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コラム

採用面接の科学:入社動機を効果的に高める方法とは(セミナーレポート)

コラムセミナー・研修

ビジネスリサーチラボは、2022427日に「採用面接の科学:入社動機を効果的に高める方法とは」を、株式会社人材研究所と共同で開催しました。

採用面接では、自社にマッチする候補者を見極めたうえで、候補者に「この会社に入社したい」と感じてもらう必要があります。本セミナーでは、人材研究所の安藤健氏とビジネスリサーチラボの伊達洋駆が、面接での入社動機の醸成におけるポイントについて対談形式で解説しました。

本レポートはセミナーの内容を基に編集・再構成したものです。

登壇者

安藤 健 氏
株式会社人材研究所 シニアコンサルタント。青山学院大学教育人間科学部心理学科卒業。日本ビジネス心理学会 上級マスター。組織・人事に関わる人のためのオンラインコミュニティー『人事心理塾』代表。2016年に人事・採用支援などを手掛ける人材研究所へ入社し、2018年から現職。これまで数多くの組織・人事コンサルティングプロジェクトや大手企業での新卒・中途採用の外部面接業務に従事。著書に『人材マネジメント用語図鑑』(共著:ソシム)。その他『日経ビジネス電子版』にて人事・マネジメント系コラム「安藤健の人事解体論」を連載中。

伊達 洋駆
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。近著に『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)や『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)など。


1.どのように信頼関係を構築すればよいか

適切な情報提供には信頼関係が必要

安藤:

入社動機を高める、つまりフォローにおいては、信頼関係の構築、情報収集、説得勧誘というステップを踏むことが重要です。なぜ重要なのか、ステップを逆から、フォローの目的から考えてみます。

フォローのゴールを「この企業に入りたい」と候補者に思ってもらうこととした時、やるべきこととして、「このような理由で、あなたはうちの会社と合うと思う」といった説得勧誘が必要です。

ですが、同じ情報を提供しても、入社動機が高まる人もいれば、逆に低くなる人、または全く影響がない人もいます。候補者一人ひとりに対して、適切な内容を伝えなければなりません。そのため、候補者が、どのような情報を重視しているか、どのような情報が欲しいか、という情報を収集する必要があります。

情報をヒアリングする際、信頼関係が構築できていないと、深いヒアリングができません。深いヒアリングができれば、それに沿った情報、より深い情報を提供できます。それゆえ、まずは信頼関係の構築が必要となります。 

信頼関係を構築する「自己開示」

伊達:

信頼関係を構築する方法の一つとして、「自己開示」が挙げられます。自己開示とは、その名の通り「自分のことを開示する」ことです。

面接におけるコミュニケーションは、基本的に「面接官が質問をして、候補者が回答する」という関係になりがちです。コミュニケーションが一方通行になっており、面接官側から自分の話をすることが少ない。信頼関係を構築するためには、面接官が、意識的に自分自身のことを話すことが重要です。

相手に自己開示されると、自分も自己開示しようという気持ちになる「自己開示の返報性」があると言われています。自己開示をお互いに行っていく中で、関係性が深まるのです。

安藤:

自己開示するタイミングの一つは、「質疑応答」です。これは通常とは逆のコミュニケーションになるため、自分のことや会社のことを話す機会があります。特に話しやすいのは、入社動機を語るときです。実際、候補者から「なぜ入社したのですか」という質問があることが多いと思います。

そのときに、「私が入社した理由はこれ」「私はこういうこと大事にしていたので」と話せると、自己開示のきっかけになります。

伊達:

もう一つのタイミングは「アイスブレイク」です。アイスブレイクの方法として、志望動機など、候補者が用意してきた回答を話せるような質問をする、というものがあります。候補者は用意してきたことを伝えればいいので、安心して話すことができます。

アイスブレイクで候補者に聞いた質問に、面接官自身も答えると良いでしょう。相手に志望動機を聞いたのであれば、自分が会社に入ったときの志望動機を話すのです。

自己開示する際には自慢にならないよう注意が必要です。例えば、自分のキャリアでうまくいかなかったときの話、失敗談などを自己開示すると良いかもしれません。 

面接官が「自分が20代のときに、こういう失敗をして、上司に怒られた」「それに対して、こう対処して、何とか事なきを得た」といった話をする。すると、候補者も自分が失敗したとき、どう立ち振る舞ったかを話そうという気持ちになります。

安藤:

通常、失敗談は他の人には話すことが少ないものです。ただ、面接官が失敗談を話すことは、「あなたには腹を割って話します」と、ある意味秘密を共有することであり、それ自体が親近感を持たせるものです。秘密を共有することは、信頼関係を構築するときに重要ですよね。

Q:どのような自己開示が効果的か

安藤:

「自己開示として、何をどのように語れば、より効果的に信頼関係が構築できますか」というご質問をいただきました。今のお話に通じますね。

私は採用面接・フォロー面談を行う機会が多いのですが、その中で、最初に候補者と会うときには、就活をどう進めているか聞き、「私のときの就活はこうだった」という話をします。 

特に、今の就活生はコロナ世代などとも言われ、我々の時代の就活、あるいは学校生活でさえ全く異なります。その部分を汲むような、「学校もずっとリモート授業で、学生時代の経験として話せるようなエピソードって、なかなか見つかりにくいよね」といった話をしていきます。

すると候補者は、「この人、私たちの置かれている状況を分かってくれようとしている」という感覚を持てます。それがアイスブレイクになったり、本音を語ってくれたりすることにつながるかもしれません。

伊達:

関心を持って話を聞くことは、信頼関係を構築する上で大事ですよね。確かに面接は、評価するという機能を持ってはいます。しかし、評価は面接が終わってからでもできます。終わってから内容を振り返り、評価をすればいいのです。

あくまでも面接中は、相手の話を聞くことに注力する。相手の話に関心や好奇心を示すことが重要です。

安藤:

面接が上手い方は、候補者に、面接で評価されている感覚を抱かせません。その候補者の人生を、好奇心を持って知ろうとしている。それが、「この人、自分のことを本気で聞きに来ているな」という感覚につながるので、フォローになるといえます。

Q:会社や職場に対する信頼感をどのように構築すればよいか

安藤:

続いてのご質問です。「ここまでの信頼関係は、候補者と面接官との信頼関係だと思います。もう少し広い意味で、採用担当者の向こう側に存在する、入社しようとしている会社や職場の人間に対する信頼感を、どのようにイメージさせるといいですか」とのことです。

目の前の面接官に対する信頼関係と、その面接官が所属している会社全体に対する信頼度はつながっているのか。研究知見から何か分かっていることはありますか。

伊達:

良くも悪くもつながります。目の前の面接官を信頼するからこそ、職場にも、その面接官と同じような人たちが集まっているだろうと考え、そうした会社はいいなと思います。

ただ、面接官を信頼して、「面接官のような人と一緒に働きたい」と思うことにはネガティブな側面もあります。それぞれの職場のメンバーは、面接官とは異なるパーソナリティーや価値観を持っている可能性があるからです。実際に働き始めてみると不適応を起こすおそれがあります。

良くも悪くも、目の前の面接官の印象が、会社全体の推論につながりやすい。それを踏まえた上で、注意すべき点が2つあります。

1つ目は、「会社のメンバーの価値観を代表するような人が、面接官を務めているかどうか」です。そこにずれがあると、候補者は実態に合わない推論をします。

2つ目は、「うちの会社は、自分(面接官)と同じようなパーソナリティーの人たちばかりで構成されているわけではない」と注意喚起すること。こういう人もいるし、こういう人もいます、と入社後の姿をイメージできる情報を提供することが重要です。

安藤:

今面接をしている面接官との信頼関係も重要ですが、たとえば、他の先輩社員に面談してもらい、そこでも信頼関係を構築することが有効でしょう。面接官1人だけが、候補者と信頼関係を構築しなければならない、というわけではありません。 

伊達:

信頼関係が構築できている人が1人いれば、その人から紹介してもらう社員に対して、候補者は信頼関係を築きやすくなります。

そう考えると、面接官よりも、まずは候補者に対して何度も接する採用担当者やリクルーターが信頼関係を構築し、その後、社員を紹介していく流れが良いでしょう。「この人の紹介だから、話してみたい」と思えるようになります。

本来、人と人との信頼関係は、1回の短い時間では築きにくいものです。候補者と複数回会うことができる人が、信頼関係のハブになり、他の社員を紹介していく。そうすると、候補者も会社の雰囲気も分かってきます。

2.どのような情報を候補者から収集すればよいか

安藤:

次に、フォローのために、「候補者からどのような情報を収集すればいいか」というテーマです。

伊達:

候補者の志望度を高めるために必要な情報として、2つ考えられます。

情報(1):働く上でのニーズ 

1つ目は、「働く上でのニーズ」です。どのような場所で働きたいと思っているか、どのような人材になりたいと思っているかなど、その企業に対するニーズを聞くのです。

なぜニーズを聞く必要があるのでしょうか。それは、自社が、候補者のニーズを満たすような環境や働き方を提供できるか、考えるためです。ニーズを満たす環境を提供できるのであれば、次のステップで、「提供できます」と伝えることができるのです。

候補者から聞き出すニーズとして、最も重要なのはキャリアです。キャリアに関するニーズを、いかに引き出せるか。「引き出す」と言うよりも、「キャリア相談に乗れるか」という方が表現としては適切です。

候補者のキャリア相談に乗ると、候補者から、どのようなキャリアを歩んでいきたいかについて情報が得られます。キャリアのニーズを満たすような仕事や環境を、自社が提供できるのかどうかを考える。もし提供できないのであれば、ミスマッチが起きてしまいます。

安藤:

採用活動は入り口ですが、採用した後に何が待っているのかをイメージできることが重要ですね。フォローのためにも、キャリアパスを描けるような状況を、採用活動と合わせてつくっておく必要はありますね。

情報(2):能力

伊達: 

2つ目は「能力」です。たとえば、どのような経験をしてきたか、その経験を通じて何を学んだか、どのようなスキルを今持っているかなどを聞きます。

能力については、見極めのときに気にしがちです。しかし、実はフォローという意味でも、能力についての情報を得ておくことが有効です。それは、候補者の能力を、自社が求めているものかどうかを考えることができるからです。 

もし自分たちが求めている能力を持っている人が現れたら、そのことを率直に伝えるのです。それ自体が惹きつけになります。

安藤:

能力に関しては、面接プロセスの中で、どのような経験をして、何を学んで、それをどう活かしていきたいかをヒアリングしておくと良いでしょう。

それらを一通り聞き終わった後、「うちの会社で、あなたが持っているような挑戦心やバイタリティーを、このように活かしてもらえいます」「それを会社が後押しする環境や制度も、このように揃っています」「そのような人たちはこのように評価されて、このようなキャリアを歩んでいます」と伝える。

すると候補者は、「自分が持っている能力を、存分に活かせる環境だ」という感覚を抱きます。

情報(3):不安要因

安藤:

伊達さんが挙げた2つの情報に加えて、「不安要因」も必要でしょう。候補者は会社に対し、「業務時間が長いのでは」「給料が低いのでは」「育成制度が整っていないのでは」など様々な不安を感じています。それらをヒアリングする必要があるのです。

なぜ不安要因を聞き出すことが必要なのか。それは、もし候補者が抱いている不安が誤解だった場合、それを解かなければならないからです。「給料が安いのでは」という不安を聞き出せていれば、次のステップで、「業界と比較しても安いわけではない」と情報提供できます。

3.どのように候補者の不安要因を取り除けばよいか

不安要因が誤解だった場合 

安藤:

最後のテーマは、「候補者が抱く自社への不安要因を、どのように取り除けばよいか」についてです。

不安要因が候補者の誤解だった場合、「それは間違っている」「誰から聞いたんだ」と感情的になるのではなく、「そう思っていたのですね。ただ、うちはこういう具体的・客観的事実に基づいて、そうではないですよ」と、冷静に伝えることが重要です。

ここで注意すべきことがあります。面接官は、会社から「あなただったら、面接官としてやっていける」と選ばれていることが多いものです。そのため、面接官は、会社に対する愛着や、会社との一体感が高い傾向があります。

そのような人たちが、「御社は長時間労働ですよね?」などネガティブな不安を聞いたとき、かつ、それが誤解である場合、感情的になってしまうことがあります。組織と一体化している人物であればあるほど、自分が否定された感覚になるおそれがあるのです。

そのようなとき、面接官はいったん落ち着く必要があるでしょう。特にフォローで重要なのは、事実よりも気持ちです。候補者の抱く不安が誤解であったとしても、不安に思う気持ちを解かないといけません。まずは候補者の抱いている不安を知り、その後、不安が誤解である理由を冷静に伝えることが必要です。

不安要因が事実だった場合

安藤: 

一方、不安要因が事実である場合もあります。たとえば、その会社が、人件費に充てる原資を、従業員の基本給により多く反映させているか。それとも、育成機会や教育プログラムにより多く反映させているか。

このように、ビジネスでは、「給料が低い」という単純なデメリットというよりも、トレードオフの関係が多いものです。このことを冷静に伝えるという方法が考えられます。その上で、「私は基本給が高いよりも、教育に予算をつぎ込んでくれる会社のほうがいいので、御社にします」と考える、またはそうではない、と候補者が判断すれば良いのです。

トレードオフでない、純粋な課題に関しては、「会社側も、それを課題として認識しています」「それに対し、今後このような対策をとる計画です」と伝え、安心させる必要があるでしょう。あるいは、「その課題を解決するため、一緒に頑張っていきませんか」とフォローするのもいいかもしれません。 

曖昧な不安への対処 

伊達:

不安について、安藤さんと別の角度からお話します。候補者の中で、明確にこれが不安と言えるものはないが、何か不安に思う、決めきれない、ということがあると思います。そこにおける不安の背後には「不確実性」と呼ばれるものが横たわっています。

候補者にとっての不確実性とは、「入社後の情報が足りていないこと」です。入社後に、自分がどうなるのかに関する情報が足りず、自分がここに入社してうまくいくのかが不安なのです。

この曖昧な不安を緩和するには、入社後のイメージを高められる情報を提供することしかありません。しかも、そうした情報は、一般的な採用活動の中で得られにくいものです。より意識的に社内の様々な人と会ってもらったり、職場見学してもらったりする必要があります。

最近では、「社内コミュニケーションツールを見学してもらう」会社もあるようです。確かに、コミュニケーションの様子を見たらどのように仕事をしているか分かりますし、カルチャーも分かります。

安藤:

人材研究所でも、新卒学生を正社員採用する際、必ずインターンシップに入ってもらっています。3カ月か4カ月の期間で、実際の業務やっていただいているのです。

我々もそこで見極めていますし、本人も、現場の人たちと話しながら、実際のツールを使いながら仕事を進める中で、人材研究所が自分に合っているかどうかを考える。それ自体がオンボーディングになっていますね。 

採用後を見越した採用が重要

伊達:

「オンボーディング施策との連動も意識した面接が重要なのでしょうか」という質問をいただいていました。まさに今のお話のとおりですね。採用後の適応を見越した面接にしておくことは重要です。

何のためにフォローするのか。それは、会社と候補者が、お互いにとって適切な判断をするためです。そのために、必要な情報を出し合っていくことが、フォローにおいてやるべきことでしょう。 

安藤:

オンボーディングを見越した採用をするためには、採用も、その後のことも意識しなければなりません。採用担当者が、入社後の育成や人事評価も兼務されている会社もあります。これは合理的で、兼務であれば、採用後を意識せざるを得ません。

一方で、兼務ではない会社もあります。採用担当者は、採用入社式を区切りとして、そこから先は、現場や育成担当に任せる形になっている。逆に、育成担当者は、特に採用に関心がないとなってしまうのは問題です。

それではお時間となりましたので、以上で終了とさせていただきます。今回のシリーズ「採用面接の科学」は、今回で終了となりますが、また伊達さんと対談できる機会があればありがたいです。

伊達:

こちらこそよろしくお願いします。本日はありがとうございました。

 

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