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コラム

ちょっと一息:効果的な休憩のとり方

コラム

従業員のウェルビーイングは重要な課題です。仕事のストレスや過度な労働は、身体的・精神的な健康問題を引き起こし、生産性の低下を招きます。そのため、企業は従業員の健康管理に力を入れ始めています。

そのような中で、短時間の休憩である「マイクロブレイク」が注目されています。マイクロブレイクとは、仕事の合間に取る10分未満の短い休憩のことで、ストレッチや散歩、同僚とのおしゃべりなどが含まれます。

本コラムでは、マイクロブレイクが従業員の健康やパフォーマンスに与える影響を、研究知見に基づいて紹介します。

体を動かすことは健康に良い

まず、デスクワークが中心のオフィスワーカーの身体的・精神的健康に対する体を動かすマイクロブレイクの効果を調べた研究を見てみましょう[1]

研究チームは幅広い分野のデータベースを使って文献を探し、6つの比較試験(合計232人の参加者)を考察しました。参加者は主に座り仕事をしている18歳以上の男女で、平均年齢は27.2歳でした。

その結果、30分ごとに23分の軽い運動を行うマイクロブレイクが、仕事の生産性に悪影響を与えずに、身体的・精神的な健康にプラスの効果をもたらす可能性があることがわかりました。

具体的には、肩こりや身体的な疲れの軽減、認知機能と精神的健康の改善、食後の血糖値の改善と心臓病のリスク軽減などが確認されました。そして、生産性を下げることなく、ミスを減らせる可能性もありました。

この研究は、デスクワークが主な仕事において、アクティブなマイクロブレイクが従業員の健康管理に役立つ可能性を示しています。短時間の運動を取り入れるだけで、長時間の座り仕事による健康リスクを軽減できるかもしれません。そのような取り組みが仕事のパフォーマンスを損なわずに実施できる点も注目に値します。

企業は、従業員の健康管理のための方策を探っています。この研究は、その一つの選択肢としてアクティブなマイクロブレイクを提示しています。職場で簡単に実施できる運動プログラムを導入することで、従業員の身体的・精神的な健康を促進できる可能性があります。

ストレス解消に効果あり

続いて、マイクロブレイクが従業員の仕事上の幸福感にどう影響するかを調べた研究に注目します[2]。研究チームは日記式の調査を使い、何日かの仕事の中で、従業員のエネルギー管理の方法と幸福感を評価しました。

マイクロブレイクは疲れを減らし、活力を増やすことがわかりました。これは、企業がマイクロブレイクを推奨することの重要性を裏付けるものです。

特に幸福感と強く関係したマイクロブレイクには、運動する、水を飲む、同僚と交流する、仕事の意義を考える、などがありました。これらのマイクロブレイクは、身体的、精神的、社会的なエネルギーを回復・強化することで、従業員の幸福感を高めると考えられます。

企業は、従業員のウェルビーイングを高めるための施策を模索しています。この研究は、マイクロブレイクが従業員のウェルビーイングにもたらす恩恵を明らかにしています。仕事のストレスや疲れは、短い休憩を取ることで軽減できます。また、運動や水分補給、交流など、特定の活動が幸福感と密接に関わっています。

仕事の合間に短い休憩を取ることを奨励し、特に運動や交流などの活動を促進することで、従業員の幸福感を高められるかもしれません。

仕事の成果は向上しない?

マイクロブレイクが幸福感と仕事の成果にどのような影響を与えるか、効果的な条件や対象者を特定することを目指した論文があります[3]。研究チームは体系的なレビューとメタ分析を行い、22の独立した研究(合計2335人の参加者)を検討しました。

マイクロブレイクは活力の増加と疲れの減少に統計的に意味のある効果があることがわかりました。一方で、全体的な仕事の成果への効果は認められませんでした。

ただし、簡単な作業に対しては効果がある可能性が示唆されました。また、休憩が長いほど成果の向上が大きくなる傾向もありました。

この研究は、現代の「常にオン」の文化や長時間労働による従業員のエネルギー不足に対して、マイクロブレイクが幸福感の向上に役立つ可能性を示しています。しかし、仕事の成果への影響は限定的で、休憩の長さや作業の種類によって効果が変わることも見えてきました。

難しい作業では、マイクロブレイクによる中断が思考の流れを妨げ、成果を下げるかもしれません。一方、簡単な作業では、マイクロブレイクによる休憩が新しいエネルギーを与える可能性があります。また、休憩が長いほど、十分な回復とエネルギーの再充電ができるのかもしれません。

マイクロブレイクを導入する際は、作業の性質や適切な休憩時間を考慮する必要があります。また、仕事の成果を直接的に向上させるためには、マイクロブレイクと並行して他の施策も検討する必要があると言えます。

日中のエネルギー回復に役立つ

従業員のセルフコントロールとマイクロブレイクの関係が検討されています[4]。研究チームは、フルタイムの従業員を対象に10日間のオンライン調査を行い、睡眠の質、朝の疲れ、マイクロブレイク、仕事への取り組み、仕事終了時の疲れなどを評価してもらいました。

主な結果として、睡眠の質が悪いほど朝の疲れが高く、その結果マイクロブレイクを頻繁に取ることが分かりました。また、マイクロブレイクは仕事への取り組みを高め、仕事終了時の疲れを減らしました。

さらに、健康的な職場環境は、朝の疲れとマイクロブレイクの関係を調整し、マイクロブレイクの自主性がその調整効果を媒介することが明らかになりました。

セルフコントロール理論では、人は努力を要する作業をするためにエネルギーを使います。睡眠の質が悪いと、朝の疲れが高くなり、エネルギーが不足します。そのため、人はエネルギーを回復するためにマイクロブレイクを頻繁に取ろうとするのです。

マイクロブレイクを取ることで、従業員は一時的にエネルギーを回復し、仕事に集中しやすくなります。仕事への取り組みが高まり、仕事終了時の疲れが減ります。また、健康的な職場環境では、従業員は自由にマイクロブレイクを取れるため、朝の疲れが高くてもマイクロブレイクを取りやすくなり、疲れの軽減につながります。

この研究は、マイクロブレイクが従業員のエネルギー管理に果たす重要な役割を浮き彫りにしました。睡眠不足による疲れは、日中のマイクロブレイクによって軽減され、仕事へのモチベーションが維持されるのです。

マイクロブレイクの種類で効果が違う

別の研究では、職場でのマイクロブレイクが仕事のストレスからの回復にどう役立つかを探っています[5]。研究チームは韓国のフルタイムのオフィスワーカーを対象に、10日間連続で毎日の調査を行い、仕事のストレス、マイクロブレイク、ネガティブ感情などを報告してもらいました。

リラックスと交流のマイクロブレイクは、仕事のストレスが終業時のネガティブ感情に与える影響を軽減することがわかりました。一方、食事や飲み物を取る活動は直接的な調整効果はなかったものの、カフェインを含む飲料の摂取は仕事のストレスとネガティブ感情の関係を和らげました。

興味深いことに、読書などの認知的な活動は予想に反して、仕事のストレスがネガティブ感情に与える影響をむしろ悪化させました。

この研究は、日常的なマイクロブレイクが仕事のストレスからの回復にどのように影響するかを実証的に示した点で意義があります。特に、リラックスや交流の効果と、認知的活動の逆効果は注目に値します。また、カフェイン摂取の影響も興味深い発見です。

仕事のストレスが高い日は、終業時のネガティブ感情も高くなりがちですが、その日の午後にリラックスや交流を行うことで、仕事のストレスがネガティブ感情に与える影響が弱まります。心と体のエネルギーを回復させ、仕事のストレスに対処する力を与えるためだと考えられます。

一方、読書やネットショッピングなどの認知的なマイクロブレイクは、仕事のストレスが高い日のネガティブ感情を悪化させました。認知的な活動が仕事と同じ認知的エネルギーを消費するため、休憩の効果が得られず、かえってストレスを増大させてしまうのかもしれません。

マイクロブレイクの効果は、活動の種類によって大きく異なります。従業員のストレス管理においては、リラックスや交流などの活動を優先することが有効であると言えます。認知的な活動はかえってストレスを悪化させる可能性があるため、注意が必要です。

マイクロブレイクを促すために

マイクロブレイクの研究に基づいて、組織がマイクロブレイクを効果的に促す方法を考えてみましょう。

初めに、マイクロブレイクの頻度と種類を明確化すると良さそうです。例えば、30分ごとに23分の軽い運動をすることが良いという結果がありました。一つの目安になるかもしれません。

組織はスケジュール管理アプリやリマインダーを使い、定期的に休憩を取るように促す仕組みを作るのも一策です。推奨される活動としては、ストレッチや軽い運動、水分補給、同僚との会話、深呼吸や瞑想などの方法があります。

マイクロブレイクを取りやすい環境を整えることが必要です。リラックスや軽い運動ができる専用の休憩スペースを設けたり、簡単に使えるエクササイズ器具を用意したりすると良いでしょう。

また、従業員が自分のペースで休憩できるようにすることも大切です。こうした健康的な職場環境があると、従業員は休憩を取りやすくなります。

マイクロブレイクを企業文化の一部にするために、管理職が自らマイクロブレイクを実践し、従業員に勧めましょう。休憩を取ることが普通であるという雰囲気を作ることが求められます。

マイクロブレイクの注意点を整理

最後に、マイクロブレイクを導入する際の注意点を挙げておきます。まず、特に集中力が必要な仕事では、頻繁なマイクロブレイクが作業の流れを断ち切り、効率を下げる可能性があります。

休憩の内容によって効果が異なり、例えば読書やネットサーフィンといった認知的活動は、逆にストレスを増すことがあります。適切な種類の活動を選ぶことが大切です。

また、マイクロブレイクが短すぎると十分なリフレッシュ効果が得られません。かといって、長すぎると生産性に悪影響を与える可能性があります。休憩時間のバランスを見つけなければなりません。

マイクロブレイクが幸福感や疲れの軽減には効果的である一方で、仕事の成果には直接的な効果が限定的であることも分かっています。その意味で、マイクロブレイクにあまり大きな期待を寄せすぎないのも大事でしょう。

脚注

[1] Radwan, A., Barnes, L., DeResh, R., Englund, C., and Gribanoff, S. (2022). Effects of active microbreaks on the physical and mental well-being of office workers: A systematic review. Cogent Engineering, 9(1), 2026206.

[2] Zacher, H., Brailsford, H. A., and Parker, S. L. (2014). Micro-breaks matter: A diary study on the effects of energy management strategies on occupational well-being. Journal of Vocational Behavior, 85(3), 287-297.

[3] Albulescu, P., Macsinga, I., Rusu, A., Sulea, C., Bodnaru, A., & Tulbure, B. T. (2022). ” Give me a break!” A systematic review and meta-analysis on the efficacy of micro-breaks for increasing well-being and performance. PloS one, 17(8), e0272460.

[4] Kim, S., Cho, S., and Park, Y. (2022). Daily microbreaks in a self-regulatory resources lens: Perceived health climate as a contextual moderator via microbreak autonomy. Journal of Applied Psychology, 107(1), 60-77.

[5] Kim, S., Park, Y., and Niu, Q. (2017). Micro‐break activities at work to recover from daily work demands. Journal of Organizational Behavior, 38(1), 28-44.


執筆者

伊達 洋駆 株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。著書に『60分でわかる!心理的安全性 超入門』(技術評論社)や『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)、『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)などがある。2022年に「日本の人事部 HRアワード2022」書籍部門 最優秀賞を受賞。

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