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コラム

スキル開発の科学:リスキリングを有効に進めるために(セミナーレポート)

コラムセミナー・研修

ビジネスリサーチラボは、20233月にセミナー「スキル開発の科学:リスキリングを有効に進めるために」を開催しました。

昨今、「リスキリング」への注目が社会的に高まっています。しかし、個人のスキルは一朝一夕に高まるものではありません。スキル開発の支援として、どのような工夫があるでしょうか。

本セミナーでは、「熟達化」研究を切り口に、スキル開発の支援方法を考えました。熟達化は、スキルが高まるメカニズムや、その関連要因を明らかにする領域です。

まず、ビジネスリサーチラボ・フェローの黒住嶺から、熟達化の研究知見と、個人が実践できるリスキリングの工夫を紹介しました。その後、代表取締役・伊達洋駆が、リスキリングの実務上の難しさを踏まえつつ、組織としての支援の工夫を紹介しました。

※レポートはセミナーの内容を基に編集・再構成したものです。

登壇者

伊達洋駆:株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。近著に『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)や『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)など。

黒住 嶺:株式会社ビジネスリサーチラボ フェロー
学習院大学文学部卒業、学習院大学人文科学研究科修士課程修了。修士(心理学)。日常生活の素朴な疑問や誰しも経験しうる悩みを、学術的なアプローチで検証・解決することに関心があり、自身も幼少期から苦悩してきた先延ばしに関する研究を実施。教育機関やセミナーでの講師、ベンチャー企業でのインターンなどを通し、学術的な視点と現場や当事者の視点の行き来を志向・実践。その経験を活かし、多くの当事者との接点となりうる組織・人事の課題への実効的なアプローチを探求している。

 

リスキリングとは

伊達:

本日のセミナーのテーマは「リスキリング」です。リスキリングは、現在注目を集めているテーマです。本人にとって新しい領域のスキルを開発し、新しい仕事に取り組むところまで含んでいるのが、リスキリングの特徴です。

DX時代に突入する中で、失業が増える可能性があるため、新しいスキルを身につけるリスキリングが注目されています。ただし、リスキリングはDX人材に限定されるわけではありません。

日本では「学び直し」と呼ばれていましたが、最近では「リスキリング」という呼び方が定着しつつあります。「人材版伊藤レポート」でも、リスキリングが重要だと指摘されています。

熟達化から見たリスキリング

黒住:

まず入り口に、リスキリングという単語について見直してみたいと思います。改めてこの単語に関する説明をリサーチすると、「再学習」の要素については説明が充実しているように感じます。しかし、「スキリング」、つまりスキルそのものの説明が少ないように感じます。

これは、日本の風土と関係しているかもしれません。日本は新卒採用が多く、入社後にスキルを獲得することが一般的です。そのため、ジョブ型採用が一般的な海外と比べて、自分がどんなスキルを持っているのかを考える必要性が低いといえます。

しかし、DXという喫緊の課題により、リスキリングへの関心が高まったため、「どう進めればよいかわからない」という状況が起きているのだと考えられます。そこで、私のパートでは、スキルについて改めて深堀し、リスキリングの理解を深めます。

職場のスキルと熟達化

4つのスキル

黒住:

まず、職場におけるスキルについて深堀してみたいと思います。職場におけるスキルは、研究によって4つの種類に大別されています。

1つ目は、担当するタスクの専門知識や進め方に関する「テクニカルスキル」です。2つ目は、人との関係性に関する「ヒューマンスキル」です。これは、人付き合いに関する課題の解決力などが含まれます。3つ目は、自分自身を俯瞰し、自分のスキルを確認する力である「メタ認知スキル」です。4つ目は、「コンセプチュアルスキル」です。これは、上記3つのスキルを駆使することで、状況の分析や計画立案を行い、実行に移すスキルです。

リスキリングとは、新しい仕事に必要なスキルを開発することです。上記の枠組みを援用すると、例えば、DX人材になる際に重要視されるのはテクニカルスキルだと考えられます。あるいは、様々な仕事が自動化されるなかで、営業職への転属が求められる場合もあるかもしません。この場合、先方の要望を聞き取り、自社の都合と両立する業務などが想定され、重視されるのはヒューマンスキルでしょう。

つまり、まず仕事が先にあり、その仕事の達成に何らかの力が求められるということです。このことを踏まえてリスキリングを考え直すと、新しい仕事に何が求められているかを理解して、求められているスキルを開発していけば良いということになります。

熟達化の過程

黒住:

仕事をスキルの観点から考え直したうえで、より踏み込んだテーマが「熟達化」という研究です。熟達化とは、仕事などの長い経験を通して、スキルや知識を獲得し、高いレベルのパフォーマンスを発揮するまでの過程を指します。具体的には、スキル獲得を目指す人が経験する変化や、それを促進する要因が検討されてきました。

熟達化において、スキル開発には段階が想定されています。大まかに言うと、スキルを獲得し、それが洗練されていく過程が含まれています。

1つ目の「初心者」の段階は、新入社員のように、スキルに触れたばかりでまだ何もできない状態です。2つ目の「一人前」の段階は、毎年行われる定型的なタスクを、指導員なしでできる状態で、入社23年目の新人が該当するでしょう。このように、初心者から一人前になる過程を超えられると、スキルが獲得できたと考えられ、最初の目標を達成したといえます。

その先は、獲得したスキルを高め、洗練する段階になります。3つ目の「中堅者」という段階のポイントは、定型的なタスクだけでなく、抽象的なタスクでも自分で解決できる状態ということで、ベテラン社員やプレイングマネージャーが想定されます。そして、最終段階の「熟達者」は、精度の高い分析や予測を行い、誰も解決していない新しいタスクをこなせる状態です。起業家やゲームチェンジャー、高度なスキルを磨き上げた人物が該当します。

リスキリングで目指すスキルの段階を、熟達化の観点から考えると、まずは自分でタスクを整理し解決できる段階、つまり中堅者を目指すべきだといえます。これは、新しいスキルの獲得はもちろん必要ですが、ルーティンワークだけでは困るため、自己決定や状況判断ができる状態が望ましいということです。

また、企業側がリスキリングを社員に求める場合、新人を雇うよりもコストを削減するため、あるいは技術的失業の対策のためというケースが多いといわれています。つまり、熟達者として「輝かしい成果を示してほしい」というより、まずは「社内の仕事を的確にこなしてもらいたい」という状況にあると考えられるでしょう。

先ほど紹介した中堅者の特徴は、学んだ知識や経験を応用して、ある程度抽象度の高いタスクもこなせることでした。これは、研究の上で「適応的熟達」と呼ばれています。言い換えると、リスキリングで目指すべきポイントは適用的熟達に達することとなります。

スキル開発の工夫

黒住:

ここまで、スキルの本質やリスキリングで目指すべき段階について簡単に説明しました。次のパートでは、スキル開発の際にどのような工夫ができるのかをさらに掘り下げていきたいと思います。

具体的には、中堅者の特徴である適応的熟達がどのように促されているか、その影響指標についての研究知見を参考にすることで、スキル獲得や洗練を行う際に利用できる工夫が提案できます。そこで、誰にでもどんなスキルでも利用できる工夫として、私も実践している2つのポイントを提案します。

自分でマニュアルを作る

黒住:

1つ目の工夫は、自分でマニュアルを作ることです。具体的には、文字に起こして文章でまとめることです。私が実際に作成した、セミナーレポートのマニュアルを例に挙げてみます。

例えば、マニュアルの要素として「工程」「細かい作業」「注意点」などを設けています。「工程」の要素では、「内容の把握」「各段落の精査」といった、作業全体のステップを挙げています。そして「内容の把握」ステップに、「文字数をメモする」といった「細かい作業」や「時間をかけすぎないように注意」といった「注意点」を追加しています。このように、情報を区別し、読むだけで作業を再現できる内容を目指すことがポイントです。

自分でマニュアルを作成することのメリットは2つあります。1つ目は、早く覚えられることです。その理由は、文書でまとめるには、自分自身で整理する必要があり、逆にうまくまとめれない内容は自分の理解が不十分であることに気づくことができるためです。これは、研究で、メタ認知を発揮することと表現されています。

メタ認知を働かせると、学習の効率化につながります。例えば、自分が理解していない部分を把握できるので、その部分の解決策を見つけやすくなります。また、理解していない部分に重点的に時間を割くこともできます。このように学習が効率化されるので、早く覚えられるということです。

マニュアルを自作するメリットの2つ目は、思い出しやすくなることです。マニュアルを作成する際には、情報同士の関係性に注意する必要があります。このことが、研究でいうところの「体系化」や「精緻化」という情報処理と繋がっています。

再び先ほどのセミナーレポートのマニュアルを例にとると、要素を意識して情報の抽象度を整理したり、工程の順番を考えたりすることなどが、情報の体系化に当たります。また、大まかな工程に対して具体的で細かい作業の情報を紐づけることは、情報の精緻化と呼ばれます。

順序が整理されていれば次のステップを思い出しやすくなりますし、紐づけられた知識同士は一緒に思い出しやすいでしょう。このように、マニュアルの自作が、情報の整理を促すので、思い出しやすくなるのです。

経験を「活かそう」とする

黒住:

スキル獲得や洗練に役立つもう1つの工夫とは、経験を「活かそう」とすることです。具体的には、壁を乗り越えた経験を思い出すことです。たとえば、新入社員であれば学生時代に取り組んだテスト対策を、ベテラン社員であれば入社当初にどのような苦労を経験したかを思い出すといったことです。

さらに踏み込むと、その時に、どのように対処したかを振り返ることが重要です。分からないことをどのように調べたか、どんな練習をしたか、あるいは、気晴らしにどのようなことを行っていたかなど、壁を乗り越えるために使った方法を思い出すことがポイントです。

自分ではなく、他人の経験を活かすという意味で、人からアドバイスを受けることも有効でしょう。このとき、いわゆるスキルの高い人より、最近独り立ちしたような先輩にアドバイスを求めることが効果的です。ある作業を簡単にこなせる段階にある人は、その作業を特に意識せずとも実行できるようになっているので、逆に丁寧な説明が難しくなることがあります。そのため、最近まで手取り足取り指導を受けていた人の方が、自分の状況に近く、アドバイスが分かりやすく感じるかもしれないのです。

経験を生かそうとする工夫については、適応的熟達化の視点に関する2つの研究知見に基づいています。1つ目は、難しい課題が適応的熟達を促すという知見です。難しい課題に取り組むと、いわゆる失敗経験が増えます。これにより、課題への対処方法が増えていくので、パフォーマンスが向上すると考えられています。

2つ目の知見は、一見違う課題でも、その根本が共通している可能性が示されていることです。私個人の体験を例にすると、心理学の研究活動に、大学の体育会での経験を活かせたことがあります。具体的には、研究発表の場の緊張と、部活動の公式戦での緊張の原因が、どちらも「失敗したらどうしよう」と委縮していることだと気づいたのです。そこで、「今までやってきたことしかできない」と開き直る姿勢を持ったことで落ち着くことができました。

さらに、これらの知見に基づくアレンジもあります。まず、難しい課題に取り組むことが重要であるという知見を活かす工夫として、失敗したときの悪影響を減らせるように環境整備するという方法があります。社内での人事評価や対外的な会社の評価など、仕事では失敗することは難しい側面があります。そのため、「失敗を恐れず」ではなく「失敗してもよい」状況を整えることで、挑戦することを促すのです。

例えば、納期を調節できるかを確認します。もし変更が可能であれば、多少時間をかけても良いことになり、試行錯誤することができます。あるいは、こまめに上司からフィードバックを受けるという方法もあります。これにより、成果物に不安がある場合でも、納期直前になって大きな問題が発覚する事態を防げます。

課題には共通点があるという知見を活かす工夫として、思い出すことを習慣化するという方法があります。仕事では、現在のタスクや市場調査、関係者とのヒアリングなど、新しい情報を得ることに集中しがちです。それ自体は大事なことなのですが、思い出すことを習慣化できれば、過去の経験を活かし、効率的な方法を思いつく可能性も高まります。

例えば、新たにタスクを始める際に自作のマニュアル必ず読み返すことや、月に一度、他の人と協力して振り返りの機会を設けるといった例があります。このように、定期的に過去の経験を振り返る機会を設けることで、意図せずとも過去の経験を活かすことへ繋がっていくでしょう。

アンラーニングと向き合う

アンラーニングとは何か

伊達:

私のパートでは、リスキリングの難しさに触れたいと思います。具体的には、アンラーニングとモチベーションという二つの課題に注目します。

まずは、アンラーニングについてです。これは、「アン」と「ラーニング」という言葉が組み合わさった単語です。新たなものを獲得するために学習を棄却するというのが、アンラーニングが意味するところです。その対象には知識、行動、価値観などがあります。

リスキリングという新たなスキルを身につける過程で、場合によってはこれまで学んだことを部分的に棄却する必要があります。今まで学んできた知識、行動、価値観の全てが新しい文脈において適用できるわけではないからです。

例えば、BtoBの営業を行っていた人がデータ分析の領域へリスキリングするという仮想のケースを考えてみます。知識のアンラーニングという観点では、変数間の関連が因果関係を意味するという理解を棄却する必要があるかもしれません。

行動の観点では、データ分析の仕事を行う場合、打ち合わせの場で調整するよりも、事前に検討することが求められるかもしれません。打ち合わせの場で調整するという以前の行動を改める必要があります。価値観についても同様で、「まず行動する」という価値観から、「まず調査し考え分析する」という価値観が必要になるかもしれません。そうなると、前者を見直していく必要があります。

範囲を想定する

伊達:

リスキリングにはアンラーニングが必要になってくるのですが、簡単なことではありません。人は既存の学習内容を保持しようとするからです。では、どのようにしてアンラーニングを進めていくと良いかを考えます。

具体的には、アンラーニングの範囲を特定することが重要です。「全てを変えなければならない」となると大変ですが、機能していない知識、行動、価値観を特定し、棄却する範囲を特定するのです。

例えば、打ち合わせの実施方法に問題があるとします。今までの打ち合わせの方法でうまくいかないなら、「その方法を棄却し、新しい方法を身につける必要がある」というように、打ち合わせの方法だけに焦点を当てることができます。

変えるべき部分を特定するためにどのようにすればよいのでしょうか。大きく二つの方法があります。一つ目はリフレクションです。普段の仕事ぶりを振り返る機会を設け、その際に、過去の経験のうち通用しない部分を特定します。もう一つは、フィードバックです。周囲に助言を求めることも大事です。自ら助言を求めることによって、棄却すべき範囲を特定できます。

感情に配慮する

伊達:

アンラーニングの進め方が分かったとしても、まだ難しい点があります。感情が関与してくる点です。今まで学んだことを見直そうとする際に、混乱や不安を感じます。

感情の影響に対して、本人にできる対策は、自分の感情と向き合うことです。まず、自分がどのような感情を抱いているのかを考えます。たとえ悲しみや不安を感じているとしても、そんな自分を「情けない」「非合理的だ」などと否定しないようにします。また、その感情がどこから来ているかを考えましょう。

さらに、周囲の人にできる対策は、リスキリングをしようとする人の過去に敬意を払うことです。古いものが全て悪ではありませんし、周囲が今までの学びを否定するような態度をとると、アンラーニングはうまく進みません。

モチベーションと向き合う

モチベーションの種類

伊達:

リスキリングの難しさを考える二つ目の視点は、モチベーションです。前提として、リスキリングは基本的に、企業主導で進めることが想定されています。そのため、社員から見ると、企業からの指示、つまり、スキル開発の機会が外から与えられる状況になりがちです。このことが、モチベーションに影を落とします。

人のモチベーションは、大きく分けて2種類あります。一つは自律的動機と呼ばれ、内発的なモチベーションです。もう一つは統制的動機と呼ばれ、報酬や罰など外部からの働きかけによって動くものです。企業主導でリスキリングを進める場合、社員は統制的動機によって動きやすいといえます。

統制的動機には、難しい問題が伴います。例えば、バーンアウトしやすいことが研究で示されています。つまり、企業主導でリスキリングを強力に進めると、社員が燃え尽きる可能性があります。

もう一つの問題として、統制的動機が高いと周囲への知識共有が行われないという研究結果があります。周囲への知識共有が行われないと、リスキリングを行う過程で学び合いが生じず、それぞれの学びが孤立します。

逆に、自律的動機が高い場合は、情緒的な消耗が少ないことが分かっています。さらに、自律的動機が高いほど、企業への愛着を持って働くこともわかっています。これにより、リスキリングに取り組んでも、企業から離れようとする力を抑制できます。自律的動機に基づくリスキリングを考慮することが望ましいのです。

自律的動機に注目する

伊達:

リスキリングにおけるモチベーションの問題にどう対応すればよいのでしょうか。まず、統制的動機と自律的動機を使い分けられる可能性を提案します。統制的動機が向く場面があれば、自律的動機に向く場面もあるのです。

統制的動機が向くのは、単純な課題に取り組む場面や、量を増やす必要がある場面です。リスキリングの文脈で言えば、初期段階は、外部からの働きかけによって進めることが効果的かもしれません。

一方、自律的動機が向くのは、複雑な課題や質を向上させることが求められている場面です。リスキリングのレベルが上がるにつれて、自律的動機を活用するようにシフトしていく必要があります。

続いて、自律的動機に基づくリスキリングを進める方法を考えてみましょう。重要な役割を果たすのは、上司です。仕事を大胆に任せたり、マイクロマネジメントをやめて指示をできるだけ減らしたりすることで、自律的な動機を促すことができます。最初は細かく指示を出しても、次第に任せるようにしていきましょう。

目標設定も重要です。自分がなりたい姿を描いてリスキリングを行うと、自律的動機が促されます。ただし、企業側が勝手に目標を描いてリスキリングを進めると、統制的動機に基づくリスキリングになるので注意したいところです。社員自らが「なりたい姿」を描く支援を行わなければ、リスキリングが頓挫するかもしれません。

Q&A

Q:シニア人材の活用の難しさはアンラーニングと感情の問題と捉えられるか。

伊達:

シニア人材は多くの経験を持っています。しかし、過去のすべての知識や経験を活用できるわけではないため、知識や経験が豊富であるほど、棄却すべき点も多くなり、また強固なものを棄却しなければならなくなることもあります。ただ、本人も周囲も「自分はダメだ」「過去の経験は全く価値がない」などと、過去を否定するのではなく、過去の経験から、価値あるものを一緒に見つけ出していきましょう。

Q:アップスキリングに関する課題と対策もあれば教えてほしい

伊達:

成長履歴を可視化することが必要です。一方で、現状だけを見ても意欲を高めにくいものです。未来の姿を構想し、現状とのギャップを可視化しましょう。ギャップを埋めるために動こうという気持ちが生まれ、学習のモチベーションも高まりやすくなります。

自分がなりたい人材と現状のギャップを埋める際には自律的動機が、会社が求める人材と現状のギャップを埋める際には統制的動機が働きやすくなります。うまくバランスを取りながら、アップスキリングに取り組んでいくと良いでしょう。

黒住:

この話に関わる研究として、変革型リーダーシップの効果が挙げられます。ビジョンを示すことで変化を促したり、新しい視点を提供したりするリーダーのもとでは、部下のリスキリングが進むという研究結果が出ています。ビジョンがあり、共に目指すことを示してくれるリーダーのもとで、自分の現状と目指すべき状態の良さや繋がりが見えることが重要だと思います。

現在持っているスキルを伸ばすこと。

終わりに

伊達:

時間が来ました。黒住さんから最後に一言お願いいたします。

黒住:

本日は、ありがとうございました。リスキリングというキーワードは、マクロなテーマですが、私たちの目的はミクロな視点から見ていくことでした。リスキリングは喫緊の課題であり、多くの人が苦労していると思います。今日の内容が皆さんのリスキリングに少しでも寄与できれば、大変嬉しいです。

伊達:

ご参加いただき、ありがとうございました。

 

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