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コラム

「構造化面接」の科学:優秀な人材を見極めるための理論と実践(セミナーレポート)

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Google社など大手有名企業が取り入れている「構造化面接」。構造化面接とは、質問項目や評価方法を事前に設計することです。学術研究では、面接を構造化することで、面接での見極めの精度が高くなること、また、新型コロナウイルス感染症の影響で導入が進むオンライン面接では、面接を構造化することで惹きつけにも効果があることが分かっています。

ビジネスリサーチラボは、2021年7月29日に「『構造化面接』の科学:優柔な人材を見極めるための理論と実践」を、株式会社インタツアー代表取締役社長(旧:株式会社学生就業支援センター 代表取締役)作馬誠大氏をお招きし、開催しました。本セミナーでは、構造化面接に関する研究知見と事例を紹介し、面接の構造化の手順や注意点等について解説しています。本レポートはセミナーの内容を基に編集・再構成したものです。

登壇者

作馬誠大氏 株式会社インタツアー代表取締役社長(旧:株式会社学生就業支援センター 代表取締役)
学生の日本最大級の企業インタビュープラットフォーム「インタツアー」を展開。学生のより本質的な就活とOne to Oneの共感を採用ブランディングにもたらす支援を行っている。
 

 

伊達洋駆 株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。近著に『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)や『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)など。

 


構造化面接の有効性

伊達: 

構造化面接とは、「採用面接における質問項目と評価方法をあらかじめ設計すること」を指します。質問項目で何を聞くか、どう評価するかを、その場の雰囲気で決めるのではなく、あらかじめ設計する。これが構造化面接です。

構造化面接は従来から、見極め、つまり候補者の能力や性格などを評価する上で有効であることが、研究の中でも何度も検証されています。一方で、多くの企業が構造化面接を取り入れているわけではありません。しかし、今になって構造化面接の重要性が高まっています。

なぜ、こうしたことが起きているのかに答える研究をご紹介します。「惹きつけ」に関する研究です。惹きつけとは、候補者の志望度を向上させることです。惹きつけについて、構造化された面接と、構造化されていない面接を比較すると、興味深い結果が出ています(図1)。

まず、対面での面接の場合、構造化すると確かに見極めはできますが、惹きつけがやや困難となります。つまり、志望度が高めにくくなる。そのため、恐らく今まで普及しにくかったのではないかと推測されます。

それに対してオンラインでは、構造化すると、見極めも惹きつけもできます。オンライン面接を行うのであれば、構造化が有効な手段であると言えます。

1:リアル・オンライン面接における、構造化の効果

 

なぜ、オンライン面接で構造化すると、志望度が高まるのでしょうか。オンラインは構造化していない状態だと、会話のキャッチボールが難しくなります。そのため、候補者にとっては、自分の能力がしっかり発揮できたという感覚が得られず、企業に対してポジティブな気持ちを持ちにくくなります。

他方で、面接が構造化されていると、候補者側も話がしやすくなります。候補者の能力発揮感が得られやすくなり、企業に対して好意的な気持ちを抱きやすくなる。このように、オンライン面接が増加している昨今だからこそ、構造化の重要性が増しています。

構造化のステップ:①人材要件の策定

具体的な構造化の進め方です。面接の構造化は、三つのステップで進めます。一つ目が「人材要件の策定」、二つ目が「質問項目の開発」、三つ目が「評価方法の作成」です。

まず、一つ目の「人材要件の策定」について。人材要件とは、企業がどのような人材を求めているのかという条件、自社が求める人材に備わっている特徴を指します。構造化面接を行うか否かは別にしても、採用を行う前提として、人材要件は定めるべきです。ただ、明確に定められていない企業も少なくないのが現状です。

人材要件の策定の仕方には、二つの方法があります。一つは「ハイパフォーマー分析」で、高いパフォーマンスを発揮している人の特徴を明らかにして、人材要件を作る方法です。もう一つが、自社の事業や業務のプロセスを分析し、そこで求められる要件をあぶり出す方法です。

人材要件を作る際、特に気をつけるべきなのは、様々な要件が挙がったとき、「それぞれの要件の定義をしっかり行う」ことです。例えば、コミュニケーション能力という人材要件を定めたとします。「コミュニケーション能力」と一口に言っても、人によって定義が異なる可能性があり、様々な解釈ができます。抽象的な概念ほど、人によって定義が異なるので注意が必要です。

実際、人材要件をしっかり把握している面接官ほど、いい評価を行う、人材要件に合った人を採用することができる、という研究結果もあります。

構造化のステップ:②質問項目の開発

構造化面接を行う前提として、最初のステップは、人材要件の策定でした。二つ目のステップは、「質問項目の作成」です。具体的には、「要因を考える」「ペルソナを作る」という二つの段階で、人材要件から質問項目を作っていきます。

まず、「要因を考える」ということについて。一つ前のステップ「人材要件の策定」で、いくつかの人材要件を挙げました。一つひとつの要件に対して、要件を促す特徴は何かを考えます。「要件に近づくためには、何が必要か」を考えるのです。

2のように、例えば人材要件として、「初対面で仲良くなる力」を挙げたとします。では、そのような力を持っている人にはどのような特徴があるか、ということを考えます。その特徴が、要因に当たります。

2:人材要件と要因の例

 

要因の例としては、一つ目が「外向性が高い」こと。外向性とは、社交的で陽気であることを指します。性格が明るいと、周囲に話しかけます。よって、初対面で仲良くなりやすいのではないか、と想定されます。

二つ目の要因例として、「自己開示できる」というものがあります。自己開示とは、自分の考えていることを伝えることを意味します。自己開示できると親しくなりやすいことは研究でも明らかにされています。

このように、初対面で仲良くなる力を持っている人は、どんな要因を持っているかについて考え、要因を多く挙げてみてください。

人材要件の要因について考える際に、二種類の知識が求められます。一つは「実践知」で、実務や経験の中で獲得した知識のことを指します。例えば、皆さんが普段仕事をする中で、初対面で仲良くなれる人に会った際、その人の特徴を理解していくでしょう。

採用担当者だけで考えても、要因のアイデアが出ない場合もあります。その場合には、現場マネジャーや経営層と、「この要件を持っている人の特徴は何か」についてディスカッションすると、実践知から要因を挙げやすくなります。

もう一つが「研究知」で、学術研究からの知見を指します。前述の例でいえば、「自己開示をすると初対面でも仲良くなりやすい」というのは研究知見です。研究のことを知っている専門家の意見や、専門書を参考にしながら要因を挙げるのも効果的です。実践知と研究知の両方を用いながら要因を挙げると、構造化がうまくいきやすくなります。

続いて、「ペルソナを作る」という段階があります。人材要件の要因を挙げた後、それぞれの要因が高い人物像、つまりペルソナを考えます。

先の例では、「初対面で仲良くなる力」が人材要件で、「外向性が高い」「自己開示できる」が要因でした。「外向性が高い人の具体的な人物像」とはどういうものかを考えます。

例えば、明るい人はどういう人かと考えると、友達が多そうだな、と思いますよね。自己開示できる人ってどんな人かを考えると、自分が困ったことがあるとき、恥ずかしがらずに相談するのでは、といった掘り下げが可能です。

初対面で仲良くなる力を持っている人は、友人が多く、困りごとを恥ずかしがらずに相談する人と考えることができます。このように、初対面で仲良くなる力という抽象的な人材要件から、要因を考えて、さらにその要因ごとにペルソナを考えることで、具体性が増してきました。

ここまでの「要因を考える」「ペルソナを作る」が出来れば、要因とペルソナを基に質問項目を作っていきます。特に参考となるのがペルソナです。例えば、友人が多い、というペルソナを挙げました。そのような人物か否かを見ていきたいわけです。

質問としては、例えば大学生を採用するとすれば、「大学でどのような人と過ごしていますか」と尋ねると良いかもしれません。すると、普段話をしている友達の話を言ってくれるでしょう。このように、ペルソナから質問項目を考えてみるということです。

困りごとを相談する、というペルソナに対しては、例えば「難しいことに直面したとき、誰にどのように相談しますか」と聞いてみる方法が考えられます。すると、自分一人で解決してしまう人なのか、相談する人なのかが分かります。

なお、質問項目の構造化には「程度」があります。採用側が作った質問項目を、そのまま面接官に使ってほしいというような、厳しい構造化もあれば、いくつかの質問候補が記載されたリストを用意し、面接の話の流れを踏まえ、その中から選んでください、というやり方もあります。

最初は、リストの中から選んでもらうやり方をお勧めします。その方が、面接の会話の流れに合わせて質問を選ぶことができるからです。

構造化のステップ:③評価方法の作成

三つ目のステップである、「評価方法を作成する」ですが、ここでは、それぞれの質問に対して、特に、「合格ギリギリのラインの人をイメージする」というやり方で考えると進めやすくなります。

例えば、「困難に直面したら誰にどう相談しますか」という質問があったとします。相談相手という観点で見た時、それに対して、「相談しない」という人は不合格。「家族や親友に相談する」だと、相談はしているものの関係性が強すぎるから少し弱い。「知人や知り合いに相談する」だと、自社でいえばギリギリOKのラインだが、できれば内容に応じて、様々な知人に相談しているとより良い。このように、評価のグラデーションを付けていきます。

相談方法という観点で見た時、例えば「強がって相談しない」のは不合格。「相談するとしても、恥ずかしさがある」のは少し弱い。「自然に弱みを見せることができる」という場合はギリギリOKのライン、などと判断します。

このように、これは不合格というところから、ギリギリOK、これは理想的、とグラデーションを付けながら評価を考えていきます。

各要件を評価する際、3段階ぐらいで評価するのがお勧めです。10段階などになると、78の差が分かりにくくなるため、初めはシンプルにやったほうが良いでしょう。例えばAは文句なしでOKBがギリギリOKCがそれを下回っている、などというようにシンプルに評価します。

とはいえ、それぞれの点数についてイメージがつきにくい場合もあります。その場合、この要件についてAを付けられるのは、社内で言うと○○さん、Bを付けられるのは△△さんです、という具合に、社員で例示するのも一策です。

質問項目と評価方法がある程度出来てきたら、内定者や新人に対して、実際にその質問項目と評価方法を試す機会を作ってください。これをプレテストと呼びます。質問項目を実際に用いてみると、想定していた回答を得られない、全然違う方向性で話が展開する、など様々な気づきがあります。

プレテストが終わった後、協力してくれた内定者や新人に、「実際に回答してみてどうでしたか」と聞くことで、修正の方向性を見いだすことができます。プレテストを行って質問項目や評価方法を修正すると、構造化の精度をより上げていくことができます。

面接事例

作馬:

私からは、面接の構造化の進め方を、実際の企業に導入した事例を基にお伝えします。社員数が500人前後のメーカーで、採用数は5名、良い人がいれば10名ぐらいまで採りたい、という会社でした。

採用体制としては、2名の採用担当者がいらっしゃいます。選考プロセスとしては、採用担当者のお二人が説明会兼1次面接をオンラインで実施、その次の2次面接は役員の方が担当されており、都合が合えば対面、オンラインが良ければオンラインという形でやっています。2次面接を通過すると最終面接となり、社長が対面で行っていました。

面接の構造化を導入する前の課題として、一つは「役員面接の通過率が悪かった」ということが挙げられます。採用担当者は、社長・役員から「とがった人材を採用したい」と言われていました。

採用担当者からすると、「とがった人材とはどういう人か?」と、人物像が不明確で、どう判断すればいいか分からない状態が続いていました。1次面接で採用担当者が良い候補者だと思って役員面接に上げても、役員はこの人ではないと判断し不採用となる、ということが起こっていました。

もう一つは、今まで属人的な評価をしていたため、評価のポイントや軸が毎回ばらばらで、印象で判断している状態でした。1次面接は採用担当者2名で実施していましたが、そのような状態であることが影響し、採否をすり合わせるにも時間がかかっていました。

また、人物の見極め方も不明瞭なので、ひとまず会ってから判断するということで2次面接に上げようとし、説明会兼1次面接も多く開催していたとのこと。結果的に採用期間がかなり長くなってしまっていました。

こうした課題感に対して、1次面接はオンラインであるため、構造化したほうがいいだろう、ということで構造化面接の導入に至りました。

実際に導入するまでのフローが図3です。まず「とがった人材」という抽象度の高い言葉で表現していたものを紐解いていく作業を、役員ヒアリングの中で行いました。どういう場面でどういう力を発揮する人がとがったと言えるのか、などについて、時間をかけてヒアリングしました。その後、改めて採用担当者にヒアリングし、課題感の整理を行っています。

3:面接への構造化導入までの流れ

 

先ほど伊達さんからも、人物要件を考え、要因を洗い出し、質問項目に落とし込む際、知見が必要であるというお話がありました。ヒアリングの結果を基にして、どういう要因で、どういう質問をしていけばいいかについて、伊達さんに研究知見を整理していただきました。

その上で、整理した内容と要件を見極めるための質問項目を落とし込んだ、面接シートの作成を行いました(図4)。ただ、こちらの面接シートに表現された項目だけを見ても、どういう背景を基に出来上がったかが分かりません。

シートの内容や考え方、使い方、あるいはそもそも面接の構造化とは何か、などを含めた説明会を、採用担当者や経営層を対象に実施しました。

その後、使ってみての感想や、実際に1次面接から2次面接に上げるときの要件がしっかり合っているか、評価の付け方や判断のポイントなどを、導入後にフォローしています。

4:面接シートのイメージ

 

面接シートについてご説明します。こちらの会社では、ヒアリングを行った結果、必要な資質として、共感力・共鳴力・創造力・想像力といった要件が浮かび上がってきました。

これらの内容をどう聞けばいいのかについて、それぞれの項目に落とし込んでいます。例えば、共感力がある人とは「他者の話をしっかり聞き、自分なりに理解しようとすることができる力を持っている人」という定義をしています。そして、どういった質問をすればこの能力の有無がわかるのか、評価項目と質問例をまとめています。

採用担当者が点数を5段階で付け、最終的に3点未満なら不合格、3点以上なら合格を検討、といった形で面接シートを使っています。先ほど挙げた4項目に対して、それぞれの項目と評価項目が入っていて、上から順番に聞き、回答から点数を付けていく流れです。

ここで重要なのは、先ほどの4項目について、全てが必要ということではなく、この会社では共感力が能力のベースとして備わっていることが必要である、という重み付けがなされている点です。その上に共鳴力があり、想像力と創造力はそれぞれ突出しているかを確認すればいいことがヒアリングの中で分かりました。

判断の軸として、そもそも共感力が3点を割ったら不合格にする、共鳴力が3点になったら不合格を検討する、想像力と創造力に関しては、その能力が突出しているかを確認する質問項目にしましょう、というシートになっています。

導入してみての効果が5つ挙がっています。一つ目は、「求める人物像が明確になった」。とがった人物像がより明文化され、どういう力を持つ人たちを指すのかが明確になり、シートを使って判断することができるようになりました。

二つ目は「見極め基準が明確になり、精度が上がった」、三つ目は「面接シートを軸に知見が蓄積できるようになった」ことです。評価シートがあることで基準が明確になったほか、評価にずれがあった場合、「このやりとりの中で、こういう会話が出たので、自分はこの点数をつけた」と、軸を合わせていくことができるようになりました。また、それらが知見として蓄積できるようになったため、面接を重ねていくことで精度が上がるようになりました。

四つ目は、先ほど伊達さんの説明でもありました通り、面接でのやりとりが明確になったため、「面接を通して惹きつけができるようになった」ことも効果として挙げられています。

五つ目は「評価が短縮された」ことです。採用活動期間について、21年卒は12月後半から1月に開始し11月ぐらいまでの11カ月間続いていました。説明会兼1次面接は120名で行い、役員面接に通したため、役員のスケジュール調整も大変で、1次面接でしっかりフィルターにかけられていませんでした。役員が面接した後、社長面接に行く割合は、85名中20名であるため、そこまで多くはなかった状態です。

一方、22年卒は面接の構造化を導入し、活動開始時期自体も、12月後半ぐらいから始めましたが、6月末で終了しました。大きいな違いとして、1次面接から2次面接に行く割合が少なくなった点と、役員から社長面接に行く割合がかなり増えた点です。内定出しから承諾まで、全体的な数値として良くなったため、面接の方法を構造化にして良かった、というお話をいただいています。

副次的な効果として、こちらの会社では、面接の構造化の支援だけではなく、母集団形成も私どもが行っておりました。ヒアリング内容や面接シートを共有し、同じような目線で私どもも集団を集めることができたので、紹介する学生のマッチング精度が上がったのです。

面接を構造化した後、例えば面接シートや考え方を、エージェントなどにもご共有いただくと、こういう人たちを送り込めばいい、という点が伝わりやすくなります。そのようなご活用の仕方も考えられます。

その他の効果として、求める人物像があいまいな中で、なんとなく採用サイトや説明会用の資料を作成していましたが、ターゲット、つまりペルソナが明確になったことで、コンセプトをしっかり反映することができたという点も見られました。

Q&A

Q1. 実際の面接担当者に構造化面接の要諦を理解してもらう際のポイントは何でしょうか。

伊達:

どれだけいいものを作ったとしても、理解の共有が進まないと、実際の運用としてはうまくいきません。理解の共有は力を入れるべきところです。

実際に行った工夫の仕方として、一つは、具体的なエピソードや、「○○さん」などの具体的な人物を挙げたりしながらイメージを高めていく、という工夫を行いました。もう一つは、どのようなプロセスで、最終的な面接シートが出来上がっていったのか、というプロセスを説明しました。

作馬:

出来上がったものを見るだけだと、理解の仕方によっては、評価のポイントがずれてしまう可能性も考えられます。今回の事例で良かったのは、説明をする中で、ヒアリング内容を引用して、「現場でこういうことが重要とされており、この要因を能力に展開しています」ということを説明した点です。それによって理解が深まったと思います。

Q2. 各面接で掘り下げるポイントを分けてみることはできるのでしょうか。1次では共感力、共鳴力を重視してチェック。2次では、想像力、創造力を重視してチェックなど、といった形です。

作馬:

できると思います。質問も、面接時間などが限られる中で、より共感力、共鳴力を重視して見ていく面接、あるいは別の要因を重視する面接などを分けて開催することは有効だと思われます。

伊達:

私もできると思いますし、そうすることが重要だと思います。その場合、例えば1次面接ではこれを見る、2次はこれを見る、というように、それぞれの面接で何を見るのかを設計するところから始める必要があります。

それぞれの面接で見る要因をできる限り絞ることも重要です。もうこの面接ではこれしか聞きません、といった形で全体設計を作っていきます。

Q3. オンライン面接で構造化すると惹きつけにも繋がる理由をもう少し詳しく知りたいです。

伊達:

オンラインでは非言語の情報が少なくなるため、会話が成り立ちにくくります。会話がぶつかって、「あ、すみません」となるときがありますよね。それが候補者にとっては、自分がしっかり話せなかった、という不完全燃焼感に繋がります。自分が不完全燃焼だと、企業に対する思いも高まりにくくなってしまうのです。

それに対して構造化すれば、まとまった話をする時間が与えられます。すると、少なくとも会話がぶつかっている時よりは不完全燃焼感を抑えることができます。結果、企業に対する見方も好意的に転じる、というのが理由です。

作馬:

もう一つ、構造化面接の中で惹きつけられる要素としてあると思うのが、面接のフィードバックをしっかり行えたところです。先ほどの事例の会社では、面接の最初に「私どもはこの四つの資質を見ます」ということをお伝えしています。

また、面接が終わった後に、「この能力が良かったです」ということも候補者にお伝えしているので、力が発揮できたという部分と、それに対してフィードバックがもらえる部分も良かったと思われます。

構造化されてないと、どこが良くてどこが良くなかったかをその場でジャッジすることになり、候補者に直接お伝えするのは難しいわけですが、構造化されたことによって、そういったことも可能になりました。

伊達:

作馬さんがおっしゃった、この面接ではこの能力を見極めますというのを、面接に先立って宣言し、それがどうだったのかをフィードバックするという形は、非常に良い採用面接の進め方です。

お互いが色々と隠し合ったまま、何を見極められているのか候補者は分からないし、印象管理しながら上手く伝えないといけない。お互いにアピールし合うことが起こりやすいのは、何を評価するのかがはっきりしていないからです。

それをはっきりさせるため、きちんと宣言し、説明責任を果たすことは良いことです。そういったことが面接の構造化によって促進されていくとすれば、より透明性の高い良い採用にもつながっていくと思います。

どうやって見極めるのか、どうやって惹きつけができるのか、という点は重要です。ただしそれと同時に、透明性のある採用を進めていくことができるのが、面接の構造化の持っている良い点であると、作馬さんのお話を聞きながら改めて感じました。

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