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テレワーク時代のエンゲージメント:最新研究にもとづく処方箋を徹底解説(セミナーレポート)

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エンゲージメントという言葉は、HR業界で定着しています。新型コロナウイルス感染症の拡大を受けてテレワークが導入される中でも、エンゲージメントへの注目は継続しています。その証拠に、今年11月のHRカンファレンスで行われた様々なセッションのタイトルと説明文にエンゲージメントが含まれるものは20弱もありました。本コラムでは、テレワークとエンゲージメントに関して下記の4点について解説します。

  1. エンゲージメントとは何か
  2. 働く人と組織の関係性はテレワークでどのように変わったのか
  3. 働く人と仕事の関係はテレワークで変わったのか
  4. テレワーク下でエンゲージメントを高めていくために何をすれば良いか

※本コラムは、株式会社ビジネスリサーチラボが2020年12月に開催した「テレワーク時代のエンゲージメント:最新研究にもとづく処方箋を徹底解説」をもとに構成しています。

登壇者

伊達 洋駆

神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、ピープルアナリティクスやエンゲージメントサーベイのサービスを提供している。著書に『オンライン採用』(日本能率協会マネジメントセンター)、『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(共著:ソシム)など。

 

1. エンゲージメントとは何か

エンゲージメントには2つの側面がある

エンゲージメントとは何かと尋ねられたとき、一言で答えるのは難しいと思います。HR系のメディアでも定義が異なります。

HRプロでは「従業員の会社に対する愛着心や思い入れ」、日本の人事部では「愛着心、思い入れ、さらに個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献し合う関係」、HR NOTEでは「従業員満足度ではなく、自社に対する愛着とか、自社の理念、ビジョンに共感できているか、企業成長に積極的に関わっていこうとしているか」、さらに、BizHintでは「組織に対する自発的な貢献意欲」と定義しています。

エンゲージメントにはさまざまな要素が含まれていることがわかります。このようなエンゲージメントをめぐる現状に対して、学術界からは「古いワインを新しいボトルに詰め込んでいる」、つまり、エンゲージメントはかねてから提示されている概念をいくつか詰め込んだだけなのでは、という批判もあります[1]。

新しいボトルの中に入っている古いワインとは一体何でしょう。エンゲージメントは、大きく分けると2つのコンセプトから構成されていると考えることができます。一つが、組織と個人の結びつきに関するコンセプトで、「組織コミットメント」という考え方です。もう一つが、仕事と個人の結びつきで、「ワーク・エンゲイジメント」と呼ばれます。

これら2つの要素を持つエンゲージメントとは、働く個人が「組織」や「仕事」との間で良好な関係を形成していくことであると言えるでしょう。本稿では、組織コミットメントとワーク・エンゲイジメントそれぞれに、テレワークが掛け合わさると何が起こるかを解説します。

 

2. 働く人と組織の関係性はテレワークでどのように変わったのか

テレワークでも組織コミットメントは変化しない

まず、テレワークと組織コミットメントの掛け合わせについて解説します。組織コミットメントとは、組織に対する愛着や一体感を指します[2]。組織コミットメントは、テレワークになったときにどう変化するのでしょうか。

メタ分析(多くの先行研究を統合して統計的に分析したもの)の結果によると、テレワークの度合いは組織コミットメントと関係しないという結果もあれば[3]、テレワークの人のほうがわずかに組織コミットメントが高いという結果もあります[4]。テレワークと組織コミットメントの関係性は、統計的に意味のある関係にないか、わずかな関係にとどまるわけです。

2020年の5・6月に、コロナ禍におけるロックダウンでテレワークが増えたヨーロッパで行われた研究でも、組織コミットメントは変わりませんでした。これは、先ほどのメタ分析を裏付ける結果です。

選択可能性と心理的孤立が組織コミットメントに影響する

働く場所が組織コミットメントに影響を与えないとするなら、何が組織コミットメントに影響するのでしょうか。

第1に、選択可能性です。ある研究では、柔軟な勤務スケジュールとサバティカル(長期有給休暇)があると、組織コミットメントが高いことがわかりました[5]。特定の勤務形態を強制されるより、複数の勤務形態を選べるほうが、組織コミットメントには影響があるということです。

第2に、心理的孤立です。ある研究では、孤立を二種類に分けます。一つが「心理的孤立」で、他者とのつながりや支援、交流が不足している状態です。もう一つが「物理的孤立」で、他者から物理的に分離されている状況です。

2020年に発表されたアメリカの研究では、心理的孤立を感じると組織コミットメントは大きく下がる一方、物理的孤立と組織コミットメントとは関係がないことが明らかになりました。しかも面白いのが、物理的孤立と心理的孤立の間には関連がない点です。テレワークをしたからといって心理的孤立が生み出されるわけではありません[6]。

2020年に、テレワークを導入する日系企業を対象に、ビジネスリサーチラボが行った調査では、周囲からのサポートを得られていると感じている従業員のほうが、組織コミットメントが高いという結果が得られました。周囲からのサポートを得られると心理的孤立が下がります。心理的孤立の重要性を示した結果だと言えるでしょう。

3. 働く人と仕事の関係はテレワークで変わったのか

オンラインと対面では何が変わるか

続いては、仕事と個人のつながりを表すワーク・エンゲイジメントを取り上げます。ワーク・エンゲイジメントは、熱意、没頭、活力という3要素から構成されます[7]。熱意は、仕事に誇りややりがいを感じていること。没頭は、仕事に熱心に取り組んでいること。活力は、仕事から活力を得て生き生きしているということです。

テレワークという条件が加わると、ワーク・エンゲイジメントはどのように変化するのでしょうか。この問題を考えるために、少し寄り道します。それは、テレワークが導入されると、従業員同士のコミュニケーションが、対面からオンラインに移行する点です。

例えば、従来であれば会議室を取り、対面でみんなが集まって行うのが一般的でしたが、テレワークになるとZoom等やチャットのアプリを使って、離れた場所からオンラインで行います。コミュニケーションが対面からオンラインに変わることで、何が変わるのでしょう。

オンラインでは感情が伝わりにくい

ここで注目したい重要な変化とは、感情の伝わり方です。人の持つ感情を十分に伝えることができるのは、オンラインよりも対面のほうです[8]。対面のコミュニケーションで相手の感情を察知しやすいのは、対面においては「非言語的手がかり」が得られるからです。

非言語的手がかりは言葉以外の情報を指します。身ぶり手ぶり、服装、視線、匂いなど、さまざまな情報を交換するのが人のコミュニケーションです。対面では非言語的手がかりが十分に得られますが、オンラインでは不足する傾向にあります。皆さんも、WEB会議などで、視線が合わないがゆえに会話がぶつかるなどの経験をしたことがありませんか。

非言語的手がかりは、感情の伝達が得意です。楽しいという感情を伝えるときに、言葉で「私は楽しいです」と言うのと、笑顔を見せるのでは、後者のほうが伝わります。笑顔という非言語的手がかりがあったほうが、相手の感情は分かりやすいわけです。オンラインだと非言語的手がかりが少なくなるので、感情が伝わりにくくなります。

とはいえ、オンラインの中でも感情を伝えようとする工夫が積み重ねられてきました。例えば、チャット上での「絵文字」や、オンラインでのミーティングで大きく相槌を打ったり、手を挙げたりするのは工夫の一部です。

4. テレワーク下でエンゲージメントを高めていくために何をすれば良いか

感情の利用・管理がワーク・エンゲイジメントに影響

コミュニケーションの中で感情が伝わらないと、ワーク・エンゲイジメントは高まりにくいことが分かっています。スペインにおいて大学生を対象に、オンラインツール(web会議、チャット、メールなど)を使ってコミュニケーションをとりながら、グループ単位で課題に取り組む実験が行われました[9]。

この実験では、参加者が大きく二つのグループに分けられました。一つは、オンラインで感情を表現し伝える方法をトレーニングされたグループ。もう一つが、そういったトレーニングを受けていないグループです。結果、前者のグループは、課題に対するモチベーション、グループのエンゲージメントが高まりました。

他にも同様の結果を示している研究があります。テレワークを行っている従業員を対象にした調査です[10]。この研究では、マネージャーのEQ(エモーショナル・インテリジェンスの略。感情を管理したり利用したりする能力)に注目しています。調査の結果、マネージャーのEQが高いほど、メンバーのワーク・エンゲイジメントが高いことが分かりました。

感情を管理したり表現したりすることが、なぜワーク・エンゲイジメントを上げるのでしょう。それは、感情を管理したり利用したりできるようになると、ポジティブな感情を表現できるからです。「拡張形成理論」によれば、ポジティブな感情は人の物の見方や行動を広げる効果があります。

ビジネスリサーチラボで、テレワークを導入している日系企業を対象に2020年に実施した組織サーベイでは、上司が部下に対してポジティブな接し方をしていると、部下のワーク・エンゲイジメントが高まるという結果が得られています。ポジティブな感情の重要性を示す結果です。

朗報ですが、感情を管理・利用する能力は向上させることができます。後天的にある程度トレーニングすることができるのです。テレワークの中でワーク・エンゲイジメントを高めていこうとするとき、感情を管理・利用する能力を開発していく必要があります。

(了)


参考文献

[1] Schaufeli, W. B., and Bakker, A. B. (2010). Defining and measuring work engagement: Bringing clarity to the concept. In A. B. Bakker (Ed.) & M. P. Leiter, Work engagement: A handbook of essential theory and research . Psychology Press.
[2] Meyer, J. P. and Allen, N. J. (1991). A three-component conceptualization of organizational commitment. Human Resource Management Review, 1, 61-89.
[3] Nieminen, L.G., Nicklin, J., McClure, T. and Chakrabarti, M. (2011). Meta-analytic decisions and reliability: a serendipitous case of three independent telecommuting meta-analyses. Journal of Business and Psychology, 26, 105-121.
[4] Martin, B. and MacDonnell, R. (2012). Is telework effective for organizations? A meta-analysis of empirical research on perceptions of telework and organizational outcomes. Management Research Review, 35, 602-616.
[5] Onken-Menke, G., Nuesch, S. and Kroll, C. (2018). Are you attracted? Do you remain? Meta-analytic evidence on flexible work practices. Business Research, 11, 239-277.
[6] Wang, W., Albert, L., and Sun, Q. (2020). Employee isolation and telecommuter organizational commitment. Employee Relations, 42(3), 609-625.
[7] Schaufeli, W. B., Salanova, M., Gonzalez-Roma, V., and Bakker, A. B. (2002). The measurement of engagement and burnout: A two sample confirmatory factor analytic approach. Journal of Happiness Studies: An Interdisciplinary Forum on Subjective Well-Being, 3(1), 71-92.
[8] 深田博巳(1998)『インターパーソナルコミュニケーション:対人コミュニケーションの心理学』北大路書房。
[9] Holtz, K., Orengo Castella, V., Zornoza Abad, A., and Gonzalez-Anta, B. (2020). Virtual team functioning: Modeling the affective and cognitive effects of an emotional management intervention. Group Dynamics: Theory, Research, and Practice, 24(3), 153-167.
[10] Sebastian, K., and Hess, J. (2019). Leader emotional intelligence and work engagement in virtual teams within a healthcare service setting: A quantitative study. Oklahoma State Medical Proceedings, 3(1).

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