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コラム

「何をやらされているかわからない」を防ぐ:業務設計が左右するインターンシップの成否

コラム

企業と学生を結ぶインターンシップが普及しています。学生がキャリア形成の一環として参加し、企業側も優秀な人材の早期発見や採用活動の効率化を期待しています。しかし、実際のインターンシップの現場では、期待と現実のギャップに悩む学生もいます。「何をやらされているのかわからない」「単純作業ばかりで成長を感じられない」「企業の人とほとんど関わりがない」といった声が聞かれることがあります。

一方で、同じような条件下でも充実した経験を積み、キャリアの方向性を明確にできる学生もいます。この違いはどこから生まれるのでしょうか。そして、学生にとって価値のあるインターンシップとは、どのような条件を満たしたものなのでしょうか。

本コラムでは、海外の研究知見を検討しながら、良いインターンシップが備えるべき条件について考えていきます。業務の設計方法、報酬の有無による違い、学生自身の関わり方、そして教育機関への波及効果まで、多角的な視点から検討することで、インターンシップの価値を探っていきます。

インターンシップ成功には明確な業務設計が重要

インターンシップを成功させるために基本的でありながら見落とされがちなのが、業務設計の明確化です。この点について包括的に検討した研究があります。ある文献レビューでは、インターンシップに関わる三つの主要な利害関係者(学生、教育機関、雇用主)それぞれの視点から、成功要因を整理しました[1]

この研究では、インターンシップを「学生が卒業前に行う構造化されたキャリア関連の職業体験」と定義しつつも、より柔軟に「パートタイムでキャリアに関連する職務経験」として幅広く捉えることを提案しています。そして、インターンシップを理解するための11の次元を提示しました。

これらの次元には、有給か無給かという報酬形態、フルタイムかパートタイムかという勤務形態、大学院生か学部生かという対象層、単位認定の有無、学術的要求度の高低、契約形態(学生と企業の直接契約か学校を介した契約か)、業務内容の明確性、プロジェクト型か日常業務型かという業務性質、学校側と職場側それぞれのメンター配置状況、そして正規雇用への発展可能性が含まれます。

研究では、各利害関係者が得られる利益と直面する課題についても検討されています。学生の立場から見ると、得られる利益は三つのカテゴリーに分類されます。第一に職務関連の利益として、実践的スキルの向上、仕事習慣の改善、理論と実践の結びつきの理解があります。第二にキャリア関連の利益として、業界理解の深化、キャリアビジョンの明確化、キャリア適合性の早期発見が挙げられます。第三にネットワークおよび就職活動における利益として、就職機会の増加、高い初任給の獲得、早期の就職決定、正規雇用への発展可能性があります。

しかし、学生が直面する課題も同時に明らかになっています。深刻なのは、雇用主との期待の相違です。業務内容が曖昧に設定されていると、学生は自分が何を期待されているのか理解できず、混乱や不満を抱くことになります。日常的な雑務やキャリアと無関係な作業ばかりを担当させられるケースでは、学習機会が失われてしまいます。フィードバック不足やトレーニング不足により、成長実感を得にくい状況も生まれています。

教育機関の視点では、実践的教育の提供による理論と現場の架け橋の構築、就職率向上と卒業生満足度向上、教育機関としての評判向上、雇用主との良好な関係構築による資金調達や協力強化といった利益が期待されます。一方で、インターンシップ管理に必要な教員および職員の負担増加、教員の評価や研究への機会費用、法的責任や管理コストの増加といった課題に直面しています。

雇用主にとっては、比較的低コストでの労働力確保、採用リスクの低減、企業内での将来の人材育成、インターン生の新鮮な視点やアイデアの取り入れといった利益があります。しかし同時に、インターンの管理やトレーニングに伴う時間的・人的コスト、インターンに対する期待値調整の困難さ、労働基準法や差別問題への対応といった法的リスクという課題も抱えています。

この研究が提示するインターンシップ成功のための要因は具体的です。学生側では、積極的な姿勢での学習意欲の発揮、目的意識を持ったフィードバック要求、組織文化への理解と適応が求められます。教育機関側では、教育目標の設定、学校と雇用主間の継続的なコミュニケーション、正確な記録管理および法的責任の明確化が必要です。そして雇用主側では、インターン業務の計画と期待値の設定、メンター役割を担う監督者の指名および育成、インターンへの定期的なフィードバックと評価、就職機会の有無の伝達が成功の鍵となります。

無給のインターンシップは職務設計が弱く満足度も低い

インターンシップの価値を考える上で避けて通れないのが、報酬の有無による経験の違いです。アメリカの研究チームが有給と無給のインターンシップの違いについて理論的に検討した研究は、この問題に光を当てています[2]

アメリカでは有給インターンとほぼ同数の無給インターンが存在しているにもかかわらず、これらの仕事経験や成果の違いについて理論的・実証的な比較研究が不足していました。企業や非営利組織がコスト削減のために無給インターンを増やす動きが強まっている一方で、無給インターンの中には職場での経験に不満を抱き、「搾取されている」と感じる者も増えている現状があります。

この研究では、職務特性モデルとボランティア活動の理論を組み合わせて、三つの主要な概念について分析を行いました。第一に仕事構造について、タスク特性(仕事の自律性、タスクの多様性、タスクの重要性、フィードバックなど)、知識特性(仕事の複雑さ、情報処理能力、問題解決能力、スキルの多様性、専門性など)、社会的特性(職場での社会的サポート、他者との相互依存性、職場外との交流、フィードバックなど)の三つの側面から検討しています。

第二にインターンシップの満足度について、仕事の設計が適切であるほど満足度が向上するという理論的関係を検証しています。第三に職業的自己概念について、自分の職業的能力や興味、価値観などに関する明確さと確信度がインターン経験によってどのように形成されるかを調べています。

研究が提示した仮説は明確であり、無給インターンは有給インターンに比べて仕事構造が弱く、満足度も低く、職業的自己概念の形成も弱いというものです。そして、これらの関係は仕事特性によって媒介される、すなわち、仕事の設計の質が媒介要因として機能するとしています。

ボランティア活動に関する理論を援用すると、無給労働者は「組織の周縁」に位置し、仕事の構造化が曖昧になる傾向があることが指摘されています。この視点を取り入れることで、無給インターンが有給インターンに比べて仕事設計の水準が低くなる理由を説明することができます。

無給インターンが直面する構造的な問題は複数あります。企業側が無給インターンに対してコミットメントを感じにくく、体系的な業務設計や指導に十分なリソースを割かない可能性があります。無給インターンの場合、企業内での位置づけが曖昧になりがちで、明確な責任範囲や権限が設定されないことが多く、また、無給であることで、インターン自身も自分の立場を理解しにくく、適切な期待を形成することが困難になります。

一方で、有給インターンの場合は、企業側が明確な成果を期待し、そのために体系的な業務設計を行う動機が高まります。給与が支払われることで、インターンに対する責任も明確になり、適切な指導やフィードバックを提供するインセンティブが生まれます。インターン自身も職業人としての意識を持ちやすく、積極的に学習に取り組む可能性が高くなります。

実務的な観点から見ると、この研究は組織に対して示唆を提供しています。無給インターンシップであっても、仕事を明確に設計することでインターンの満足度と職業的成長を高めることができるということです。コストを削減したいからといって業務設計を疎かにすれば、結果的にインターンの経験の質が下がり、企業にとっても期待した成果を得られない可能性があります。

インターンシップの成功には学生の主体性が重要

インターンシップの効果を左右する要因として、学生自身の関わり方の重要性を明らかにした研究があります[3]。この研究は、インターンシップを「組織間の知識移転プロセス」として捉える視点を提示し、学生、大学、企業の三者間の相互作用として体系的にモデル化しました。

これまでのインターンシップ研究は主に記述的・逸話的であり、包括的な理論的枠組みが不足していました。そこで研究者たちは、ビジネススクールと企業間のインターンシップが一般に「win-win」の状況とみなされているものの、実際にはその効果を裏付ける実証的根拠が不足していることを指摘し、参加する三者の役割を体系的に理解する必要性を提起しました。

提案されたモデルでは、インターンシップを三つの段階に分けて分析しています。第一段階は先行要因で、インターンシップ開始前の条件や準備状況を示します。企業側の準備として、大学への理解、企業内のリソースや体制、プロジェクトの定義と学生とのマッチングがあります。大学側の準備として、企業との関係性、プログラム設計、教員の関与があります。そして学生の準備状況として、学術的な準備とプロジェクト選定への関与が挙げられています。

第二段階はプロセスで、実際のインターンシップ実施期間における相互作用を扱います。ここには企業と大学のコミュニケーションと関係構築、学生へのサポートやフィードバック、学生自身のインターンシップへのコミットメントと学習動機が含まれます。

第三段階は成果で、インターンシップ終了後に得られる結果です。企業にとってはプロジェクトの達成、アイデアの獲得、採用可能性があります。学生にとってはスキル獲得、キャリアの明確化と向上、満足度があります。大学にとっては学生満足度、企業との関係強化、評価向上があります。

この研究では、ポルトガルのある大学で実施されたインターンシップのデータを用いて分析を行いました。130人の学生を対象とし、65人から回答を得て分析しました。その結果、プロジェクトの認識度が、プロジェクトが企業で実行される可能性を高める要因であることが分かりました。これは、学生がプロジェクトの内容や意義を理解し、主体的に取り組むことの大切さを示唆しています。

教員の指導者としての機能と学生自身の積極性が、インターンシップの学生満足度に強く関係していることも明らかになりました。企業に学生を送り込むだけでは十分ではなく、大学側の適切な指導と学生の主体的な姿勢の両方が必要であることが分かります。

インターンシップのプロジェクトが明確に定義されていることが学生の満足度を高める要因であることも確認されました。曖昧な業務設定では学生の主体性を発揮する機会が限られてしまうため、きちんとしたプロジェクト設計が前提となります。

企業の規模はインターンシップの効果に関係しないことが示されました。大企業だから必ずしも良いインターンシップが提供されるわけではなく、むしろプロジェクトの質や指導体制の方が重要であることが示唆されています。

インターンシップは学部の評判と授業を向上させる

インターンシップの価値は学生や企業だけでなく、教育機関自体にも及びます。マーケティング学部を対象とした研究では、インターンシップが大学の学部・学科にもたらす利益について調査が行われました[4]

これまでの研究では、インターンシップが学生および雇用主にもたらす利益については広く研究されてきましたが、大学のマーケティング学部自体がどのような恩恵を受けているかについては実証的証拠が不足していました。そこで研究者たちは、マーケティング学部・学科がインターンシップから得られる利益を体系的に探求することにしました。

研究では、アメリカにあるビジネススクール619校を対象にオンライン調査を実施し、180校から回答を得ました。このうちマーケティング学部があるのは161校でした。

教育面への利益について調査した結果、教授陣の知識増加については明確な結果が出ませんでしたが、授業中のディスカッションが豊かになることに関しては、多くの回答者が肯定的な関係を認めていました。インターン経験により学生が実社会との結びつきを理解し、積極的に授業に参加することが指摘されています。

学生がインターンシップで得た経験を授業に持ち込むことで、理論的な内容がより具体的で実感を伴ったものとして理解されるようになります。学生の実体験に基づく質問や議論により、授業がより活発で深みのあるものになる効果があります。

研究活動への利益については、インターンシップが教授陣の研究機会の増加や新しい研究アイデアの提供につながるかどうかを調べたところ、ほぼ利益が認められませんでした。インターンシップの主な価値が教育面にあり、研究活動への直接的な貢献は限定的であることを意味しています。

コンサルティング活動への利益についても、教授陣がインターンシップを通じてコンサルティング活動を増やすという動きは弱く、大多数がその関係を認識していませんでした。インターンシップが主に学生の学習経験に焦点を当てており、教員の外部活動への展開は副次的な効果にとどまることを示唆しています。

財務的利益については、奨学金、助成金、寄付などの資金調達にインターンシップが直接寄与することは少ないことが分かりました。ただし、一部の学科ではインターンシップを通じて何らかの財政支援を得ているとの指摘もありました。

学生の就職状況への関係では、インターンシップ経験者は就職時期が早まり、初任給が高く、より良い組織に採用され、良いポジションを得る傾向があることが支持されました。インターンシップが学生のキャリア形成に効果をもたらすことを示しており、学部にとっても就職実績の向上という形で利益となります。

学部・学科の評判については、インターンシップが学生募集や学部の評判向上に対してプラスの影響を与えることが示されました。一方で、教員の採用活動には関係が見られませんでした。インターンシップは主に学生や保護者、そして企業からの評価向上に寄与する一方で、学術界内部での評価にはそれほど関係しないようです。

脚注

[1] Maertz, C. P. Jr., Stoeberl, P. A., and Marks, J. (2014). Building successful internships: Lessons from the research for interns, schools, and employers. Career Development International, 19(1), 123-142.

[2] Rogers, S. E., Miller, C. D., Flinchbaugh, C., Giddarie, M., and Barker, B. (2019). All internships are not created equal: Job design, satisfaction, and vocational development in paid and unpaid internships. Human Resource Management Review, 100723.

[3] Narayanan, V. K., Olk, P. M., and Fukami, C. V. (2010). Determinants of internship effectiveness: An exploratory model. Academy of Management Learning & Education, 9(1), 61-80.

[4] Weible, R., and McClure, R. (2011). An exploration of the benefits of student internships to marketing departments. Marketing Education Review, 21(3), 221-232.


執筆者

伊達 洋駆 株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。著書に『60分でわかる!心理的安全性 超入門』(技術評論社)や『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)、『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)などがある。2022年に「日本の人事部 HRアワード2022」書籍部門 最優秀賞を受賞。東京大学大学院情報学環 特任研究員を兼務。

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