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組織サーベイ実態調査 結果報告会:従業員意識調査をもっと有効なものにするには(セミナーレポート)

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組織サーベイをめぐっては、「社員の回答がなかなか集まらない」「結果に基づく改善がうまくいかない」等、課題感を持つ担当者も多く見られます。こうした課題を解決するため、ビジネスリサーチラボでは、企業で働く人々が「組織サーベイをどう受け止めているのか」を調査しました。本コラムでは、当社代表取締役・伊達洋駆が、世界的にも珍しい組織サーベイの実態調査の結果を解説するとともに、組織サーベイをより有効なものにするために取るべき具体的な対策を、結果に基づいて提案します。

※本コラムは、2022年3月に開催した組織サーベイ実態調査 結果報告会の内容をもとに編集・再構成しています 。

調査の概要

私の経営するビジネスリサーチラボでは、「アカデミックリサーチ」というコンセプトを掲げ、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供しています。今回は、当社で行った組織サーベイの実態調査の結果を紹介します。

実はこれまで、組織サーベイの実態調査なるものは、あまり行われてきませんでした。今回紹介するのは、かなり珍しいタイプの調査の結果です。

実態調査では、日本の就業者、特に正社員を中心に314名の分析可能な回答を得ています。厚労省の労働力調査を参考に、性別と年齢の構成とをおよそ生産年齢人口に合わせた形で回収しています。オンライン調査で、今年の1月に実施しました。

1のパートでは、五つの問いに対して、実態調査の結果を基に一つずつ回答していきます。第2パートでは、いくつかの点に注目し、その結果を掘り下げたいと思います。

5つの実態と結果から得られる示唆

1)本音で回答しているのか

一つ目の問いは、「社員は実際のところ組織サーベイに対して本音で回答しているのか」というものです。組織サーベイを実施したことのある企業の方であれば気になりますよね。

本音で回答してもらえていないと、良質なデータとは言えませんので、できれば本音で回答していてほしいところです。

そもそも本音で回答しているという前提で組織サーベイは行われているはずですが、実際はどうなのか。そのことを知るため、あえてこういう質問を聞いてみました。

質問とその結果は、次の図の通りです。

質問「内容を偽らず、素直に回答している」に対しては、10パーセントが本音で回答しておらず、20パーセント程度がどちらとも言えないという結果です。

本音で回答している人が少ないわけではありませんが、多いわけでもありません。本音の回答をさらに促していく必要があるといえます。詳細な分析結果と共に、のちほど具体的な対策について紹介します。

2)サーベイで会社が良くなると思っているか

二つ目の問いは、「組織サーベイに回答することで、会社が良くなると思っているのか」というものです。回答することで、何か良いことが起きると考えているのかどうかですね。

質問とその結果は、次の図の通りです。

40パーセント程度の方が、「アンケートに回答しても会社が良くなる・良い方向に変わる」とは思っていません。「あまり意味がない」と感じている状態です。それなりに深刻な結果ではないでしょうか。

「調査をすることで会社が良くなりましたよ」という事例を、社内で示していくことが重要になります。

3)回答に際して「忖度」しているか

三つ目の問いは、「組織サーベイに回答するときには、上司や会社に忖度しているのか」というものです。「この質問に答えたらどうなるのかな」と色々と考えながら回答されると、きちんとしたデータが得られなくなります。

質問とその結果は、次の図の通りです。

上司や会社に忖度して回答しているのかという点については、質問により回答結果の差もあるようです。ただ、忖度した回答をする方が10%から50%程度いること、これは少なくない割合だと感じています。

一定数の方々が、組織サーベイの回答に当たって、周囲を気にして回答しているのです。なお、忖度した回答への対策については、後ほど詳細な分析結果と共にご紹介します。

4)組織サーベイの結果を社員に伝えているか

四つ目の問いは、「どれほどの企業で組織サーベイの結果を社員に伝えているのか」というものです。回答したのは良いものの、あの組織サーベイの結果はどうなったのか、という不満も耳にします。

50パーセント弱の人が、組織サーベイへ回答したとしても、その分析結果を十分にフィードバックされていません。逆に、きちんとフィードバックされている人は10パーセントを下回っており、かなり少ないといえます。

「せっかく回答したのに、どうなったのだろう」と感じている人が半数ほどいる可能性があり、気にかけるべき割合です。

組織サーベイの分析結果は、あまりフィードバックされていないようです。少なくとも回答者は「されていないと感じている」のです。社員に明確にフィードバックしていく必要があるでしょう。

5)回答時間はどの程度が適切か

五つ目の問いは、「回答時間は何分ぐらいにするのが良いのか」というものです。当社は普段、「10分程度であれば、無理なく回答していただける」とお答えしているのですが、今回エビデンスを取ろうという意図で聞いてみました。

まず、「許容できる調査回答時間」については、13分程度であれば許容できるという結果でした。「適切だと思う調査回答時間」については約8分でした。他方で、回答時に「長いと感じる回答時間」は約16分です。15分を超えてくると、要注意といえるでしょう。

実態の精査:本音と忖度が生まれる理由を解釈する

本音の回答が生まれるメカニズム

ここからは、「本音の回答」と「忖度の回答」の2点について、詳しい分析と共に掘り下げていきます。両者共にデータの「質」に関わる観点です。どんな対策があるかをできる限り考えていきましょう。

まず、「本音の回答」を促すには、何が大事になるのかを分析し、その結果を基に対策を検討します。

先ほどと同じデータを使って、本音の回答と関連する要因を探索しました(なお、詳細な分析手続きは、当社よりレポートを別途作成予定です。そちらを参照ください)。

まず、クラスター分析等の手法を用いて、本音の回答と関連する要因を特定しました。続いて、要因同士の関係性を、構造方程式モデリングという分析手法でモデル化しました。その結果は、以下の図のようになっています。

1つずつ見ていくと複雑になるため、全体を俯瞰して、調査実施者にとって必要な点について、主に2つの視点から説明します。

一つ目が、「サーベイの満足感」です。サーベイに満足していないと、本音で答えようとは思いません。二つ目が、「回答に対する意欲」です。回答に対して「面倒くさい」「どうでもいい」と思っていると、本音で答えません。

この2つの視点、サーベイの満足感や、回答に対する意欲を高めるにはどうしたらいいのでしょうか。先ほどのモデルから、いくつかの要因が大事だということが見えてきました。

第一に、会社が個々人を尊重する・敬意を払うという「会社からの支援」。第二に、納得できる評価手続きになっているという「評価プロセスの公正感」。このように、会社の姿勢や制度が影響していることがわかりました。

第三に、「会社への愛着」。愛着の持てる会社にしないと、回答の意欲やサーベイの満足感はなかなか高まりません。第四に、「内発的な回答動機」といって、会社を良くしたいと思って回答してもらわないと、「回答意欲」も「サーベイの満足感」も高まらないという結果になりました。

本音の回答を得るには地道な改善が重要

これらの結果を見ると、本音の回答を得るためには、社員に対して真摯に接する「良い会社」を作る必要がありそうです。小手先のテクニックでどうにかできる問題ではないといえます。 

社員が組織サーベイに本音で回答するという行為は、ある種の「返報性」が機能しているのかもしれません。自分たちのことを大事にしてくれる会社が実施する組織サーベイであれば、きちんと本音で回答しよう、ということです。

組織サーベイを実施し、自分たちの会社を少しずつでも良い状態に近づけていく。良い状態に近づけていければ、少しずつ本音の回答を増やしていけます。この積み重ねが大事です。

忖度した回答が生まれるメカニズム

続いて、「忖度した回答」を減らす方法について考えます。本音の回答とは異なり、こちらは、組織サーベイの実施の仕方によって予防できるかもしれないという結果が見えてきました。

本音の回答に関わる要因を特定した際と同様の手続きを用いて、忖度した回答に関わる要因についても分析を実施しました。その結果が以下の図です。

忖度した回答を促す要因が、大きく分けて三つあることがわかります。一つ目が「評価への活用懸念」。社員が組織サーベイに答えることによって、答えた回答が自分の評価や異動に使われるかもしれないという心配です。

二つ目が「外発的な回答動機」。会社を良くするために回答するのではなくて、会社の指示だから回答するといった動機です。三つ目が「回答の面倒さ」です。組織サーベイへの回答が煩わしいと思う人は、さらに煩わしいことに巻き込まれたくないので、忖度した回答をする傾向があるようです。

では、忖度した回答を防ぐためにはどうすればいいのでしょうか。モデルをより詳しく見ていき、上記の要因に影響をもたらす別の要因を挙げていきます。

まず、「回答者特定の懸念」が挙げられます。これは、自分の回答がチェックされているのではないかという心配です。例えば、人事担当者に回答をチェックされていると社員が思うと、先ほどの「評価への活用懸念」や「外発的な回答動機」の上昇に併せて、「面倒さ」も生じます。

次に、「回答の強制」と「調査結果の未活用」。回答しないと注意される環境や、サーベイが改善に活かされていると感じられない状況も、先ほどのような点につながるようです。

さらに、調査結果が社内で共有されていないという「調査結果の非公開」も、回答しても意味がないと考える「調査への無力感」を高めて、回答の煩わしさにつながります。

また、同じような質問が多いと感じさせるサーベイの設計も、先ほどのように「評価への活用の懸念」を生み、外発的な回答動機になる、回答が面倒になるといった傾向を高めます。

要するに、調査結果の活用先が社員にとってよく分からないのに、回答を強制されると、面倒だなあと思いつつ回答します。そのような状況では、忖度した回答になりやすいのです。

忖度の回答はサーベイの設計によって予防する

上記のメカニズムを踏まえ、忖度した回答を減らすためにどんな対策があるのかを考えていきます。

一つ目は、回答を強制しないこと。無理に回収率を高めようとすると、回答の強制になり、忖度した回答が増えます。組織サーベイ実施時は、できる限り回収率を高めたいものです。しかし、強制すれば回答数は増えても、回答の質は下がることがわかります。

二つ目に、組織サーベイに先立って、調査結果を何に用いるのかを説明しましょう。「こういうことをしたいので、組織サーベイを実施します」と、回答者に活用先を説明するのです。

逆に、「こういうことには用いない」と説明するのも有効です。例えば、「今回の組織サーベイの結果は、異動や評価には使いません」などと明言します。

忖度した回答を減らす対策を考えると、実は組織サーベイの設計時が大切であることが分かります。事前準備として、まず、組織サーベイを通じて解決したい課題を明らかにする必要があります。

また、調査を通じた対策も検討しておきましょう。「こういう原因が検証されたら、こういう対策を打とう」と考えていないと、実際に結果を活用できませんし、回答者への活用先の説明も難しくなります。

逆に、忖度した回答が増えてしまうのは、組織サーベイの目的を説明せず、「とりあえずやります。回答をしてください」とアナウンスをするだけの方法です。さらに、「回答してない人は回答してください」などとリマインダーを何度もすると、忖度した回答が増えるでしょう。

事後的な説明も求められます。「調査結果が出ました。結果を踏まえて、今回こういう施策を実施します」と、組織サーベイの結果と施策を紐づけて説明します。

ただ、「きちんと説明したい」という気持ちで、膨大な調査報告書を社員に示しても、よほど関心がない限り読み流されてしまいます。そこで、要点を絞って伝えましょう。

QA 

Q1:忖度回答を減らすために組織の心理的安全性を事前に調べてはどうか

組織サーベイのプレ調査は、質問項目の出来を確かめる上で大事です。例えば、調査実施者に近い社員へ事前に答えてもらい、感想を受け取ると、質問項目を精査できるからです。

ただ、プレ調査において心理的安全性を測定するのが妥当かは、悩ましいところです。心理的安全性を測定しようにも、そもそも本音で答えてくれない可能性があるからです。

Q2:フィードバックを行う適任者を社内でどう選抜すればよいか

分析結果の裏側にある現実を語ることができる人がフィードバックを行うメンバーの中にいると良いですね。例えば、「上司からのサポートがエンゲージメントを促すようです」と、結果だけを伝えるのでは無味乾燥です。

しかし、「〇〇という職場の○○さんが、上司からこのようなサポートを受けて、このように生き生きと働いている」と、エピソードを交えて具体的に語ることができると、フィードバックを受ける人の納得度がぐっと高まります。

Q3:サーベイの結果はどの程度開示するべきか

会社によっても考え方が違うかもしれません。一般には、結果を受け取って対策を実行する人が誰なのかを検討するのが効果的です。

例えば、人事制度を変えるために組織サーベイで現状を把握するのであれば、詳細な結果は人事が見れば十分です。社員には結果の概要を共有すればよいでしょう。他方で、職場の改善を目的に組織サーベイを実施する際には、マネジャーに詳細な結果までしっかりと伝えるべきでしょう。

Q4:本音で回答してもらうための愛着を高めるにはどのような工夫が必要か

会社に対する愛着を学術的には「組織コミットメント」と呼びます。組織コミットメントを高める要因はいくつかあります。

1つは、身近な人に対する愛着を高めることです。例えば、お互いに助け合う職場を作る、お互いを信じて仕事を任せる、敬意を払うといった職場環境を作ることから始めると、組織コミットメントは高まるでしょう。 

Q5:「個人が特定される懸念」から回答者をどう安心させるか

何に活用しないのかを明確にして、回答者に伝えましょう。これをとにかく徹底する必要があります。加えて、属性を細かく設定した集計を避けるのも大事です。「○○部署・××課・女性20代」では「あの人かも」と見当がついてしまいます。

Q6:スコアの変化を追いたいが仮説に応じて質問項目を変える必要があるか

組織サーベイでは、固定するべき質問と固定しなくても良い質問があります。固定するべき質問とは、例えば、「成果指標」です。自分たちの目指すべき人や組織の状態に関する質問は固定したほうが良いでしょう。

対策の参考とした「影響指標」も固定しましょう。それを高めるための対策を取った後、その要因の数値が上がったのかを確認しなければならないからです。

一方で、「あまり重要でない」と分かった影響指標や、既に重要性を確認した影響指標、目標を達成した成果指標については、次回は測定する必要はありません。


講師

伊達洋駆 株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。近著に『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)や『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)など。

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