内で推進していくために、どうすれば良いのでしょうか。

リファラル採用の推進において鍵をにぎるのは、社員が知人・友人を紹介する行動、すなわち「紹介行動」を促せるかという点です。紹介行動はリファラル採用の出発点であり、それがなければリファラル採用は実現しません。

ところが難しいことに、ほとんどの場合、社員にとって紹介行動は業務そのものではありません。仕事上の役割の範囲を超える行動になります。紹介行動という役割外行動をとるための要因については、学術研究で着実に議論が積み重ねられています。ここでは、紹介行動を促す3つの要因を紹介しましょう。

1.会社への愛着が高いこと

第1に、会社への愛着です。会社に対して愛着を持っている社員ほど、紹介行動をとります[8]。愛着が原動力になって、「この会社のために尽力しよう」という気持ちが芽生え、紹介行動をとるのです。

この事実を踏まえると、紹介行動をとるように社員に呼びかける際には、会社への愛着の高い社員から優先的に、「知人・友人を紹介してくれませんか」と声がけするのが有効と考えられます。社員全体に広く薄く行動を促すより、個別に優先順位を付けて依頼していくと良いでしょう。

なお、会社への愛着が高まりやすい、典型的なタイミングが2つあります。一つは、入社直後です。そもそも愛着が高くなければ、入社という選択をしません。入社直後は会社への愛着が高い状態であるため、そのタイミングで紹介行動を促しましょう。

もう一つは、管理職になった後です。管理職になると、会社の代表として振る舞うことが増え、会社を背負う意識も芽生えてきます。そうして会社への愛着が高まります。新任管理職に対して、紹介行動を促すように働きかけるのも一策です。

2.知人・友人を助けたい気持ち

紹介行動に関する第2の要因は、自分の知人・友人を助けたいと思う気持ちです。知人・友人を助けたい気持ちがあるほど、紹介行動をとることが分かっています[9]。社員による紹介行動は、会社にとって意義のあることですが、知人・友人にとっても有益です。

例えば、今の仕事が上手くいっていない知人・友人、今の会社が合っていない知人・友人に自社を紹介すれば、知人・友人を助けることができます。紹介行動は、それが適切なタイミングで行われれば、知人・友人に手を差し伸べることを意味します。

とはいえ、社員とその知人・友人の間の関係性はあくまでプライベートなものです。そこに直接、企業が立ち入ることはできませんし、望ましくもありません。一方で、社員が知人・友人と関わることのできる時間的なゆとりを企業が提供することは可能です。

例えば、労働時間が過度に長かったり、休みがとれなかったりすると、社員は知人・友人と疎遠になります。知人・友人の現状を把握できなくなり、助けたい気持ちが生まれにくくなるでしょう。プライベートを充実させられる労働環境を提供すれば、間接的に紹介行動を促すことにつながっていきます。

3. 社内での評判の高さ

第3の要因は、社内での評判です。社内で評判が高いほど紹介行動を起こそうとします[10]。社内における評判の高さが紹介行動と関連するのは、紹介行動に伴う性質が関わってきます。

紹介される企業にとって、社員からどのような人材が紹介されるのかは未知数です。その意味で、社員の紹介行動は企業にとってリスクがあります。ただし、社内で評判の良い人からの紹介であれば、どうでしょうか。「あの人の紹介なら大丈夫」と思えます。

企業から信頼されていると、社員としても紹介しやすくなるのは、自然なことです。そのため、社内での評判が高い社員は紹介行動をよくとるのです。このことは、「自分が知人・友人を紹介すれば、会社は喜んでくれるはず」と社員が感じることができれば、紹介行動が促される可能性があることを示唆しています。

社員から知人・友人の紹介があった際に、知人・友人に対して丁寧に接するようにしましょう。加えて、紹介行動に対してしっかりと感謝を表明することが大切です。たとえ、紹介された知人・友人が選考で不合格になったとしても、紹介そのものにお礼をしましょう。

4. リファラル採用での入社経験

紹介行動をめぐる第4の要因は、自分自身がリファラル採用で入社していることです。これまでの研究によると、自分が紹介されて入社している社員ほど、紹介行動をとることが検証されています[11]

自分がリファラル採用を経験していると、上手くいった実績があるため、自分の知人・友人にも自信を持って声がけできます。知人・友人にとっても、リファラル採用の経験者からの誘いであれば、安心です。誘いに乗りやすいことでしょう。社内にリファラル採用で入社した社員がいれば、その社員に対して、知人・友人を紹介してもらうように依頼しましょう。

自分がリファラル採用で入社していると、紹介行動をとる本人にとってリファラル採用が身近なものとなります。逆に言えば、リファラル採用が身近な社員ほど紹介行動に意識が向かいやすいと考えられます。自分はリファラル採用で入社していないとしても、リファラル採用で入社した社員が職場にいる場合、そうした社員への声がけも有効です。

紹介ボーナスの功罪

最後に、紹介ボーナスについて触れておきます。紹介ボーナスとは、紹介行動に際して企業から社員に提供される広義の報酬を意味します。日本においては紹介インセンティブとも呼ばれます。紹介ボーナスの制度を作る際には、日本の法律に注意する必要があります。

海外では紹介ボーナスを提供する企業があり、紹介ボーナスに関する研究が行われています。学術研究によれば、紹介ボーナスがあるほうが紹介行動は促されます[12]。興味深いことに、紹介ボーナスがあれば、会社への愛着がそんなに高くなくても紹介行動をとることも報告されており、紹介ボーナスは会社への愛着を代替している様子がうかがえます。

しかし、紹介ボーナスには難しい側面もあります。紹介ボーナスが紹介行動を促すのは確かですが、それでは紹介ボーナスを増やせば良いかと言うと、そういうわけではありません。例えば、紹介ボーナスの額が大きくなると、たとえ自社に合っていなくても、紹介行動をとろうとすることが示されています。さらには、多額の紹介ボーナスがあれば、そこまで親しくない関係の知人・友人も紹介するようになります[13]

自社に合っていなくても紹介したり、本人のことをあまり知らなくても紹介したりすることは、紹介の質の低下と捉えることができます。元をたどると、リファラル採用の特徴は高品質な採用である点が長所でした。

ところが、紹介ボーナスの設定の仕方次第で、リファラル採用の長所が失われる可能性があります。紹介ボーナスの設定自体を否定するものではありませんが、他の要因を抑制してしまわないか、細心の注意が求められます。

 

執筆者

伊達洋駆:株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。近著に『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)や『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)など。

 

 


[1] Hensvik, L. and Skans, O. (2016). Social networks, employee selection, and labor market outcomes. Journal of Labor Economics, 34(4), 825-867.

[2] Burks, S. V., Cowgill, B., Hoffman, M., and Housman, M. (2015). The value of hiring through employee referrals. The Quarterly Journal of Economics, 130, 805-839.

[3] Zottoli, M. A. and Wanous, J. P. (2000). Recruitment source research: Current status and future directions. Human Resource Management Review, 10(4), 353-382.

[4] Fernandez, R. M. and Weinberg, N. (1997). Sifting and sorting: Personal contacts and hiring in a retail bank. American Sociological Review, 62(6), 883-902.

[5] Schein, E. H. (1978). Career Dynamics: Matching Individual and Organizational Needs, 6834, Addison-Wesley.

[6] Dunnette, M. D., Arvey, R. D., and Banas, P. A. (1973). Why do they leave. Personnel, 50(3), 25-39.

[7] Castilla, E. J. (2005). Social networks and employee performance in a call center. American Journal of Sociology, 110(5), 1243-1283.

[8] Bloemer, J. (2010). The psychological antecedents of employee referrals. The International Journal of Human Resource Management, 21, 1769-1791.

[9] Van Hoye, G. (2013). Recruiting through employee referrals: An examination of employees’ motives. Human Performance, 26, 451-464.

[10] Smith, S. S. (2005). Dont put my name on it: Social capital activation and job-finding assistance among the black urban poor. American Journal of Sociology, 111, 1-57.

[11] Fernandez, R. and Castilla, E. (2001). How much is that network worth?: Social capital returns for referring prospective hires. In N. Lin, K. Cook, R. Burt (eds.) Social Capital: Theory and Research. Aldine De Gruyter, New York.

[12] Pieper, J. R., Greenwald, J. M., and Schlachter, S. D. (2018). Motivating employee referrals: The interactive effects of the referral bonus, perceived risk in referring, and affective commitment. Human Resource Management, 57, 1159-1174.

[13] Bond, B. M., Labuzova, T., and Fernandez, R. M. (2018). At the expense of quality. Sociological Science, 5, 380-401.

#伊達洋駆

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