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コラム

ニューノーマルの働き方・学び方を考える:越境学習×ワーケーションの視点から(セミナーレポート)

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働き方改革やワークライフバランスの推進、テレワークの導入など、働き方・学び方をめぐる変化が近年相次いでいます。そのなかでも、「越境学習(ホームとアウェーを往還することによる学び)」、「ワーケーション(観光地やリゾート地などで働くこと)」に注目が集まっています。

ビジネスリサーチラボでは2022423日、「ニューノーマルの働き方・学び方を考える:越境学習×ワーケーションの視点から」を開催しました。本セミナーは関西大学社会学部教授 松下慶太氏をお招きし、ビジネスリサーチラボ代表の伊達洋駆と対談形式で開催しました。越境学習とワーケーションの観点から、今後の働き方や学び方について語られています。

本レポートはセミナーの内容を基に編集・再構成したものです。

登壇者松下 慶太 氏 関西大学社会学部教授
京都大学文学研究科、フィンランド・タンペレ大学ハイパーメディア研究所研究員、ベルリン工科大学訪問研究員、実践女子大学人間社会学部などを経て現職。専門はメディア・コミュニケーション、コミュニケーション・デザイン。研究テーマは、(1)コワーキング・スペースやテレワークなど働く場所・働き方、(2)ソーシャル・メディアを中心とした若者のメディア・コミュニケーション、(3)若者のキャリア・学習など。著書に『ワーケーション企画入門 選ばれる地域になるための受け入れノウハウ』(学芸出版社、2022)、『ワークスタイル・アフターコロナ』(イースト・プレス、2021)、『モバイルメディア時代の働き方』(勁草書房、2019)、『キャリア形成支援の方法論と実践』(東北大学出版会、2017 共編著)など。

伊達 洋駆 株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。著書に『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)や『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)などがある。


イントロダクション

伊達:

私は普段スーツを着てセミナーに登壇するのですが、本日はリラックスした格好です。昨日から静岡県浜松市の三ケ日に来ており、作家の沢渡あまねさんが構えていらっしゃる、三ケ日ワーケーションオフィスから配信しています。

沢渡:

本日は伊達さんにワーケーション環境を楽しんでいただきながら、隣で勉強させていただきます。なお、拙著『新時代を生き抜く越境思考』の中でもワーケーションについて触れています。

伊達:

本日は「ワーケーション」と「越境学習」がテーマです。まず、松下先生が執筆された『ワーケーション企画入門』についてご紹介いただけますか。

松下:

コロナ禍以前から日本でもワーケーションは広がりつつありましたが、コロナ以後はさらに注目が集まりました。特に、企業や地域が主体となって進める日本型ワーケーションは、世界ではどちらかというとデジタルノマドなどの個人が自分のワークスタイル、ライフスタイルとして実践しているのと比較して、興味深いものです。これから地域の在り方や働き方を考える際のテーマとしてワーケーションは面白いテーマだと思ったことが、本書を執筆するきっかけでした。

『ワーケーション企画入門』はワーケーションに関する様々な理論や事例を取りあげており、ワーケーションをこれからやろうとしている実践者の方や、地域・企業の方々と一緒に考えるための本です。

伊達:

ありがとうございます。もう一冊ご紹介するのが、私と法政大学大学院の石山先生の共著『越境学習入門』です。2020年度に経済産業省主導で、越境学習の効果指標を作成するプロジェクトがありました。その成果物を書籍としてまとめたのが本書です。

本書では越境学習を巡る理論、プロジェクトで明らかになった点、実際の越境学習者の事例を豊富に記載しております。越境学習を学びたい方が、まず手に取るのに適した本として執筆しました。

ワーケーションとは何か

伊達:

松下先生から、ワーケーションとは何か、日本型ワーケーションの特徴についてお話しいただけますか。

松下:

ワーケーションは明確な定義がなされているわけではありません。私は、仕事と休暇を重ねることで可能になったり、それにより価値を生み出したりするワークスタイルやライフスタイルと定義しています。

欧米型のワーケーションと日本型の違いについて。欧米型は、ワーカーの自発的な活動です。一方、日本型の中心には、企業や地域が推進している社内制度として、それをどう活用するかという論点があります。

誤解されないように言っておくと、欧米型と日本型のどちらが良い・悪いということではありません。ただ、世界的な観光の文脈でスロー・トラベルがうたわれている中、日本型ワーケーションを作って、アピールするチャンスでもあります。現在は日本国内でどのようにワーケーションを行うかの議論が中心ですが、中長期的にはデジタルノマドを含めて海外の方々が日本でワーケーションすることも想定した戦略を考えるべきです。

日本でワーケーションに注目が高まったのは、2020年の夏、コロナ禍におけるGoToトラベルの活用方法としてワーケーションがあるとされたことがきっかけです。この時点でのワーケーションは、落ち込む観光産業の穴埋めを目的としたものです。よって観光庁が精力的に取り組んでいました。

ただ今後はアップデートする必要もあります。観光の穴埋めではなく、地域をどう作るか。企業視点では、人や自分たちのビジネス、働き方改革をどうするかという文脈でも捉える必要があるでしょう。 

特に、地域を来訪する人を「消費する人」「お金を落とす人」としてだけでなく、パートナーとしてとらえることが重要です。また、刺激や転機、ライフスタイル、越境学習としてワーケーションがどのようにデザインできるか、も検討する必要があります。

ワーケーションの価値は「共創」にある 

ワーケーションの価値は、人材と地域を共につくることです(図1)。自律型人材が重要といわれていますが、その人材をどのように企業として確保・育成するか。また、地域や地球の面でも、カーボンニュートラルなどを含め無視できない問題が出ています。新卒採用においても、このような問題を無視した企業では採用が難しいかもしれません。

これらの課題について、地域と都市部が取り組む。あるいは都市部人材と地域の人材と一緒に企業価値をつくっていく。この共創においてワーケーションは有効なアプローチになるはずです。

図 1:ワーケーションの価値

ワーケーション/ワーケーターの種類

ワーケーションには様々なパターンがあります(図2)。一つ目は、自分が都市部のオフィスでやっていた仕事を地域に持ち込むものです。ここでは、生産性の向上が論点の一つになっています。二つ目は、自分が地域に行き、そこでの社会活動やビジネスに取り組むものです。副業的な面もあります。

実現性を考えると、地域の活動に対して自分ができることで取り組むワーケーションが良いでしょう。一方で、数は少ないですが、自分と地域が新しいことにチャレンジするというワーケーションもあり得ます。 

図 2:ワーケーションの種類

近年では居住地の限定を撤廃したり、週休3日を始めたりする企業も増えています。そのなかでワーケーションを行う人、つまり、ワーケーターには三つほどタイプがあります(図3)。

一つ目は都市型ワーケーターで、基本的には都市在住で、リフレッシュ込みでたまに地域に行く方。二つ目は移動型ワーケーター。アドレスホッパーや多拠点居住者など、ホーム・アウェー関係なく飛び回っている方。三つ目は地域型ワーケーター。基本的には地域在住で、対面会議が必要なときに都市部に行く方です。 

図 3:ワーケーターの種類

個人の働きたいスタイルが尊重されるべき

ここで申し上げたいのは、地域がワーケーションを支援する場合、移住が一つのKPIになり地域に住んでもらうことが期待されがちですが、本当にそれでいいのかという点です。

ワーケーション政策を考える際、また企業でワーケーション制度を考える際に重要なのは、前述のどのスタイルも尊重することです。そして、それぞれのスタイルを地域のコミュニティや会社に当てはめていくことが目指されるべきでしょう。

最後に、就活中の学生と接していると、二言目には「働きたくない」と言います。ですがよく聞くと、「働きたいように働けないから」働きたくないのです。満員電車や望まない転勤、ハラスメントなどが嫌なだけであって、本来は働きたいと思っています。

私たちが目指すべきは、働きたいように働く社会です。日本人全員がワーケーションすれば幸せになれるわけではありませんが、ワーケーション的な働き方を望む人がいることも事実です。そのやり方を考えていくことが、人口減少社会において重要です。

ワーケーションは重ね合わせ、越境学習は移動

ワーケーションと越境学習の関係性を考えたとき、越境はここではないどこかに行き帰ってくる「移動」のメタファー。一方、ワーケーションは「重ね合わせ」のメタファーであると感じました。

たとえば「ワーケーションだとなかなか楽しめません」「仕事ができません」というご相談を受けます。楽しめないのであればワーケーションではなくバケーションしたほうが良いですし、仕事できないのであればワークしたほうが良いと思います。ワーケーションは重ね合わせることで価値が出る点については、後ほど伊達さんともディスカッションしたいところです。

越境学習とは

伊達:

越境学習とは、ホームとアウェーを往復することによる学びを指します。ホームやアウェイというのは心理的なものです。ホームは自分が気を遣わないで振る舞うことができる場所です。一方アウェーは、緊張したり勝手が分からなかったりする場所です。

越境学習は、越境前・越境中・越境後の3段階に分けられます。越境前はアウェーに行く前、越境中はアウェーに行ったとき、越境後はホームに帰ってきた後です。

越境学習で起こる2回の葛藤

『越境学習入門』における調査で明らかになった点として、越境中と越境後の2回、葛藤が待ち構えていることが挙げられます。

まず越境中、アウェーに行ったとき。普段は大企業に勤めている方が、ベンチャーやNPOに出向するとします。すると、普段はレポートラインを守るよう言われていた方が、レポートラインに関係なく社長にいきなり話をしに行かなければならない。そうしないと物事が進まない環境に飛び込むことになると、葛藤を覚えます。

興味深いのは、越境後にホームに戻ってきてからも葛藤が起きることです。越境先、アウェーで悪戦苦闘するうちに様々なことを学びます。よりよい仕事を進め方や、ビジョンやミッションを大事にし、全力で仕事に取り組む姿勢などを学ぶのです。

その後、自分のホームに帰ってきて、大企業のしっかりした仕組みの中で働いている人たちを見ると、物足りなさや違和感が出てきてしまいます。このような葛藤が起こることが越境学習の特徴です。

ただ、この2回の苦しみが、次の成長につながることが越境学習の醍醐味です。越境学習で起こることとして、まずアウェーに行ってもホームに戻っても葛藤があります。その中でもがき、色々と試してみる中で気づきを得るのです。

アウェーに行ったとき、今までのホームのやり方で行動してうまくいかないのは、アウェーの場所でのルールや価値観が、ホームのものと異なっているもしれない。そのように、所属組織と越境先の価値観やルールを、俯瞰して見ることができるようになります。

その結果、周囲の協力を引き出したり、成果を導き出したりすることができるようになります。アウェーに行ったときだけでなく、ホームに戻ったときも同じメカニズムで起こっているのは興味深いところです。

越境学習者に周囲はどう関わるべきか

越境学習者は苦労しながら学んでいる状況にあります。そういう方々に周囲はどう関わるべきでしょうか。本書の中では「関心は持ちつつも、関与は慎重に行いましょう」と書いています。

関心とは、話を聞いたり観察したりすることで、相手のことを理解する・知ることです。ただし、行動を計画させたりとか、それを報告させたりといった関与はし過ぎないことが重要です。それをすると、越境学習者の自由や自律性が奪われてしまうからです。

越境学習とワーケーションの共通点

続いて、ワーケーションと越境学習の観点から、これからの働き方や学び方について松下先生と考えていきます。

まず、越境学習とワーケーションの共通点・相違点から迫ります。松下先生から、越境学習は移動のメタファーで、ワーケーションは重ね合わせのメタファーというお話がありました。確かにその通りですが、他方で、越境学習者の中でも重ね合わせが起こっているのではと感じました。むしろ、重ね合わせが起こるから葛藤が起きるのかもしれません。

たとえばアウェーのやり方に慣れなければならない、一方でホームの自分もいる。それが重なり合い葛藤が起こるため、悩んでしまうのではないでしょうか。実は重ね合わせが共通点になっているのでは、というのが一つ目の論点です。

二つ目の論点として、『ワーケーション企画入門』の中で興味深かったのが、ワークとバケーションを重ね合わせたからこそできることについて考えることが、ワーケーションにとって重要であるとのご指摘です。越境学習も同じで、ホームとアウェーどちらかに合わせることは越境学習の意味を無くしてしまいます。重ね合わせて困ってしまうものの、その中で新しいことを生み出すのが重要と感じました。

「楽しさ」がワーケーション奏功の鍵

松下:

伊達さんのお話を聞きながら、越境学習における重ね合わせは「葛藤」につながると思いました。ワーケーションにおいても、地域で活動したり地域の方々と一緒にビジネスを行ったりする中で、思わず「東京では」「ビジネスでは」などと言ってしまうなど。そのような葛藤を経ながら学習する部分があると思います。

一方で、重ね合わせの「快楽」があるとも考えています。たとえばプールに入って涼みながら会議する、花粉症の時期に花粉がない地域に行って仕事をするなど。今まではビジネスマナー的には不謹慎といわれていたり、症状を抑えてオフィスに来ることが社会人の義務と言われていたりするものです。ただ、そこにかかるコストやリスクは今まで個人が負っていました。

先ほど伊達さんがおっしゃったような、苦労を乗り越える、葛藤の中で学びがあり成長できるという葛藤型モデルと同時に、それが排除してきた部分を考えないと厳しい。そのため、私はワーケーションを快楽モデルで考えています。 

日本人は嫉妬深い、誰かが楽をしていると許せない、といわれることもありますが、その人が快楽を得ることで生産性が上がるのであれば、その面を強調するワーケーションがあってもいいのではないでしょうか。

伊達:

松下先生のご著書の中で興味深かったのは、ワーケーションによる生産性の変化も重要だが、それだけを考えるのが正解なのか。生産性が上がらなくても同等であれば、本人が楽しかったら良いのでは、という指摘です。

松下:

日本では、余暇文化・バケーション文化が根付いていないと思います。たとえば企業で働いていて、三ケ日でワーケーションしてきました。すると、帰るときに、迷惑をかけたと思い、部署にお土産を買って帰らなければいけないと思うでしょう。お土産を配るときにも「休んですみません」という態度で、楽しかったことを前面には出さないと思います。

ワーケーションに行く前に「休ませてもらってすみません」と言うのも一つのマナーだと思いますが、「パワーアップして帰ってくるから楽しみにしていてください」というワーケーションの取り方はなかなか遠慮してしまいます。そのような雰囲気や、上長がワーケーションを承認する際に「本当に効果はあるの?」と言ってしまうことが、企業でワーケーション制度がうまく機能しない根深い原因です。そこに向き合うことがこれからの働き方を考える上で非常に重要であり、その突破口としてワーケーションを考えていきたいです。

企業でワーケーションを取り入れようとする際、不平等が出る、工場の人はどうする、といった話もあります。たしかに今この瞬間のリモートワークやワーケーションについての議論は、これまでの働き方で働いていた人が変わることがベースになっています。

ただ、これから会社に入る人やビジネスを起こす人は、何がしたいかでなくどう働きたいかの優先順位が高まっています。今後は、本人の考え方に合う働き方をしている会社に入りたいと思うでしょう。企業側も、「うちはこのような働き方をやっています」と発信したほうが良いと思います。

伊達:

望む働き方はライフステージによっても変化するでしょうし、それに応じて選べるといいですね。

松下:

親子ワーケーションなどもありますが、子どもがいるから行ける・行けない、子どもにこのような経験してほしいからワーケーションしたいという考え方もありだと思います。

伊達:

働き方と学び方を考えたとき、労働は苦しいものと捉えてしまうと、越境学習もワーケーションも含めた新たな動向は「修行」のように感じてしまいます。そのような苦しみを前提にしたモデルではなく、楽しみを前提にしたモデルに転換できるより良いと感じました。

働くことに「楽しさ」を導入する

そう考えたとき、これからのビジネスパーソンが考えると良いのは、「自分はどのようなときが楽しいのか」ということです。「自分が何をやりたいか」「何を目指すべきか」などとは異なり、「自分にとって何が心地良いか」「何が楽しいか」ということはあまり重視されてきませんでした。これはエンジョイメント、プレイフルと表現すればよいでしょうか。

松下: 

プレイフルは良い言葉だと思います。プレイフルには、「楽しい」という意味と、プレイボタンのように「起動させる」という意味もあります。自分がどうなったら起動するかを考えることが、実はプレイフルである。楽器を弾く、劇を演じるという意味も含まれています。ワーケーションではプレイがキーワードの一つです。

苦労モデルは、今まで苦労の先に楽しみがあるから、我慢してこの苦労をすべきという前提がありました。でも、その先が本当にあるのか、疑問が今突き付けられています。楽しみと苦労を同じところに置く、むしろ楽しみを少し手前に置くことで、楽しんでいたらその苦労が飛び越えられたというモデルをつくれた方が良いでしょう。

伊達:

ワーケーションや越境学習というと難しいイメージもあるかと思いますが、自分が楽しいと思えることを、働く、学ぶという文脈でも言えるようにすることが、最初の一歩かもしれません。

もちろん、苦しみの後に楽しみがある働き方も一つの働き方です。個々人がなにを快適と思うか、心地よいと思うのかどうかで判断していけばいいのです。企業としてはそれを求職者が選べるように可視化したり、労働市場に知らせたり必要はありますね。

松下:

新卒採用などで、うちの会社ではこんなビジネスをしています、こんな部門がありますといった情報提供は今までもされてきましたが、ワークスタイルの提供はあまりないと思います。福利厚生の情報開示ぐらいですよね。

その背景には、あまりにも今までの働き方が自明化されており、それに従うものとされてきたことがあると考えられます。これからの採用を考える中で、各々の持つスタイルをどう提供できるか、認めていけるかについての情報を提示することは重要です。

伊達:

例えば、企業側が求職者に出すと良い情報として、「自分たちの会社がどのような楽しさを提供できるか」が挙げられるでしょう。ミッションや労働条件、典型的な一日のスケジュールは出している。ただ、何を楽しいと思う会社か、どのような楽しさを提供できる会社かはあまり強調されていません。

「苦しさ」と「楽しさ」を重ね合わせる

沢渡:

コメントしてもよろしいですか。お二人のお話から二つのことを感じました。一つは、松下先生がおっしゃった重なり合いという発想への共感です。そこから、苦しみと楽しみを重なり合わせて解消しても良いのではと考えました。

私はダムが好きで、ダム際で仕事することがあります。仕事をしていると、苛立つメールが来ることもありますよね。これは苦しみです。このメールを、満員電車でぎすぎすした気持ちの中で出社して受け取ったとしたら、そこには苛立ちしかありません。

ただ大好きなダム際だと、苛立つメールが来てもなぜか許せるのです。大変な仕事もやるが、環境は自分の好きなものを選ばせてほしい、ということがあってもいいのではないでしょうか。これは、苦しみと楽しみを重ね合わせた解消だと思うのです。

松下:

アンガーマネジメントをアーキテクチャーで行う。自分の中で処理するのではなく、好きな所にいることで解決できる自分をつくり出すということですよね。 

沢渡:

もう一つ、プレイフルという言葉に感激しました。プレイフルがある世の中をつくるためには、根底にリスペクトフル、相手が楽しい環境である、自分が生産性やモチベーションが上がる環境を許すことが必要と思います。そのリスペクトフルな世の中をつくっていくにはどうしたらいいかを考え始めました。 

伊達:

沢渡さんはダムがお好きですが、世の中の全員がダム好きというわけではありませんし、沢渡さん以上に好きな方もいらっしゃるかもしれません。そのように、一人ひとり異なる楽しさの源泉を理解することが、リスペクトフルにつながる部分ではないかと感じました。

松下:

関連して、私が最近考えているのは、課題を「解消する」という述語以外で考えたほうがいいということです(図4)。たとえば会議が面倒だから無くそうといっても、沢渡さんのリスペクトフルのお話でいくと、それを残したい人がいることも事実です。そこで、会議の面倒さを無くすのではなく、小さくする、ずらすなどといった発想が良いのではないでしょうか。

ワーケーションも、それをしたら全ての課題が解消するわけではありません。越境学習の気付きや冒険の意味ともつながりますが、解決や解消という述語以外で考えることが重要ですし、リスペクトフルにもつながると感じました。

図 4:「解消する」以外の述語で考える

伊達:

といったところで時間が来てしまいました。以上で本日のイベントは終了いたします。途中で「2回目もやってほしい」とのコメントも頂いていました。次回は沢渡さんも最初から入っていただいて、この三ケ日のワーケーションオフィスから3人でやってもいいかもしれませんね。

ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。

松下:

ありがとうございました。

沢渡:

ありがとうございました。

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