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コラム

公正はどのように育まれるのか:信頼を生むプロセス

コラム

組織で働く人の多くが、自分自身が公正に扱われることを願っています。給与や昇進といった目に見える結果はもちろんのこと、日々の業務における意思決定のプロセスにおいても、その扱われ方が公正であるかどうかは、私たちの満足度や仕事への意欲を左右します。

「公正さ」とは一体何でしょうか。それは単に全員を平等に扱うことでも、明確なルールを設けることだけで達成されるものでもありません。私たちが感じる公正さの感覚は、より繊細で複雑な仕組みの上に成り立っています。本コラムでは、組織における公正さがどのように生まれ、育まれていくのか、その背後にあるメカニズムを検討します。日々のコミュニケーションから組織の構造、評価の仕組みに至るまで、様々な角度から光を当てることで、公正な組織の本質に迫ります。

意見を言う機会と納得できる理由説明が、手続きの公正さを高める

組織における決定が下されたとき、私たちはその「結果」だけでなく、そこに至るまでの「プロセス」にも目を向けます。たとえ自分にとって望ましくない結果であったとしても、その決定プロセスが公正であったと感じられれば、納得感は変わるものです。意思決定プロセスの公正さに関する主観的な認識は、「手続き的公正」と呼ばれています。この手続きの公正さが、何によって高まるのかを検証した一連の研究があります[1]

経営大学院に通う学生たちを対象とした実験が行われました。参加者に、ある就職活動生が企業から不採用通知を受け取るという筋書きを読んでもらいました。参加者はいくつかのグループに分けられ、それぞれ少しずつ内容の違う筋書きを読みます。

ここで操作されたのは二つの要素でした。一つは、面接のプロセスです。あるグループの筋書きでは、面接官が候補者に対して自己アピールや質問をする十分な機会を与えたと記述されていました。これは、候補者が自分の意見を表明する機会、すなわち「ボイス」があった状況です。一方、別のグループの筋書きでは、面接官が一方的に会社の説明をするだけで、候補者にはほとんど発言の機会がなかったとされていました。こちらは「ボイス」がなかった状況です。

もう一つの操作された要素は、不採用通知の手紙に書かれた「理由の説明」でした。あるグループが読んだ手紙には、不採用の理由として「原油価格の急落に伴い、会社が採用を凍結せざるを得なくなった」という、会社側の都合によるやむを得ない事情が丁寧に説明されていました。これは、納得できる理由の説明があった状況です。

対照的に、別のグループが読んだ手紙には、不採用であるという事実だけが記され、その理由は何も書かれていませんでした。筋書きを読んだ後、参加者たちは、この企業の採用手続きが全体としてどれほど公正であったかを評価しました。

分析の結果、二つの要素がそれぞれ独立して、手続きの公正さの評価を高めていることがわかりました。面接で意見を言う機会があったと記述された状況は、なかった状況に比べて、手続きが公正であると評価されました。同様に、不採用の理由としてやむを得ない事情が説明されていた状況は、説明がなかった状況に比べて、手続きが公正であると評価されたのです。

この結果から、たとえ不採用という不利な結果を受け取ったとしても、その過程で自分の意見を伝える機会が保障されていたこと、決定の理由について納得のいく説明があったことが、プロセスの公正さを感じる上で大切であることがわかります。

この発見が、実験室の中だけでなく、現実の組織にも当てはまるのかを確かめるために、第二の研究として社会人経験を持つ人々を対象とした調査が行われました。

この調査では、参加者に「最近、上司に予算や資源の追加を求めたものの、却下されてしまった」という自身の経験を思い出してもらい、その時の状況についていくつかの質問に答えてもらいました。質問項目には、「上司に対して自分の考えを十分に説明する機会がどれだけあったか(ボイスの程度)」や、「上司が却下の理由を説明しようとしたか(正当化の程度)」といった内容が含まれていました。そして、それらの経験全体を振り返り、その時の意思決定プロセスがどれほど公正だったかを評価してもらいました。

統計的な分析を行ったところ、ここでも実験と同様の結果が得られました。上司に意見を伝える機会が多かったと感じている人ほど、また、上司が決定の理由をきちんと説明してくれたと感じている人ほど、そのプロセスを公正であったと評価していました。この二つの要素は、手続きの公正さの評価にそれぞれ独立してプラスの関連を持っていました。採用活動のような特別な場面だけでなく、日常的な予算決定のような場面においても、「意見を言う機会」と「納得できる理由説明」が手続きの公正さを高めることが確認されました。

期待外れの不利益に対し、丁寧な説明は公正さを感じさせ意欲を高める

先ほどは、不利な決定を下された場合でも、その理由について納得のいく説明があれば、プロセスは公正だと感じられやすいことを見ました。この「説明」の力は、どのような状況で最も強く発揮されるのでしょうか。あらゆる不利な状況において、説明は等しく人の心を慰め、納得感を促すものなのでしょうか。この点を掘り下げた研究があります[2]。この研究では、説明の力が、決定の「結果が好ましいか、好ましくないか」ということだけでなく、その結果が「期待通りか、期待外れか」ということによって、どのように変化するのかを検証しました。

この研究の理論的な背景には、「公正さの理論」という考え方があります。この理論によれば、人は何か不公正かもしれない出来事に遭遇したとき、頭の中で「もし違う結果になっていたら、自分の状態は今よりもっと良かっただろうか」という、現実とは異なる可能性を考えます。そして、その上で「意思決定者は、別の行動をとることができただろうか」「道義的に別の行動をとるべきだっただろうか」という思考を巡らせます。

人が強い不公正を感じるのは、これら三つの問いがすべて肯定された時、要するに「もっと良い結果になったはずなのに」と感じ、かつ決定者が「そうできたはずだし、そうすべきだった」と判断した場合です。

ここで説明が果たすのが、後の二つの問い、すなわち「できたはずか」「すべきだったか」に関する情報を提供するというものです。結果が自分にとって好ましいものであれば、そもそも「もっと良い結果になったはずだ」とは考えにくいため、人はそれ以上深く考えようとはしません。しかし、結果が不利なものであった場合、この思考が活発になり、人はその理由を知るための情報を求め始めます。したがって、説明は特に不利な結果がもたらされた後に必要とされると考えられます。

この研究では、実験を通じてこの考えを検証しました。実験に参加したのは大学で心理学を学ぶ学生たちです。参加者は3人1組のグループになり、「ペーパークリップの他の使い道を考える」といった課題に取り組みました。その上で、二人の候補者のプロフィールを読み、どちらが次の課題に適任かをグループで話し合って選びました。グループが決定を下すと、実験の監督者がその決定を「支持する(好ましい結果)」か「覆す(不利な結果)」かを伝えます。監督者は決定の理由について「過去の研究に基づいている」という体で「説明を与える」か「何も説明しない」かのいずれかの対応をとりました。

この研究の独創的な点は、さらに「結果への期待」という要素を組み込んだことです。最初の候補者選択が終わった段階で、参加者は「自分たちの選択が正しいとどれだけ確信しているか」を尋ねられていました。良い結果を強く期待していたにもかかわらず、不利な結果を言い渡された場合、人は単に不利な結果を与えられただけの場合よりも、強いネガティブな感情を抱き、「どうしてこんなことが起きたのか」と原因を探ろうとする動機が強まると考えられます。説明の効果が最も顕著に現れるのは、このような「不利」で、かつ「期待外れ」という条件が重なった場合ではないかと予測されました。

すべてのやり取りが終わった後、参加者は、監督者の決定プロセスや結果が公正だったか、そして、次に行う別の課題への意欲(タスクモチベーション)がどの程度あるかを回答しました。分析の結果、監督者がグループの決定を支持した(好ましい結果)場合、説明の有無は公正さの認識にほとんど影響を与えませんでした。しかし、決定を覆された(不利な結果)場合、説明を与えられたグループは、与えられなかったグループに比べて、プロセスも結果もより公正であったと感じていました。

しかし、結果への期待という要素を含めて分析すると、深い洞察が得られました。説明が持つポジティブな力が最も強く現れたのは、「良い結果を期待していたにもかかわらず、不利な結果を言い渡された」という状況だったのです。この、最もがっかりするような状況下で丁寧な説明を受けると、参加者は手続きが公正であったと感じるだけでなく、次の課題へのモチベーションが著しく高まることが示されました。

逆に言えば、好ましい結果を得た場合や、もともとあまり期待していなかったために不利な結果にもそれほど驚かなかった場合には、説明があってもなくても、次の課題へのモチベーションに大きな違いは見られませんでした。

この研究は、意思決定の理由を説明するという行為が、万能薬ではないことを教えてくれます。その力が真に発揮されるのは、人々が期待を裏切られ、強いネガティブな感情とともに「どうして」という問いが心に強く生じた時です。

忙しくても、公正な行動が報われる組織では公正さは維持される

これまでの議論では、意思決定者が意見を聞く機会を設けたり、理由を丁寧に説明したりすることが、人々の公正さの感覚を育む上でいかに大切かを見てきました。しかし、管理職の立場にある人々も、常に冷静で、十分な時間をかけて部下と向き合えるわけではありません。彼ら彼女らもまた、自身の業務量や組織からのプレッシャーといった現実的な制約の中で行動しています。公正であるべきだと頭では理解していても、それを実行できない状況があるのではないでしょうか。この問いに、組織の文脈という視点からアプローチした研究があります[3]

この研究の出発点にあるのは、「なぜ、管理職は公正さの重要性を認識していながら、時に不公正に振る舞ってしまうのか」という疑問です。その原因を個人の性格や価値観に求めるのではなく、管理職が置かれている「状況」に目を向けました。特に、二つの組織的な要因が取り上げられました。一つは「業務量(ワークロード)」、もう一つは「報酬の仕組み」です。

理論的な土台となったのは、人は複数の目標を同時に追求する際に、限られた時間や注意力といった資源を、より重要だと認識される目標に優先的に配分するという考え方です。管理職にとって、目標達成や生産性向上といった「技術的課題」と、部下を公正に扱うといった「公正さに関わる課題」は、常に両立させなければならない目標です。しかし、業務量が増え、時間的な余裕がなくなると、この二つの課題は資源を奪い合う関係になります。その時、どちらが優先されるのでしょうか。

ここで鍵を握るのが、もう一つの要因である「報酬の仕組み」、すなわち組織がどちらの課題をより評価し、報いるかというメッセージです。組織が技術的な成果ばかりを評価し、公正な行動を評価する仕組みがなければ、忙しい管理職は、無意識のうちに技術的課題を優先し、公正さに関わる課題を後回しにしてしまうのではないか、とこの研究は考えました。

仮説を検証するために、三つの異なる手法を用いた調査・実験が行われました。最初の研究は、管理職を対象とした日記調査です。参加者には二週間にわたって日々の行動を記録してもらい、業務量が多い日ほど、管理職は技術的課題を優先する行動をとっていることがわかりました。

二番目の研究は、より多くの管理職とその部下を対象とした質問紙調査です。分析の結果、業務量が多い管理職ほど技術的課題を優先する傾向があり、その結果として部下からの公正さの評価が低くなる、という関係が見られました。しかし、この関係は、組織が公正な行動を報いる仕組みを持っていると管理職が感じている場合には、弱まることも明らかになりました。

三番目の研究は、実験室でのシミュレーション実験です。参加者には管理職の役を演じてもらい、二つの課題に同時に取り組んでもらいました。一つは「技術的課題」、もう一つは「公正さに関わる課題」です。参加者は、時間的なプレッシャーが高い(業務量が多い)条件と、低い条件のいずれかに割り当てられました。それに加え、報酬に関する指示も操作されました。

結果、参加者が技術的課題を最も優先し、公正さに関わる課題の質が最も低くなったのは、「業務量が多く」かつ「公正な行動が報われにくい」という条件が重なった場合でした。逆に、公正な行動もバランス良く評価されると伝えられた条件では、たとえ業務量が多くても、公正さに関わる課題のパフォーマンスは低下しませんでした。

興味深いことに、公正な行動を評価するよう伝えても、技術的課題のパフォーマンスが犠牲になることはありませんでした。これらの研究結果が示すのは、管理職の公正な行動は、個人の資質や善意だけに依存するものではないということです。忙しさが常態化する職場で、公正さが後回しにされないためには、組織がそれを評価し、報いるというメッセージを発信し続ける必要があるのかもしれません。

上司の公正な態度は、裁量の大きい組織ほど部下に伝わりやすい

組織における公正さは、ある一点で生まれて完結するものではなく、組織の階層を通じて波紋のように広がっていく性質を持っています。特に、上司がそのまた上司からどのように扱われているかという経験は、その上司自身の部下への接し方に反映され、部下たちの公正さの認識にまで連鎖していくことがあります。このような現象は「トリクルダウン効果」と呼ばれています。この公正さの波及は、どのような環境で起こりやすく、また、どのような環境で妨げられるのでしょうか。この問いを探求したのが、次に紹介する研究です[4]

この研究が光を当てたのは、上司から部下へと公正さが伝わっていくプロセスにおいて、「ワークグループの構造」という組織の文脈が果たす調整的な働きです。組織の構造は、大きく「機械的構造」と「有機的構造」の二つに分類されることがあります。一つは、ルールや手続きが厳格に定められ、権限が集中している、いわば官僚的で硬直的な構造です。もう一つは、ルールが少なく、権限が分散しており、個人の裁量が大きい、柔軟で流動的な構造です。

この研究では、公正さのトリクルダウン効果は、後者の有機的な構造を持つワークグループにおいて、より強く現れるのではないかと予測しました。その理由はいくつか考えられます。第一に、機械的な構造のように行動が厳格なルールで縛られている「強い状況」では、上司個人の振る舞いが介在する余地は少なくなります。一方、有機的な構造のような「弱い状況」では、個人の裁量が大きいため、上司の価値観や行動スタイルが、部下との関係性により直接的に反映されやすくなります。第二に、有機的な構造では、何が適切な行動かが曖昧になります。そのため、部下たちは手がかりを求めて、上司の行動を注意深く観察し、それを手本とするようになります。

この仮説を検証するため、様々な業種の多数の組織に所属する管理職とその部下たちを対象とした調査が実施されました。調査では、管理職に対して、自身の直属の上司からどれだけ敬意のこもった丁寧な扱いを受けているかを尋ねました。その管理職の部下たちには、自分たちのワークグループの構造が機械的か有機的か、そして、直属の上司がグループのメンバー全般に対してどれだけ公正に振る舞っているか(公正さの風土)を評価してもらいました。

分析の結果、予測は支持されました。上司が自身の上司から公正に扱われているという認識は、その部下たちが認識するグループの公正な風土と、正の相関関係にありました。これは、トリクルダウン効果の基本的な存在を確認するものです。しかし、この関係は、ワークグループの構造によってその強さが異なっていました。構造がより有機的、すなわち柔軟で裁量が大きいグループにおいて、このトリクルダウン効果は顕著に強く見られました。一方で、構造が機械的、すなわちルールで厳格に管理されているグループでは、上司の経験とグループの風土との間の関連は、ごく弱いものでした。

このグループの公正な風土は、グループ全体の行動にも結びついていました。公正な風土が醸成されているグループでは、組織への貢献行動が多く見られ、逆に逸脱した行動は少ないことが報告されました。そして、モデル全体を検証したところ、上司の公正な経験が、グループの望ましい行動につながるという間接的な連鎖は、ワークグループの構造が有機的である場合にのみ、意味のある形で成立していることが示されました。

その波及には、それを受け止め、増幅させるための適切な環境が必要です。ルールや手続きでがんじがらめになった環境では、一人の上司の公正な振る舞いが持つ力は、残念ながら限定的になってしまうかもしれません。逆に、個人の裁量や自律性が尊重される柔軟な組織においては、上司の公正な態度は、グループ全体の文化を形作る上で、大きな影響力を持つことになります。

脚注

[1] Bies, R. J., and Shapiro, D. L. (1988). Voice and justification: Their influence on procedural fairness judgments. Academy of Management Journal, 31(3), 676-685.

[2] Colquitt, J. A., and Chertkoff, J. M. (2002). Explaining injustice: The interactive effect of explanation and outcome on fairness perceptions and task motivation. Journal of Management, 28(5), 591-610.

[3] Sherf, E. N., Venkataramani, V., and Gajendran, R. S. (2019). Too busy to be fair? The effect of workload and rewards on managers’ justice rule adherence. Academy of Management Journal, 62(2), 469-502.

[4] Ambrose, M. L., Schminke, M., and Mayer, D. M. (2013). Trickle-down effects of supervisor perceptions of interactional justice: A moderated mediation approach. Journal of Applied Psychology, 98(4), 678-689.


執筆者

伊達 洋駆 株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。著書に『組織内の“見えない問題”を言語化する 人事・HRフレームワーク大全』、『イノベーションを生み出すチームの作り方 成功するリーダーが「コンパッション」を取り入れる理由』(ともにすばる舎)、『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)などがある。2022年に「日本の人事部 HRアワード2022」書籍部門 最優秀賞を受賞。東京大学大学院情報学環 特任研究員を兼務。

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