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コラム

ミーティング・サイエンス入門:会議の質の高め方を科学する(セミナーレポート)

コラム

ビジネスリサーチラボは、20262月にセミナー「ミーティング・サイエンス入門:会議の質の高め方を科学する」を開催しました。

日々の業務において、会議は多くの時間を占める活動です。しかし、その進め方について、私たちは過去からの慣習や個人の経験に頼りすぎていないでしょうか。

本セミナーでは、「ミーティング・サイエンス」という学術的な視点を取り入れ、会議のあり方を科学的に見つめ直しました。これまでの常識を問い直し、データに基づいた事実から、より良い組織をつくるためのヒントを探りました。

講演では、会議を、人間の心理や行動が複雑に関わる社会的なプロセスとして扱っています。例えば、アジェンダの配布や時間の厳守といった運用が、参加者の意欲や満足度をどのように左右するのか、研究結果をもとに解説しました。また、開始時刻がわずかに遅れるだけで成果が低下してしまうメカニズムや、会議の頻度や長さが参加者の幸福感や疲労感とどのように関連しているのかといった実態についても触れました。

さらに、議論の中身だけでなく、その周辺にあるコミュニケーションにも光を当てています。会議中に本音を隠して周囲に合わせることが離職意図につながる可能性や、ネガティブな発言が場の空気を停滞させる仕組みについて考えました。一方で、会議前の何気ない雑談が持つ効用など、普段は見過ごされやすい要素がチームの信頼関係に与える影響についても掘り下げました。

会議の質を高めることは、業務効率化にとどまりません。それは、働く人々の意欲を引き出し、組織全体の健全性を高めるためのアプローチになります。組織内のコミュニケーションを新たな視点で捉え直し、より良い形へと再構築するきっかけになれば幸いです。

※本レポートはセミナーの内容を基に編集・再構成したものです。

はじめに

会議と言うと、業務効率化やコスト削減といった文脈で語られることが多いかもしれません。たくさんの時間を費やす活動であるため、いかに時間を短縮し、素早く意思決定を行うかという点が重視されるのは当然のことです。しかし、本講演では少し異なる視点で会議にアプローチします。それは、会議とは従業員が組織の文化や風土を体験する場であり、その質の良し悪しが従業員の心理状態や「この会社にいたい」という気持ちに関わっているという視点です。

会議は業務連絡の手段にとどまらず、組織と個人の関係性を形作る接点として機能しています。本講演では、「ミーティング・サイエンス」と呼ばれる学術的な研究知見に基づき、会議の実態を検討します。会議の構造、そこで交わされる感情、頻度や量が、従業員の幸福度や離職意図にどのような影響を与えるのかを論じ、より健全な組織を築くためのヒントを提供します。

会議の構造が心理に与える影響

会議の質を議論する際、アジェンダがあるかないか、開始時間が守られているかといった形式的な要素は、マナーや運営上の決まり事として軽く見られるかもしれません。しかし、こうした会議の設計(デザイン特性)や手順が適切であるかどうかは、参加者の心理的な関心を通じて、会議が成功するかどうかを決定づける要因であることが研究によって示されています。

会議のデザイン特性が成果に結びつくプロセスについて、958名の就労者を対象とした調査が行われました[1]。この研究では、アジェンダの使用、議事録の作成、時間の厳守、適切な施設環境、司会者の存在といった5つの要素と、参加者が感じる会議の有効性との関係が検証されました。

分析の結果、これらの要素はすべて、会議の有効性とプラスの関係にあることがわかりました。さらに、こうした要素が有効性に直接影響を与えるだけでなく、出席者の「関与」という心理状態を介して作用することが明らかになりました。

要するに、アジェンダが適切に配られ、時間が守られ、快適な環境が整えられている会議では、参加者は議論に集中し、深く関わることができるようになり、その高い関心度が結果的に会議の目標達成や満足度を高めるというつながりがあるのです。逆に言えば、準備不足の会議は、進行が滞るだけでなく、参加者の意欲を仕組みとして低下させてしまいます。

同じ研究における別の調査では、292名の就労者を対象に、特定の会議におけるアジェンダの役割が検討されました。その結果、アジェンダは単にあるだけでは不十分であり、会議中にすべてのアジェンダが消化されたかという「完了度」が、参加者の関心や有効性の認識に影響していることが判明しました。議題を残したまま終了することは、参加者に不完全燃焼感を与え、会議の質に対する評価を下げてしまいます。

会議の構造におけるもう一つの大事な要素は「時間の厳守」です。開始時刻の遅れが及ぼす影響については、多角的な検証が行われています。米国の就労者252名を対象とした調査では、直近の会議の半数以上が定刻通りに始まっておらず、特に10分遅れて始まった会議は、定刻に始まった会議と比べて、参加者の満足度や有効性の評価が著しく低いことが明らかになりました[2]

この現象の原因を解明するために、実験が行われました。大学生270名を48のグループに分け、アイデア出しの会議を行わせる実験です。グループは、定刻通りに開始する条件、5分待ってから開始する条件、10分待ってから開始する条件のいずれかに割り当てられました。会議の内容やメンバーの能力に差がないにもかかわらず、10分間の待機を強いられたグループは、会議後の満足度や有効性の評価がはっきりと低くなりました。

深刻な影響が見られたのは、客観的な成果の質です。訓練された評価者がアイデアの数や質、実行可能性を判定したところ、10分遅れのグループは、定刻開始グループに比べて全ての指標で低いパフォーマンスを示しました。

研究者たちは、会議中および待機中のビデオ映像を分析することで、パフォーマンス低下のプロセスを特定しました。10分間の待機を強いられたグループでは、待機時間の後半にかけて、参加者同士の私語や不満をもらすといった否定的な行動が増加しました。そして、その悪い雰囲気は会議が始まった後にも持ち越され、他者の発言を遮ったり、議論に関係のない会話を続けたりといった妨害的な行動が頻発しました。

開始時刻の遅れは、会議時間を短くさせるだけでなく、参加者の心理状態を悪化させ、集団内のコミュニケーションの質を損なうことで、最終的な成果物まで劣化させます。これらは、会議の運用ルールを徹底することが、組織の生産性や人間関係の維持にとっていかに重要であるかを裏付けています。

これらの研究知見に基づけば、会議の「準備」と「開始」に関する規律を、組織文化のレベルまで高める施策が求められるでしょう。

アジェンダについては、当日の進行表として配るのではなく、参加者の心理的な準備を促すツールとして位置づけ直す必要があります。具体的には、議題ごとの所要時間だけでなく、「情報の共有」「アイデア出し」「意思決定」といったゴールを明記し、参加者がどのような貢献を期待されているかを事前に把握できる状態を作ります。これによって、参加者は会議に対する期待値を調整し、発言の準備を整えることができます。

開始時間の遵守に関しては、「遅れてくる人を待つ」という一見配慮ある行動が、実は時間通りに参加した従業員の意欲と成果を犠牲にする行為であることを組織全体に周知する必要があります。リーダー層は、定刻開始を厳格なルールとして守り、遅刻者がいた場合でも予定通り会議を始めることを徹底します。「待たない」という姿勢を示すことで、時間を守ることの重要性が言葉以上に伝わり、悪しき習慣を断ち切ることができるかもしれません。

これは単純なマナー向上ではなく、組織の規律と成果を守るための施策として位置づけられるべきです。

会議中の感情労働とコミュニケーション

会議室という密室では、議論の内容以上に、そこで交わされる感情や言葉以外のメッセージが参加者に影響を与えています。とりわけ、組織内での立場や周囲への同調圧力によって本音を抑えなければならない状況は、従業員のメンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性があります。

会議における感情の抑制について、「表層演技」という概念を用いた調査研究があります[3]。表層演技とは、組織や場面から求められる感情表現に合わせて、自分の本心とは異なる感情を装うことです。心の中では反対していても笑顔で同意したり、無関心であっても興味があるように振る舞ったりすることが、表層演技に当たります。米国の就労者約180名を対象とした追跡調査では、会議中の表層演技が従業員に与える長期的影響が検証されました。

1段階の調査では、会議中に表層演技を頻繁に行っている従業員ほど、その会議を自分の仕事にとって無益であると評価する傾向が確認されました。本心を偽るという行為自体が心理的な負担となるだけでなく、会議への没入を妨げ、実りある時間だったという感覚を奪います。

その3ヶ月後に行われた第2段階の調査でさらなる発見が得られました。当初の時点で会議中に表層演技を多く行っていた従業員は、3ヶ月後の時点で情緒的な消耗の度合いが高く、離職意図も高まっていることが示されたのです。これは、会議の場において安心感が欠けていることが、その場限りのストレスにとどまらず、時間をかけて従業員を疲れさせて、組織からの離脱を引き起こす要因となることを示唆しています。

会議中の発言内容が、その場の雰囲気や集団のムードをどのように作っていくのかについても、詳細な分析が行われています。ドイツの製造企業のチームを対象に、実際の会議風景をビデオ撮影し、発言の連鎖を分析した研究があります[4]。この研究では、現状への不満や諦めを示す「不満発言」と、改善に向けた意欲を示す「変化への関心発言」に着目しました。

分析の結果、誰かが不満を口にすると、その直後に別のメンバーも不満を述べたり、その不満に同意したりする確率が高いことが分かりました。ネガティブな発言が続く「不満サイクル」が形成されたグループでは、観察者によって評価されたグループ全体のムードが受動的で停滞したものになりました。

一方で、前向きな提案や変化への関心を示す発言も同様に連鎖し、「変化への関心サイクル」を形成します。このサイクルが多く見られるグループでは、活動的で活気のあるムードが醸成されていました。重要な点は、一度ネガティブなサイクルに入ると、そこから抜け出すことが容易ではないということです。

しかし、ネガティブな連鎖を断ち切るための有効なコミュニケーションも特定されています。それは、議論の進め方や時間管理に関する「手続き的発言」です。「話を元の議題に戻しましょう」「残り時間を確認しましょう」「ここまでの議論を整理しましょう」といった発言の直後には、不満や批判といった非生産的な発言が減り、代わって具体的な行動計画に関する発言が増えることが確認されました。

興味深いことに、こうした手続き的発言の効果は、特定のリーダー一人が担うよりも、メンバー全員が均等に行うほうが、会議に対する満足度が高まることも分かっています。

会議の質を左右するのは、会議中のやり取りだけではありません。会議が始まる直前の数分間や、会議が終わった直後のコミュニケーションも重要な役割を果たしています。会議前のコミュニケーションに関する調査では、業務とは無関係な雑談(スモールトーク)が、会議の有効性評価に与える影響が検証されました[5]

252名の就労者を対象とした調査の結果、会議前に雑談が行われることは、会議の有効性とプラスの関係を持っていました。特に、内向的な性格特性を持つ参加者において、この傾向は顕著でした。外向的な参加者は雑談の有無にかかわらず一定の評価を行いましたが、内向的な参加者は、雑談があった場合に会議の有効性を高く評価し、雑談がなかった場合には低く評価しました。会議前の非公式な会話が、発言に対する心理的なハードルを下げ、安心して会議に参加するための準備運動として機能していることを意味しています。

一方で、会議後の非公式な集まりについては、注意が必要です。公式の会議が終了した後に、特定のメンバーだけで集まって行われる会話は「会議後の会議(meeting after the meeting)」と呼ばれます。この現象に関する理論的な研究によれば、会議後の会議は、公式の場における議論が不十分であったり、心理的な安心感が低く本音を言えなかったりした場合に発生しやすくなります[6]

参加者は、公式会議で生じた消化不良の感情や、理解できなかった決定事項について、信頼できる仲間内で意味づけを行うために集まります。これは従業員にとっては精神的な安定を保つための防衛策ですが、組織全体として見れば、公式の会議がうまく機能していないことの証拠でもあります。

こうした状況を改善するために、会議における発言ルールと時間の使い方を再定義することが有効です。

例えば、進行役以外の参加メンバー全員が、「話を戻しましょう」や「時間を確認しましょう」といった手続き的な発言を積極的に行ってもよいというグランドルールを作ります。これを「ファシリテーションの民主化」として推奨し、特定の人物や不満サイクルに頼らずに場の停滞を防ぐ仕組みを作ります。

さらに、効率性を追求するあまり会議前の雑談を無駄と見なすのではなく、開始前の数分間を参加者の心理的な安心感を高めるための意図的な余裕として認めることも重要です。この時間は、特に内向的な従業員が発言しやすい環境を整えるための投資となります。

会議後に不満解消のための非公式な集まりが頻発していないかを観察し、もし多いようであれば、それは公式会議での発言機会が不足しているサインです。その場合、会議の最後に「言い残したことはないか」を確認する時間を設けるなど、公式の場でのガス抜きを促すような運用改善を現場に働きかけることが、隠れた不満の蓄積を防ぐことにつながります。

会議の量と従業員のウェルビーイング

多くの企業で課題となっている「会議が多すぎる」という問題についても、科学的な視点から分析されています。会議の量的な負担は、従業員の幸福感や業務パフォーマンスにどのような影響を与えるのでしょうか。

会議に費やす時間が長いほど、従業員のストレスは増大すると考えられるかもしれません。しかし、676名および304名の就労者を対象とした二つの調査から得られた結果は、それほど単純ではありませんでした[7]。会議に費やす時間の長さや会議の回数と、従業員の仕事への満足度や不安感との間には、一貫した関係性が見られなかったのです。要するに、会議が多いからといって、誰もが不幸になるわけではありません。

この関係性を左右するのは、業務の性質や個人の志向性といった背景です。自分の業務を行うために他者との連携が不可欠な「相互依存性」が高い仕事に就いている人にとって、会議は業務に必要な調整の場であり、会議時間が長いことがむしろ仕事への満足感を高める傾向が見られました。

一方で、一人で完結する業務が多く、相互依存性が低い仕事の人にとっては、会議は業務を妨害する「中断」として認識され、会議時間の増加とともに満足度が下がりました。また、高い目標達成意欲を持つ個人にとっても、会議はタスクの完了を阻む障害物とみなされやすく、会議の量が多いほど離職意図が高まることが示されました。

会議の「総時間」よりも「回数」が重要であることを示した研究もあります[8]37名の大学職員を対象に、5日間にわたる日誌形式の調査が行われました。参加者は毎日、会議の回数、総時間、疲労感、主観的な忙しさを記録しました。個人ごとの変動を分析した結果、一日の会議の総時間が同じであっても、会議の回数が多い日ほど、従業員は強い疲労感と忙しさを感じていることが明らかになりました。

この背景には「タスクの切り替えコスト」という脳の働きに関するメカニズムが存在します。私たちはある業務から別の業務へと注意を切り替える際に、脳のエネルギーを消費します。会議に参加するためには、行っていた業務を中断し、会議モードへと頭を切り替え、会議終了後には再び元の業務へと戻る作業が必要です。

例えば、3時間の会議が1回ある場合、切り替えは往復1回で済みますが、1時間の会議が3回ある場合、合計時間は同じでも切り替えは3回発生します。この頻繁な中断と再開のプロセスが、従業員の精神的なエネルギーを枯渇させ、疲労感を蓄積させる主な原因となっています。

予定外の会議についても触れておく必要があります。廊下での立ち話や、突然の呼び出しといった予定外の会議は、業務の中断であり、集中力を削ぐ要因として否定的に捉えられるかもしれません。しかし、学校の校長を対象とした観察研究では、こうした予定外の会議が勤務時間の相当部分を占めている一方で、重要な組織的機能を果たしていることが明らかになりました[9]。それは、現場の生々しい情報を収集する情報交換の機能、問題が深刻化する前に対処する危機管理の機能、教職員の感情的なケアを行う社会的サポートの機能です。

単純にすべての会議を減らせばよいというわけではなく、その会議が組織の維持や従業員のケアに果たしている隠れた機能を見落とさない視点が求められます。

重要なのは、会議を単なる時間の消費活動としてではなく、従業員のリソースの交換プロセスとして捉えることです。従業員は、会議に対して自分の貴重な時間を投資します。その投資に対して、業務遂行に必要な情報や、チームとの一体感、目標達成への見通しといったリターンが得られるのであれば、会議が多くても不満は生じません。

実際に、会議の満足度が高い従業員は、自分には十分な情報が与えられていると感じ、それが心理的なエンパワーメントを高めることにつながっているという研究結果も存在します[10]。逆に、投資に見合うリターンがないと感じられる会議、すなわち目的が曖昧で、何も決まらず、発言もできないような会議が続くと、従業員は資源を奪われたと感じ、組織に対する信頼を損なっていきます。

この知見を踏まえ、会議のスケジュール管理に対する踏み込んだ指針を示すことができます。例えば、短時間の会議を週全体に分散させるのではなく、特定の曜日や時間帯に集約させる「会議のブロック化」が推奨されます。例えば、午前に集中して会議を行い、午後はまとまった作業時間にあてる、あるいは「ノーミーティングデー」を設けて中断のない日を作るといった施策です。これによって、従業員が中断されることなく集中して業務に取り組める時間を確保し、タスクの切り替えコストによる疲れを防ぐことが可能です。

同時に、立ち話などの予定外の会議については、一律に禁止するのではなく、それが持つ危機管理やメンタルケアの機能を認めつつ、業務の集中時間とは区別するようにします。管理職に対しては話しかけてもよい時間を明示してもらい、部下が相談に来てよい時間と、集中すべき時間を分けることで、組織の柔軟性と生産性のバランスを保つことが求められます。

おわりに

本講演では、ミーティング・サイエンスの知見に基づき、会議が組織と人間に及ぼす多面的な影響を論じてきました。明らかになったのは、会議とは単純な業務遂行の手段ではなく、従業員のエンゲージメント、メンタルヘルス、定着率を左右する組織の基盤であるという事実です。

会議の改革は、制度変更や報酬改定といった大規模な施策に比べて着手しやすく、かつ日常的な影響力が大きい領域です。まずは、アジェンダの事前配布や時間厳守といった基本的な運用の徹底から始めてみるとよいでしょう。それは事務的な改善ではなく、従業員に対する敬意の表明であり、「あなたとの時間を大切にする」という約束を守ることでもあります。

また、会議中の発言バランスや感情的な安心感に目を向け、本音が言える環境を整えることは、将来的な離職を防ぎます。会議の回数やスケジュールを集約し、業務の分断を防ぐ配慮も必要です。科学的な根拠を持って会議を見直し、再設計することで、組織はより健全で、働く人々にとって魅力的な場所へと生まれ変わることができるはずです。

Q&A

Q:アジェンダの事前配布をルール化したものの、形式的な項目が並ぶだけで、中身のないアジェンダが増えてしまっています。参加者の関与を高める質の高いアジェンダを作成するには、どのような点を工夫すればよいでしょうか。

アジェンダ作成時は単に議題のタイトルを書くだけでなく、各項目の「ゴール」を明記することが重要です。

例えば、情報共有か、アイデア出しの機会か、具体的な意思決定が必要な場なのか。こうしたゴールがなく、項目が列挙されているだけでは、参加者はその時間内に何をするのか、何を達成したいのかが分かりません。

一方で、アジェンダにゴールが示されていると、どうなればその議題は完了と言えるのかが定義されているので、参加者は目的を見据えて準備ができます。自身の役割が事前に理解できるため、資料などの物理的な準備はもちろん、心の準備もしやすくなるのです。

Q:オンライン会議において、チャットツールを使った「裏会話」が発生し、表の議論とは別の文脈で合意形成が進んでしまうことがあります。これはある種、「会議後の会議」のデジタル版とも言えますが、会議中に同時進行している状況です。こうした状況にはどのように対処すべきでしょうか。

確かに、そういった会議はあります。会議中のチャットは、補足情報の共有や賛同を示すリアクションなど、議論を活性化させるには有効です。しかし、無関係な会話や批判的なコメント、表の議論とは別の意思決定が水面下で進むような状況は、組織に分断を生んでしまいます。

対処法としては、チャットの内容をファシリテーターが適宜読み上げることがあり得ます。あえて口に出して読み上げることで、隠れていた会話を「公式の場」、すなわち表の会議テーブルの上に乗せることができます。

そうすることで、一部の人による「裏会話」や、陰での意味付けを防げます。全員の認識を表の議論に集約し、認識を揃えていけるでしょう。チャットを排除せず、ファシリテーターが橋渡しをして表の議論に統合するのが有効なアプローチだと思います。

Q:自分の意見を喋り続けるリーダーがいる一方で、他の参加者が沈黙してしまっている会議が散見されます。結局リーダーばかりが話し続けてしまう状況において、参加者の発言を促すにはどうすればよいでしょうか。

大前提として、沈黙が必ずしも悪いわけではありません。深く考えている最中かもしれませんし、沈黙が許されない会議は辛いものです。沈黙自体を常に問題視する必要はありません。

ただし、誰か一人が話し続けることで場の空気が支配され、発言のハードルが高まっている状態は問題です。リーダーが一方的に話していると、たとえ話を振っても、周囲は萎縮して発言しにくい傾向があります。

改善には段階を踏むことが有効です。いきなり口頭での発言が難しければ、「まずはチャットに意見を書いてみてください」と促したり、「隣の人と少し話してみてください」と少人数で意見を出す時間を設けたりするのも手です。少しずつ「声を出す」ことに慣れてもらうステップを用意するとよいでしょう。

事前の準備も重要です。アジェンダを共有し、会議のゴールや参加者への期待をあらかじめすり合わせておきます。役割が明確なら発言の準備もしやすく、当日の議論に入りやすくなるはずです。

Q:プレイングマネージャーが会議に忙殺され、本来すべき部下の育成や戦略策定の時間が取れていません。会議を減らすために権限委譲をどう進めるべきか、あるいは会議への参加基準をどう明確化すればよいでしょうか。

会議が増えすぎると疲労が蓄積し、忙しさを感じやすくなるという研究もあります。日中は会議に追われ、夜にようやく本来の仕事ができるという状態で、疲弊しているプレイングマネージャーも多いのが現実です。

この問題へのアプローチはいくつかあります。一つ目は、マネージャーの出席必須要件の見直しです。どういう会議なら出席必須か条件を再考します。「意思決定が必要な場のみ参加する」や「冒頭か最後の十分間だけ参加する」といった柔軟な形式を認めることも一案です。

二つ目は「会議のブロック化」です。会議を特定の時間帯に凝縮して配置し、それ以外をまとまった作業時間として確保します。生まれた空白の時間を、戦略策定などの業務に充てられます。

三つ目は、部下育成の観点からのアプローチです。会議を育成の機会として活用し、マネージャーの代理として部下に出席してもらいます。部下には視座を高める「ストレッチ経験」になり、マネージャーの役割を引き継ぐ訓練にもなります。権限委譲と育成を兼ねて、会議参加を任せてみるのも一つの手段です。

Q:会議で議論は尽くしたものの、「持ち帰って検討します」となり、結論が先送りされるケースがあります。時間内に意思決定を行い、プロジェクトを前に進めるには、どのようなクロージングが有効でしょうか。

「持ち帰って検討します」で決定が先送りされると、再度の会議が必要になり、進行も滞ってしまいます。

会議内で完結させるには、やはりアジェンダの設計が重要です。アジェンダに「〇〇について決定する」というゴールを定め、冒頭で「今日のゴールはこの事項を決めることです」と合意形成しておきます。

とはいえ、情報不足で決めきれない場面はあるでしょう。その場合は、「いつまでに」「誰が」「どんな情報を収集して」「どう決めるのか」という決めるプロセスを会議内で決定しましょう。ここを曖昧にせず、次の一手を確定させることが重要です。

また、会議の残り10分間をバッファー、あるいは結論を出すための時間として割り当てておくのも手です。議論が白熱しても、時間になれば強制的にクロージングや決定プロセスに入るルールを設けるとよいでしょう。

脚注

[1] Leach, D. J., Rogelberg, S. G., Warr, P. B., and Burnfield, J. L. (2009). Perceived meeting effectiveness: The role of design characteristics. Journal of Business and Psychology, 24, 65-76.

[2] Allen, J. A., Lehmann-Willenbrock, N., and Rogelberg, S. G. (2018). Let’s get this meeting started: Meeting lateness and actual meeting outcomes. Journal of Organizational Behavior, 39(8), 1008-1021.

[3] Shanock, L. R., Allen, J. A., Dunn, A. M., Baran, B. E., Scott, C. W., and Rogelberg, S. G. (2013). Less acting, more doing: How surface acting relates to perceived meeting effectiveness and other employee outcomes. Journal of Occupational and Organizational Psychology, 86(4), 457-476.

[4] Lehmann-Willenbrock, N., Meyers, R. A., Kauffeld, S., Neininger, A., and Henschel, A. (2011). Verbal interaction sequences and group mood: Exploring the role of team planning communication. Small Group Research, 42(6), 639-668.

[5] Allen, J. A., Lehmann-Willenbrock, N., and Landowski, N. (2014). Linking pre-meeting communication to meeting effectiveness. Journal of Managerial Psychology, 29(8), 1064-1081.

[6] Meinecke, A. L., and Handke, L. (2022). The meeting after the meeting: A conceptualization and process model. Organizational Psychology Review, 13(4), 379-399.

[7] Rogelberg, S. G., Leach, D. J., Warr, P. B., and Burnfield, J. L. (2006). Not another meeting! Are meeting time demands related to employee well-being? Journal of Applied Psychology, 91(1), 83-96.

[8] Luong, A., and Rogelberg, S. G. (2005). Meetings and more meetings: The relationship between meeting load and the daily well-being of employees. Group Dynamics: Theory, Research, and Practice, 9(1), 58-67.

[9] Midha, G. (2023). Unplanned meetings: Shifting school principal practice 5 min at a time. Educational Management Administration & Leadership, 1-20.

[10] Allen, J. A., Sands, S. J., Mueller, S. L., Frear, K. A., Mudd, M., and Rogelberg, S. G. (2012). Employees’ feelings about more meetings: An overt analysis and recommendations for improving meetings. Management Research Review, 35(5), 405-418.


登壇者

伊達 洋駆 株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。近著に『組織内の“見えない問題”を言語化する 人事・HRフレームワーク大全』(すばる舎)、『世界の研究者はマネジメントをどう分析しているのか』(労務行政)、『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)などがある。2022年に「日本の人事部 HRアワード2022」書籍部門 最優秀賞を受賞。東京大学大学院情報学環 特任研究員を兼務。

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