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コラム

求職者の心をとらえる:自社に魅力を感じてもらう方法

コラム

企業の採用活動において、求職者の自社に対する魅力をいかに高めるかは重要な関心事の一つです。求職者の組織魅力度は、優秀な人材を引きつけ、採用上の成功を促す要因だからです。

では、求職者の組織に対する魅力は、何によって左右されるのでしょうか。学術研究では、組織の特性や採用プロセスの要因など、様々な観点から検討がなされてきました。本コラムでは、それらの研究知見を整理し、求職者の組織魅力度に影響を与える要因を考察します。

組織の魅力は何から成り立っているのか

組織の魅力とは何でしょうか。就職活動の際に感じる組織の魅力をどのように測定するかを検討した研究をもとに考えてみましょう[1]

研究では、大学生305名に対して、有名企業5社のうち1社の採用情報をランダムに割り当て、質問項目に回答してもらいました。分析の結果、組織の魅力は、企業の魅力、企業に対する意図、企業の威信という3つの要素に分けられることがわかりました。

1つ目の「企業の魅力」とは、就職先の候補となる特定の企業に対して、個人が抱く考えのことです。具体的には「この会社で働きたい」といったことを意味します。

2つ目の「企業に対する意図」とは、企業に積極的に近づこうとする意思のことです。「この会社からオファーがあれば、応募したい」などの状態です。ここでの「近づく」とは、特定の企業に応募したり、面接を受けたりするなど、その企業に就職しようと積極的に行動することを指します。

3つ目の「企業の威信」とは、その企業の特徴が良いものだと見なされるか、悪いものだと見なされるかについて、社会的に共通した見方があるかどうかの度合いです。「この会社は優れた働き先だと評判」といった状態です。

企業の魅力と威信が就職活動に与える影響は、意図を介していることがわかりました。企業の魅力(個人的な好意)と威信(社会的な評価)は、直接的に就職活動に影響するのではなく、まず企業に対する意図(その企業に就職しようとする意思)に影響を与え、その意図が高まることで実際の就職活動(応募や面接など)が促進されるのです。

親しみのある組織に魅力を感じる

続いて、大学キャンパスにおける企業の採用活動が、将来の候補者となる学生の組織への魅力にどのように影響するかを見ていきましょう。採用活動が組織の特徴の認識に影響し、それを通じて組織の魅力に影響をもたらすかを検証した研究があります[2]

研究では、米国の9つの大学の学生と、同じ学部の教員およびキャリアセンターの職員を対象に、アンケート調査を行っています。

アンケートにおいては、組織の特徴(企業イメージ、報酬と雇用の安定、やりがいのある仕事)、採用活動(採用資料、採用プロセス)、企業に対する全体的な親しみ、企業への魅力について尋ねたところ、次の3点がわかりました。

  • 採用活動は、組織の特徴の認識に影響を与えることで、企業の魅力に影響を与える
  • 企業への親しみは企業への魅力と正の関係にある。また、親しみは組織の特徴の認識に影響を与え、それを通じて企業の魅力に影響を与える
  • 大学関係者の企業に対する認識は、学生の企業への魅力と関連している

採用活動や企業への親しみ、社会的背景といった要因が、将来の候補者となる学生の企業への魅力に関連しているのです。特に興味深いのは、企業への親しみの役割です。親しみが高いほど、その企業の特徴を肯定的に評価し、結果としてその企業を魅力的だと感じる傾向があります。

これは心理学で知られる「単純接触効果」と一致する結果です。単純接触効果とは、人や物、刺激などに繰り返し接触すると、それらに対する好感度が上がる現象です。

企業への親しみが高いということは、その企業について多くの情報を持っていたり、接触する機会が多かったりすることを意味します。親しみがあることで、その企業に対する好感度が上昇し、結果として企業の魅力度が高まると考えられます。

また、大学関係者の企業に対する認識が学生の企業への魅力と関連するという結果は、学生が企業を評価する際に、大学関係者からの情報を得ていることを示唆しています。学生は社会的なつながりを通じて企業について学び、印象を形成しています。

情報が少ないと印象に左右される

採用プロセスにおいて、求職者が得られる情報は限られています。そのような状況の中で、求職者はどのように企業を評価しているのでしょうか。採用メッセージの具体性が求職者の組織に対する魅力にどのように影響するかを調べた研究を取り上げます[3]

研究では、171人の大学生の求職者を対象に実験を行いました。被験者を、一般的な採用情報を与えられるグループと、具体的な採用情報を与えられるグループに分け、それぞれ企業の魅力度などを評価してもらいました。

分析の結果、次の2点が明らかになりました。

  • 詳しい採用メッセージは、組織の特徴と自分との適合性の認識を高める。具体的な情報(給与、福利厚生、勤務地、キャリア機会など)を提供することで、求職者はその組織の特徴をより明確に理解し、自分との適合性も判断しやすくなる
  • 適合性の認識は、メッセージの具体性と組織への応募意欲との関係を媒介する。採用メッセージが具体的であると、求職者は自分とその組織が適合しているかをより明確に認識でき、適合性が高いと感じれば応募意欲が高まる

また、明確な採用情報がある場合、組織の特徴と適合性の認識が応募意欲に影響することが示されました。一方、採用情報があいまいである場合は、魅力と適合性の認識が応募意欲に影響していました。

これらの結果は、精緻化見込みモデルに基づいて解釈できます。精緻化見込みモデルでは、情報処理には中心ルート(情報の内容そのものを吟味する)と周辺ルート(情報以外の手がかりに頼る)の2つがあるとされます。具体的な採用情報は中心ルートを通じて求職者の反応に影響し、あいまいな採用情報は周辺ルートを通じて影響すると考えられます。

採用担当者の親しみやすさが重要

ここまで、組織の特徴や採用プロセスの要因が求職者の組織への魅力に与える影響を見てきました。しかし、求職者の組織魅力度を左右するのは、組織要因だけではありません。採用面接における採用担当者の親しみやすさが、求職者の仕事への魅力にどのように影響するかが検討されています[4]

171人の大学生を対象に、2グループに分けて実験を行いました。被験者には、会社と仕事の説明が書かれた説明書が配られ、採用担当者の親しみやすさが異なる2種類のビデオ(「友好的」と「非友好的」)のいずれかを見てもらいました。

そして、ビデオを見ながら応募者の立場になったつもりで、仕事、会社、その会社からの内定に対する魅力を評価してもらいました。分析の結果、2つのことがわかりました。

  • 「友好的な」採用担当者のビデオを見た被験者は、「友好的でない」採用担当者を見た被験者よりも、明示されていない組織の特徴について有意に多くの肯定的な推測を行った
  • 採用担当者への肯定的な推測は、親しみやすさと魅力の関係を部分的に媒介していた

採用担当者が友好的であれば、被験者は採用担当者の行動を手がかりにして、その組織全体も友好的で従業員を大切にするなどの良い特徴を持っていると推測します。一方、非友好的な採用担当者の場合、被験者はその行動から組織全体についても否定的に推測しました。

特に興味深いのは、採用担当者の親しみやすさが、単に求職者の印象に影響するだけでなく、求職者が組織全体について推測する方法にも影響を与えることです。採用担当者が親しみやすい→求職者が組織の特徴を肯定的に推測する→仕事への魅力が高まるというプロセスが明らかになりました。

組織の評判を活かす採用担当者

採用担当者の役割の重要性は他の研究でも指摘されています。採用担当者の政治的スキルと組織の評判が、採用プロセスにおける求職者の組織への魅力にどのように関連するかを見ていきましょう[5]

大学生576名を対象に、採用担当者の政治的スキル(高/低)と組織の評判(高/低)を操作した条件にランダムに割り当てた研究があります。

そうしたところ、採用担当者の政治的スキルと組織の評判の交互作用が有意であることがわかりました。政治的スキルが高い採用担当者の場合、組織の評判が高まるほど求職者の組織への魅力が高まる一方、政治的スキルが低い場合はその効果が認められませんでした。

政治的スキルとは、「職場で他者を効果的に理解し、そのような知識を使って個人的・組織的目標を高めるような行動を他者に及ぼす能力」を指します。

政治的スキルの高い採用担当者は、組織の良い評判を上手に活用し、求職者に組織が自分に合っていると納得させる能力があるため、組織評判が高まるほど求職者の組織魅力度が高まったと解釈できます。

例えば、求職者との会話の中で組織の良い評判に関する情報を適切なタイミングで提供したり、組織の良い評判を求職者の価値観や目標と結びつけて説明したりすることで、求職者が組織に魅力を感じるよう導くことができます。

求職者に魅力を感じてもらうために

企業が応募者の組織への魅力を高めるために、どうすればよいのでしょうか。ここまで紹介した研究をもとに考えてみます。

まず、企業は求職者との接点を増やすことが求められます。企業説明会やインターンシップなど学生が企業について多くの情報を得られる機会を増やしたり、SNSやウェブサイトを活用して企業の魅力を発信したりすることによって、求職者が企業に親しみを持てるよう働きかけます。

採用プロセスにおける情報提供の方法を見直すのも有効です。求職者に提供する情報は、できる限り具体的なものにしましょう。求職者はその組織の特徴をより明確に理解し、自分との適合性を判断しやすくなります。

採用担当者の振る舞いにも気をつけると良いでしょう。採用面接では、求職者に対して親しみやすく友好的な態度で接します。笑顔で話しかけたり、リラックスした雰囲気づくりを心がけたりすることで、求職者は採用担当者の行動を手がかりに、その組織全体も友好的で従業員を大切にするだろうと考えます。

さらに、採用担当者の政治的スキルを高めましょう。政治的スキルの高い採用担当者は、組織の良い評判を上手に活用して求職者に組織の魅力をアピールすることができます。採用担当者に対して、求職者とのコミュニケーションスキル向上のための研修を行ったり、優れた採用担当者の事例を共有したりすることで、政治的スキルの底上げを図ります。

脚注

[1] Highhouse, S., Lievens, F., and Sinar, E. F. (2003). Measuring attraction to organizations. Educational and psychological Measurement, 63(6), 986-1001.

[2] Turban, D. B. (2001). Organizational attractiveness as an employer on college campuses: An examination of the applicant population. Journal of vocational behavior, 58(2), 293-312.

[3] Roberson, Q. M., Collins, C. J., and Oreg, S. (2005). The effects of recruitment message specificity on applicant attraction to organizations. Journal of Business and Psychology, 19, 319-339.

[4] Goltz, S. M., and Giannantonio, C. M. (1995). Recruiter friendliness and attraction to the job: The mediating role of inferences about the organization. Journal of Vocational Behavior, 46(1), 109-118.

[5] Lawong, D., Ferris, G. R., Hochwarter, W., & Maher, L. (2019). Recruiter political skill and organization reputation effects on job applicant attraction in the recruitment process: A multi-study investigation. Career Development International, 24(4), 278-296.


執筆者

伊達 洋駆 株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。著書に『60分でわかる!心理的安全性 超入門』(技術評論社)や『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)、『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)などがある。2022年に「日本の人事部 HRアワード2022」書籍部門 最優秀賞を受賞。

#伊達洋駆

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