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コラム

キャリア自律の行動科学:従業員のキャリア自律を促す処方箋(セミナーレポート)

コラムセミナー・研修

ビジネスリサーチラボは、2022615日に「キャリア自律の行動科学:従業員のキャリア自律を促す処方箋」を開催しました。

昨今、自律的にキャリアを形成することが重視されています。一方で、従業員のキャリア自律を促そうと様々な施策を行っても、上手くいかない企業も多いことでしょう。本セミナーでは、キャリア自律を促す方法について、理論と実践の両面から解説しました。

前半は、ビジネスリサーチラボの伊達洋駆から、キャリア自律を考える上で手がかりとなる「キャリア・アダプタビリティ」について、研究知見を紹介しています。後半では、積水ハウスの藤間美樹氏から、実際の取り組み事例をご紹介いただきつつ、伊達と対談を行いました。

本レポートはセミナーの内容を基に編集・再構成したものです。

登壇者

 

 

 

 

 

藤間 美樹 氏
積水ハウス株式会社 執行役員 人財開発部長。1985年神戸大学卒業。同年藤沢薬品工業(現アステラス製薬)に入社、営業、労働組合、人事、事業企画を経験。人事部では米国駐在を含め主に海外人事を担当。2005年にバイエルメディカルに人事総務部長として入社。2007年に武田薬品工業に入社し、本社部門の戦略的人事ビジネスパートナーをグローバルに統括するグローバルHRBPコーポレートヘッドなどを歴任。2018年7月に参天製薬に入社し執行役員人事本部長などを歴任。2020年12月に積水ハウスに入社し、2022年2月より現職。M&Aは米国と欧州の海外案件を中心に10件以上経験し、米国駐在は3回、計6年となる。グローバル化の流れを日米欧の3大拠点で経験し、グローバルに通用する経営に資する戦略人事を探究。人と組織の活性化研究会「APO研」メンバー。

 

 

 

 

 

伊達 洋駆
株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役。神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。著書に『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)や『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)などがある。


キャリア自律を考える手がかり:キャリア・アダプタビリティ

伊達:

キャリア自律を考える上で手がかりとなる学術概念に、「キャリア・アダプタビリティ」があります。キャリア・アダプタビリティとは、簡単に言えば「変化する仕事や労働条件に準備する態勢」を指します。

キャリア・アダプタビリティは、関心(Concern)・統制(Control)・好奇心(Curiosity)・自信(Confidence)4つから構成されています。それぞれ英語の頭文字を取って、4Cとも呼ばれています。

各要素は、次のような意味を持っています。

  • 関 心:自分のキャリアに関心を持つこと
  • 統 制:自分のキャリアを自分のものと捉えること
  • 好奇心:キャリアに関する成長の機会を探ること
  • 自 信:自分の仕事上の能力に自信を持つこと

この4要素が高い人材は、キャリア自律が高い人材と捉えられます。さらに、キャリア・アダプタビリティが高い人は、業務パフォーマンスが高いこともわかっています。キャリア自律が高いことは企業にとっても重要なのです。

キャリア・アダプタビリティを高めるためには

キャリア・アダプタビリティを高めるためには、どうすれば良いのでしょうか。

まず、自社がどのような状態にあるか、現状把握することが求められます。たとえばサーベイなどのツールを利用しながら、従業員のキャリア・アダプタビリティの度合いを把握するのが良いでしょう。 

その上で、キャリア・アダプタビリティを高めていくために何が必要かを、3つの学術知見から考えます。

(1) 未来を描くための時間や、キャリアリソースを提供する

1点目として、「未来志向の人・希望を感じている人・自分を肯定的に評価している人ほど、キャリア・アダプタビリティが高い」ことが実証されています。将来のことを考え、希望を持っている人は、自律的にキャリアを形成するのです。 

ただし実際には、目の前の仕事に追われ、将来を見据える時間は取りにくいものです。そのため、「未来志向になりましょう」と伝えるだけでなく、未来を描くための時間を提供することが重要です。

さらに、希望の持てる未来を描くためには、自分一人で考えるだけでなく、素材が必要です。キャリアを考えたり、キャリアを切り開いたりするために必要な資源や素材のことを、今回、仮に「キャリアリソース」と呼ぶことにします。

たとえば、ロールモデルやキャリアパス、社内のキャリアに関するエピソードがあると、キャリアについて考えやすくなります。このような、キャリアリソースを、従業員に提供するほうが良いでしょう。

(2) 職場の意思決定に参加してもらう

2点目に、「職場の意思決定に参加している人ほど、キャリア・アダプタビリティが高い」ことが実証されています。

意思決定に参加すると、会社や職場に関する様々な情報を得ることできます。それらの情報の中には、キャリアリソースも含まれているのです。意思決定に参加することができれば、キャリアリソースを得られるため、キャリア・アダプタビリティが高まっていきます。

(3) 上司からの支援を行う

3点目に、「上司からの支援があるほど、部下のキャリア・アダプタビリティが高い」ことが実証されています。上司から支援によって、情報や協力などのキャリアリソースを得ることができるため、キャリアについて考えやすくなります。

以上のように、キャリア自律を促すためには、キャリアリソースを拡充していくことが重要であることがわかります。

キャリア自律が高まると、離職意思の上昇・低下が同時に起こりえる

ここまでは、良い効果をもたらすキャリア自律を、どのように高めていくかという前提でお話ししてきました。ただ、薬に主作用と副作用があるように、人事の取り組みにも主作用と副作用があります。ここからは、キャリア自律の持つ副作用について紹介します。

副作用の一つとして、たとえば、多くの方が「キャリア自律を支援したら、従業員が離職してしまうのではないか」という懸念を持たれているかもしれません。

この懸念は、部分的に正しいといえます。実際、キャリア・アダプタビリティが高まると、離職意思が上昇することが検証されています。自律的にキャリアを描けるようになると、会社に依存せずに済み、他の選択肢が見えてくるからです。

ただし、同時に、離職意思が下がることも明らかになっています。なぜなら、会社に愛着を感じるからです。自分のキャリア自律を支援してくれた会社は良い会社だと考え、退職しないでおこうと思うのです。

離職意思を抑えるためには、従業員が「支援された」と感じられる支援を

伊達: 

離職意思の上昇・低下のメカニズムが同時に起こるのが、キャリア・アダプタビリティです。果たして、外に出ていこうとする力と、内部に引き留めようとする力、どちらが大きいのでしょうか。

多くの研究を統合的に分析した論文では、キャリア・アダプタビリティが高いほど、離職意思を低める効果のほうが大きいことが分かっています。そのため学術的には、離職はそこまで深刻に考えるべき問題ではない、と言えます。

加えて、上司や同僚からの支援があると、その支援にお返ししたい気持ちが従業員に生まれ、結果的に、キャリア・アダプタビリティを高めても、離職意思は高まらないことも明らかになっています。

ここでポイントとなるのは、キャリア自律への支援が、「従業員本人にとって、支援であると感じられていること」です。そうでないと、お返ししたい気持ちも芽生えず、離職意思が高まってしまう可能性があります。

以上、キャリア自律を考える手がかりとなる、キャリア・アダプタビリティの学術知見を紹介しました。ここからは藤間さんに登場していただき、従業員のキャリア自律を促すために有効な施策について対談していきます。

キャリア自律を高めるためには、本人の内的動機づけが重要 

藤間:

キャリア自律について、たとえば新任マネジャー研修などで教えたとしても、思うように高まらないと感じる人事の方も多いことでしょう。

なぜうまくいかないのでしょうか。キャリア自律の「自律」とは、「自ら考えて行動する」ことです。それなのに、研修で「このようにキャリア自律しなさい」「分かりました、その通りにします」となると、自律しているとは言えません。キャリアに限らず、「自律」と名のつくものは、教えることが難しいのです。

そこで必要なのは、「本人の内的動機づけを高めること」と、「内的動機づけを高めるような、外的環境を整えること」です。

まず、「本人の内的動機づけを高めること」ですが、本人が自らの動機づけを高め、行動変容しなければ、キャリア自律は始まりません。

私の友人で、仕事を始めたものの上手くいかず、何事にも自信が無くなり、結婚したら仕事は辞めようと思っていた方がいます。しかし、あるときジャック・ウェルチの本を読んだら、「自分の運命は自分でコントロールすべきだ。さもなければ、誰かに、コントロールされる」という言葉に出会い、目が覚めたそうです。

その後、友人は人事として活躍しています。「自分で決めると自由になり、幸せになる」とも言っていました。これがキャリア自律の本質だと思います。

内的動機づけを高める環境としての「キャリア面談」

伊達:

その方の場合、ジャック・ウェルチの言葉が、内的動機に火を付けたのかもしれません。とはいえ、もちろんジャック・ウェルチの本を配れば、すべての人の内的動機が高まるわけではありません。実際に、藤間さんが外的環境を整えるために取り組まれていることを教えてください。

藤間:

2021年、積水ハウスではキャリア自律を高める施策を開始しました。その一つとして、「キャリア面談」という名の、上司―部下での1on1を導入しました。

伊達さんの著書『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』にもありますが、キャリア自律を促すためには、上司からのサポートが重要だと考えたのです。キャリア面談では部下が様々な話をし、上司はそれを聞き、問いかける形を取っています。

伊達:

キャリア面談の場で自分の仕事を振り返ったり、「自分はこう思う」「こうしていきたい」と表明したりする経験を積み重ねれば、少しずつ自律に慣れていきます。この慣れが大事で、慣れによって、より大きなキャリアの問題について考えることもできるようになります。

参加者からの質問(1):従業員にとって、なぜキャリア自律が必要か

伊達:

ご質問いただきました。「キャリア自律が会社にとって意義があることは数々の情報を見て理解しております。一方で、従業員にとって、なぜキャリア自律が必要かについて論じられることは多くありません。関心を高めるためにも、従業員にとってなぜキャリア自律が必要かをご教示いただければ幸いです」とのことです。

藤間:

特に日本において、従業員の関心が少ない原因の一つは「ローテーション」です。今は人事にいるが、来期はどこに配属されるか分からない。それを拒否すれば退職になる。そのような状況では、やりたいことがあっても考えるだけ無駄と感じるのも当然でしょう。

キャリア自律を促すことと、従業員がやりたいことを叶えられる仕組みをセットで作る必要があります。自身が望むキャリアを実現するロールモデルが増えていけば、組織も変わっていくのではないでしょうか。

伊達:

「日本の産業構造が~」などと論理的に説明することもできるかもしれませんが、キャリア自律は説得するものではないように思います。

それよりも、キャリア自律したほうが楽しく働けるなど、ポジティブな方向性に誘う方が良いのではないでしょうか。そのために、藤間さんがおっしゃったロールモデルは重要ですね。「自律的にキャリアを形成し、楽しく働いている」という身近な事例があると有効です。

藤間:

ロールモデルの効果は、私自身も体験しています。以前、製薬会社で営業をしていたのですが、その会社にはグローバルビジネスにチャレンジする制度がありました。それを利用した職場の同僚が、「藤間も受けろ」と勧めてきたのです。自分には関係ないと思っていたことに、身近な存在が関わっていた。それがなかったら、今も営業をやっていたかもしれません。

伊達:

まさに、内的動機づけが高まるきっかけになったお話ですね。人とのつながりなどのきっかけを、人事がいかに提供できるかが重要という理解もできるかもしれません。

私は、キャリア自律をどのように促せばいいか考える際、「人事から始めること」をおすすめしています。自分たち以外の従業員の問題だと思っていては、キャリア自律は進みません。まずは人事の方からキャリア自律を体現していくのです。その上で、キャリア自律の意義や楽しさを伝えていくと良いでしょう。

たとえば、いま、藤間さんも、ご自身の経験をお話しされました。そのように伝えていただけると、従業員側も理解しやすくなりますよね。

参加者からの質問(2):ロールモデルは必要か 

伊達: 

ロールモデルについてのご質問をいただきました。「ロールモデルは必要でしょうか。自分ではない誰かのキャリアを、テンプレート化しコピーするようなキャリア形成は、自律と相反するように聞こえます」とのことです。 

藤間:

必要だと思います。ロールモデルとは、組織の閉塞を突破した人です。全く同じように真似するわけではなく、そのような事例があると知ることで触発され、内的動機づけが高まります。そういう人が一人でもいたら、後に続く人も出てくるでしょう。

伊達:

私も、ロールモデルがいたほうがキャリア自律は進めやすくなると考えます。ロールモデルと言うと、それが正解だと捉えられてしまう可能性があるのかもしれません。ただ、あくまでも一つの事例であり、自分とは別の人生を歩んできた人のものです。

藤間さんのおっしゃる通り、ロールモデルは「触発されるもの」です。このようなことを自分もやってみたい、そのようなやり方もありなのかという感覚を、ロールモデルが高めます。さらに、ロールモデルがいることで、もしかしたら自分にもできるかもしれないと自信がつきます。

「真似するもの」としてのロールモデルは必要ないですが、「触発されるもの」「自信を導き出すもの」としてのロールモデルは有効です。

参加者からの質問(3):人事による面談は効果的か 

伊達:

「上司や同僚からの支援に効果があるのは理解しているのですが、人事当局が面談などで支援することも効果がありますか。上司や同僚より効果が薄いのでしょうか」というご質問をいただきました。

藤間:

基本的には、上司―部下間で実施していったほうが良いでしょう。たしかに、人事の専門家が行うことに、一定の効果はあります。ただ、それが本当のキャリア自律につながるかは疑問です。

積水ハウスでキャリア面談を導入した目的として、メインはキャリア自律ですが、副次的なものとして、職場の心理的安全性を築くことも意図していました。

本気でキャリアの相談をするためには、信頼関係が必要です。1回目の面談から深い話ができなかったとしても、繰り返し行っていく中で少しずつ本音の話ができるようになり、信頼関係が築けます。そうすることで、面談の場でなくとも、日常的に相談しやすくなります。 

伊達:

改めて、キャリア自律にはリスクもあるのだなと感じました。自分の考えを他の人に伝えることは、「そんなことを考えているのか」とネガティブに受け止められる可能性があります。そのリスクを、少なくとも伝える側は感じているのです。そのため、心理的安全性や信頼関係がないと伝えにくくなるでしょう。 

自律という能力だけではなく、自分の考えたことを安心して言える関係を育むことも重要ですね。

キャリア自律を不本意な離職につなげないための工夫

伊達:

続いてのテーマに移りましょう。「キャリア自律を支援すると離職されてしまう」という不安を持つ方が多くいらっしゃいます。キャリア自律の支援が、不本意な離職につながらないようにするための工夫として、どのようなことが考えられるでしょうか。

(1) 従業員の夢を叶えられる環境を社内に整備する

藤間:

1点目としては、キャリア自律が高まり、従業員が具体的な夢を描くようになった時、それを叶えられる環境が会社にあるかどうかが重要です。そのための手段の一つに、社内公募があります。空いているポジションについて社内で公募し、最もマッチした人がそのポジションを獲得するのです。

社内公募は、夢を具体化する道が会社にあるということであると同時に、競争でもあるため、ポジションを獲得するため日々の仕事に打ち込み、能力を高めることにも繋がります。従業員の努力を社内に向けてもらう仕組みを、人事が用意すると良いでしょう。

(2) キャリア自律が高まった従業員に向き合えるマネジメント力を持つ

2つ目の考え方として、たとえば組織を筋肉質にしたいとします。自分の体を筋肉質にしようと思ったら、筋トレなどで負荷をかける必要がありますよね。同じように、キャリア自律で従業員が辞めるかもしれないという負荷を、会社は受けるべきではないでしょうか。やる気が芽生えた従業員に対し、正面から対峙できる上司や人事、会社である必要があるのです。 

夢を叶えられる道をつくったのにもかかわらず退職者が増えるのであれば、従業員に向き合ったマネジメント力を高めていく必要があるでしょう。

退職者が一時的に増加しても、力のないマネジャーが脱落し、代わりに優秀な人が就く過程を踏めば、将来的には強い組織になりえます。従業員が自律的にキャリアを形成し始めたのであれば、経営陣・上司・人事も受けて立つという覚悟で、ポジティブに挑戦することが理想的です。

伊達:

本人が望んでいる環境を会社側が提供できないケースがあります。その場合、従業員が自ら望んで転職することは、果たして「問題のある離職」でしょうか。本人が望む環境を提供できないのに、無理に残そうとすることのほうが問題と言えます。

ただ、変化に伴う痛みは短期的である必要があります。従業員が望む環境と、会社が提供できる環境が異なることが常態化しているのだとすれば、採用に失敗していると捉えるべきです。採用を改善することで、その痛みをできる限り短い期間で終わらせるようにしたいところです。

参加者からの質問(4):キャリア・アダプタビリティの測定方法

伊達:

続いての質問です。「キャリア・アダプタビリティはどのように計測するのでしょうか。構成要素の4Cを本人の主観で評価するのでしょうか。変化する仕事や労働条件に準備する態勢であれば、マネジメントの観点から客観的に比較評価することが有益に思えます」というものです。

キャリア・アダプタビリティは、組織サーベイで測定できます。本人が自分のキャリアをどう捉えているか、キャリア・アダプタビリティの4Cについて回答する質問項目が、学術研究で開発されています。

ここで少し質問を読み換えましょう。キャリア自律をしている人は、外からどのように見えるのかについて考えてみます。藤間さんは、キャリア自律をしている人をどのように見つけ出されていますか。

藤間:

私が考える「キャリア自律している人」は、仕事を依頼した際に、何らかのコメントや質問をしてきたり、その疑問を自ら調べたりしています。「横道に逸れている人」と言えるかもしれません。そのような人は、現時点でキャリア目標を持っているかは分かりませんが、キャリア自律の芽が出てきている状態なのかもしれません。 

海外でも、依頼された仕事に対し、「私はこう思います」などと自分らしさを出そうとする人がいます。そのような人の仕事は、大概クオリティーが高く、昇進も早かったです。

参加者からのコメント:社内でキャリア自律の影響を検証したい

伊達:

「学術的にキャリア自律が離職意思を高めないとおっしゃっていましたが、自社でもそうだと証明するために、自社内でサーベイを実施したいと思っています」とコメントいただきました。

自社で検証していくのは、素晴らしいことです。加えて、キャリア自律の現状や、キャリア自律を促す要因も把握できると有益でしょう。

参加者からの質問(5):パーパスとキャリア・アダプタビリティの関係性

伊達:

「組織のパーパスの有無や浸透度と、キャリア・アダプタビリティの関係についての知見はありますか」というご質問をいただきました。

私の知る範囲では、そのような研究知見は見たことがありません。ただ、関係しているとは思います。というのも、先ほどお話しした通り、キャリア自律を促していくためには、キャリアリソースが重要です。パーパスは、重要なキャリアリソースの一つです。パーパスを理解することで、この会社では何が重んじられているのかがわかりますね。

藤間:

先日、1年間のリーダー選抜研修の成果として、経営陣の前で新規提案をする場に参加しました。発表者のコメントで、「会社の統合報告書を改めて熟読したところ、分かっていたつもりが、自社はここまでやっているのかと感動した。会社の経営方針やパーパスを理解するほど会社が好きになり、やる気が出た」というものがありました。

積水ハウスでは、新入社員への訓示として、「君たちは積水ハウスを選んだ。ならば、積水ハウスの経営資源を活用して社会に貢献しよう」というものがあります。積水ハウスにおけるキャリア自律の方向性の一つが、組織のパーパスにあるのです。会社が何をやっているか理解することは、キャリア・アダプタビリティを深める要素だと感じます。

おわりに

伊達:

ということで、全てのご質問に回答できました。最後に藤間さんから、一言お願いします。

藤間:

キャリア自律は奥が深く、今回登壇させていただくにあたって、私もキャリアを振り返る機会になりました。考えるのが難しいテーマではありますが、それによって自身のキャリア自律が高まると考え、ポジティブに悩みながら取り組んでいただけたらと思います。ありがとうございました。

伊達:

ありがとうございました。

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