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コラム

「サステナブル人事」入門:持続可能性を実現するための人事とは (セミナーレポート)

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持続可能性(サステナビリティ)は近年、注目を集めるキーワードの一つです。2015年に国連総会で採択されたSDGsを筆頭に、世界中で取り組みが進められる中、サステナビリティという概念がビジネスに与える影響も、日に日に強まっています。

そうした背景のもと、人事の世界における持続可能性、すなわち「サステナブル人事」という考え方が提唱され、2000年代より研究が積み重ねられています。

・サステナブル人事とは何か?
・サステナブル人事を進めるには何が必要か?
・サステナブル人事は社員や求職者にどのような影響を与えるか?

本セミナーではこうしたトピックを取り上げ、最新のエビデンスを踏まえた解説を行いました。講師を務めたのはビジネスリサーチラボ 代表取締役の伊達洋駆、コンサルティングフェローの神谷俊です。

※本レポートは、2022年6月13日に実施されたオンラインセミナー「『サステナブル人事』入門:持続可能性を実現するための人事とは」の内容を再構成したものです。

登壇者

神谷俊 株式会社ビジネスリサーチラボ コンサルティングフェロー
法政大学大学院経営学研究科博士前期課程修了、経営学修士。株式会社ビジネスリサーチラボにて調査・研究「アカデミックリサーチ」を推進する一方、多様な組織に在籍し、独自のキャリアを展開。自身では株式会社エスノグラファーを経営。また、2020年4月からは、リモート環境における「職場」の在り方を研究する“Virtual Workplace Lab.(バーチャルワークプレイスラボ)”を設立。学術的な知見を基盤に「分断・分散」を前提に機能する組織社会の在り方を構想する。著書に『遊ばせる技術 チームの成果をワンランク上げる仕組み』(日経新聞出版)。

伊達洋駆 株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。著書に『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)や『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)などがある。


 伊達:本日は、「持続可能性を実現するための人事とは」というテーマでお話します。最初に神谷さんが、その後に私が講演を行い、その後、質疑応答という流れで進めます。

「サステナビリティ」という言葉、耳にはするけれど人事領域の実務としてはイメージが湧かない方も多いかもしれません。サステナビリティについて、皆さんと考える時間になればいいかなと思います。

サステナビリティが注目されるまでの歴史

神谷:まずは、「サステナビリティ」の歴史を振り返ります。1970年代、ローマクラブというシンクタンクが「The Limits to Growth(成長の限界)」という報告書を提示したことから、サステナビリティの歴史は始まります。この報告書では、食料生産量や二酸化炭素排出量などを変数としてシミュレーションした結果、このままでは人類が21世紀後半には滅亡する可能性があると提示したのです。世界に衝撃が走りました。

この報告書が発表された1970年代は、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』が刊行された頃です。化学物質とか、石炭の使用量とか、公害とか、そういうものが問題だと騒がれ始めた時代です。ローマクラブはこれらの問題意識をより具体的なかたちで提示したのでした。

1980年代に、サステナビリティという概念が登場します。国連が発表したブルントラント報告書です。産業も自然資源も両方“持続可能な”ものにしていくためにどうすればいいか?といった現実的な視点で未来に向けた問いかけがされます。

1990年代には、エルキントンという起業家がトリプルボトムラインという概念を出します。ボトムラインとはP/L、つまり損益計算書の一番下の欄です。企業は損益を自社だけにとどめるべきではなく、環境や社会のことも考えて、企業活動を進めなければいけない、だから複数のP/Lを考えましょう。といった概要です。持続可能な開発について、さらに具体化する概念が登場してくるようになりました。

2000年代に入ると、さらに具体性が増します。MDGsと呼ばれるアクションプランが提示され、2000年から2015年までに8つの目標を設けて、アプローチしていこうというアイデアが共有されました。ただし、対象を途上国に限定したものであり、しかも国連の専門家チームがまとめて報告したものだったので各国のコミットメントも限られていました。

そしてMDGsが完了した2015年、後継モデルとしてSDGsが提唱されました。これはMDGsとは本気度がまるで違います。目標の数がMDGs8個に対して17個まで増え、しかも詳細なアクションとしては169個提示されているという、極めて具体的なプランがまとめあげられました。これが昨今注目されているSDGsです。

SDGsは途上国だけではなく、国連加盟国全てに取り組みが求められています。2019年にはグテーレス国連事務総長が「SDGsの達成に向けて、2030年までは行動の10年にしていきましょう」と言及しています。

歴史の流れにも表れているように、「サステナブル」の重要性は年々高まってきています。そして、今後もより重視されるようになるでしょう。たとえば、サステナビリティの部署の新設、CSOChief Sustainability Office)を設置するなどし、企業戦略として本腰をいれる企業も増えてくるでしょう。

また皆さんが今後キャリアを重ねていく中でも重要な視点になるはずです。サステナビリティの知見をどれだけ持っているか、サステナブルな施策・実績をどれだけ残してきたのか?こういった観点でキャリアの価値が判断される時代も間もなくやってくるでしょう。

サステナブルHRMの重要性

 このような歴史の流れのなかで現在注目されているのがサステナブルHRMという概念です。

「サステナブルHRM 」はSDGsが提唱された2015年より研究が本格化し、すでに欧州ではかなり浸透している考え方と言えるでしょう。なお学術的な定義は要すれば次のようなものです。

「将来のニーズに適応する能力を損なうことなく、企業や社会全体の現在のニーズを満たすHRMである。財務だけでなく社会環境、自然環境の目標達成を可能とすると同時に、長期的に人的資源の基盤を再生産することを意図とした、計画的または新たなHRM戦略と実践のパターン」

これまでHRMにあった業績や従業員満足といった目標がさらに拡張された感じですね。

例えば、人事の基本的な仕事である育成について考えてみましょう。これまでは収益を上げる能力だけ強化すればよかったのですが、サステナブルHRMの文脈ではそうはいきません。ビジネススキルだけではなく、環境配慮の知識、シニアなどの再雇用者や外国人等の多様な労働者とのコミュニケーション能力、あるいは雇用の継続を前提にしたキャリア開発など、実に多くの要素が育成プログラムには求められます。サステナブルHRMの観点で見れば、企業のパフォーマンスを向上させるだけでは十分ではありません。

1つ事例をお話ししましょう。神戸のとある医療法人では、地元の高齢者たちを集めてパソコン教室を開き、アルツハイマーなどの予防医療に取り組んでいます。コミュニティーをつくることで地域医療も進めやすくなります。上達した人を講師にしたり、社内の事務スタッフとして採用したりすることによって、再雇用が成立するケースもあります。こんな取り組みもサステナブルHRMの一部です。

人事担当者がいったいどこまでやるのか?と頭を抱える方もいるでしょうが、サステナブルHRMの視点では上記の取り組みを人事担当者が仕掛けることが求められます。

いずれにしても、少なくとも3つの資源領域(環境、社会、人的)それぞれにおいて、人事は「アンテナ」を張り、それぞれの領域において持続可能性を高める仕掛けを考える視座が求められます。

サステナブルHRMのポイントはなにか?

では、企業として何を重視すべきでしょうか?

サステナブルHRMにおいては、学術的にはリーダーシップが大事だとか、グリーンな組織文化をつくる必要があるなどと言われていますが、私が今日注目したいのは「組織学習」です。組織学習についてもサステナブルHRMの分野ではかなり重視されている概念です。

なぜ組織学習なのでしょうか?

それは、多元的な目標が提示されると、組織の中でパラドックスが生まれてくるためです。経営者が「業績を上げない」「資源コストも下げなさい」「地域にも貢献しなさい」「家族も大切にしなさい」など多様なリクエストを提示すると、組織の中でフラストレーションがたまってきます。

パラドキシカルテンションと学術的には言います。正反対のことを言われ続けると社員はストレスを感じてきます。忙しさのなかで不満も溜まるし、なぜそこまで全部やらなくてはいけないのか、納得がいかないという社員もでてくるでしょう。

この状態を放置しないために、組織学習を活性化させておく必要があるのです。

社員の抱えている不満や、矛盾した取り組みに対するフラストレーションを組織内できちんと消化し、学習させる仕組みが必要になるのです。

「今の仕事のスタイルは果たして現実的か?」「全てのアプローチをするのが無理ならば、状況を整理して一番いい形に落とし込もう」といった前向きな議論が起これば、組織は窮地を脱していけるでしょう。組織としての持続可能性も高まるし、エンゲージメントも高まり、ポジティブな循環が生まれます。

反対に、組織内で鬱積した不満を「見て見ぬふり」して、トップダウンで押さえつけてしまったり、ストレスを抱える社員に何の説明もせず、問題を解消するための前向きな議論もしなければ、組織は徐々に脆弱になっていきます。

サステナブルな取り組みを進めるなかで、組織の中に学習を進める「インフラ」が整備されているか?これが非常に大切ですね。

では、具体的に何をすればいいか?ガービンが組織学習を促進するための5つのポイントを提示しています。「過去から学ぶ習慣」「他者から学ぶ機会」「客観的な問題解決アプローチ」「知識を伝達する仕組み」「積極的な実験」の5つですね。

とくに大事なのは3つめの「問題の見える化」です。問題が数値として見えていれば、現場で起きている問題を客観的に把握できるようになります。

客観的に問題を共有できれば、冷静に話し合いも進みます。感情論や主観ではなく、問題の構造や要因に目が向くでしょう。データを集積する仕組みや習慣づくりが大切です。

さて、私の話も終わりです。まとめますと、次のようなポイントですね。

・サステナビリティに関する問題意識は近年どんどん高まってきている。

・その中でHRMのあり方も拡張している(サステナブルHRMの台頭)。

・そのなかで重要になるのは組織学習。多様な価値を同時に進めるなかで起こる問題を解消する必要がある。

・だからは問題の見える化をして、みんなで考える姿勢を促していく。

サステナブル人事の中でも「グリーン人事」に注目

伊達:神谷さん、ありがとうございました。続いて私の講演ですが、「サステナブル人事が投げかけるもの:グリーン人事に注目して」というタイトルでお話します。サステナブル人事に関する研究は多岐にわたります。サステナブル人事の研究の中で人気のあるテーマとして、「グリーン」「環境トレーニング」といったものが挙げられます。今回はグリーン人事に注目し、その中でも、対求職者の話と対社員の話を切り分けて説明します。

求職者に対するグリーン人事の研究

1つ目はグリーン採用」です。グリーン採用とは、端的に言えば、環境問題について企業が発信し、それに関心がある人を採用する動きです。まずは、「企業がグリーン採用を進めると、求職者はどのような心理になるのか」を検討しましょう。

企業が「当社は環境に配慮した行動をとっています」といったメッセージを出します。それに対して、求職者は「自分に合っているかもしれない」などの反応を示します。最終的に「この会社に入ってみたい」と求職者が思えば、グリーン採用は成功です。

興味深いのは、環境に配慮している求職者だけでなく、影響力の大きな仕事がしたい求職者にも、グリーン採用の戦略が有効である点です。

また、環境関連のメッセージを企業が出したとしても、求職者は額面通り受け取るとは限りません。求職者は様々な解釈を加えます。就職・転職活動においては基本的に情報が不足しているため、求職者は少ない情報を手がかりにし、会社や仕事について想像しかなければならないからです。

ある種、深読みしてしまうのが求職者の心理です。このことは、実務的にはよく知られた現象かもしれません。同じことがグリーン採用でも起こります。

環境に関連した発信をしたとしても、それを求職者がどう受け止めているかを丁寧に把握する必要があります。とにかく環境に配慮していると言えばいいかというと、そんなことはないのです。

社員に対するグリーン人事の研究

ここからは、対社員のグリーン人事の話をします。求職者ではなく社員を対象にした研究として、「環境配慮行動」が注目されています。

「環境配慮行動」とは、環境に有益な効果を与える社員の行動を指します。環境配慮行動には大きく二つの種類があります。一つは「タスク環境配慮行動」と呼ばれ、業務上の範囲において行われた環境配慮行動のことです。例えば、仕事の一部としてオフィスの前を掃除するのは、タスク環境配慮行動です。

もう一つの「自発的環境配慮行動」は、社員が自ら行う役割外行動のことです。会社の掃除の例を引き継げば、誰かに言われなくてもオフィスの前を自発的に掃除する、という行動を指します。

極端な言い方をすれば、タスク環境配慮行動をさせたいのであれば、業務の一部として指示をすればいいわけです。他方で、自発的環境配慮行動は、働きかけが難しいという性質があります。

ここで面白い研究があります。先ほどご説明したようなグリーン採用を進めたり、環境マネジメントの教育を社員に行ったり、環境配慮行動をとる社員が評価される仕組みをつくると、タスク環境配慮行動は増します。

ところが、それらのことは自発的環境配慮行動を高めません。要するに、グリーン人事のアプローチは、タスク環境配慮行動を促すことができるものの、自発的環境配慮行動には効果が認められないのです。

少し抽象度を上げて考えれば、これはよく聞く課題に関連しています。「社員の自発性を促すにはどうしたらいいのか」という問いです。「自発的に環境行動を取ってください」と指示するのは、語義矛盾です。そうした指示の結果とられるのは結局、タスク環境配慮行動です。

では、どうすればいいのでしょうか。一つのヒントとして、グリーン人事の施策が、従業員の会社との同一化を高めると、自発的環境配慮行動をとることを示す研究があります。

ポイントは「従業員の会社との同一化を高めると」の部分です。同一化とは、例えば、自分の会社を批判されると侮辱されたように思ったり、自分の会社の成功は私の成功でもあると感じたりすること現象です。

単に制度を整えればいいのではなく、従業員のこうした心理を促さなければ、自発的環境配慮行動をとらないのです。会社との同一化こそがカギを握っています。

簡単に話をまとめましょう。私の講演では、グリーン人事に注目して、対求職者の話と対社員の話をしました。

グリーン採用を進めると、環境に対して意識の高い求職者を雇いやすいのは確かです。一方で、環境に関連するメッセージを企業が打ち出したところで、求職者の受け止め方はさまざまです。メッセージとその受け止め方というのは、古典的な採用を巡る難問です。

グリーン人事を進めると、社員はタスク環境配慮行動こそとりますが、自発的環境配慮行動をとってもらうには、会社との同一化を高める必要があります。自発性をいかに促すのかというのも、古くからある人事の難問です。

ここまで来て見えてくるのは、サステナブル人事は難問を解決する手段ではなさそうだということです。むしろ難問に直面するテーマです。この点は神谷さんの話とも共通してくるでしょう。サステナブル人事を通じてさまざまに現れる、人事の難問に取り組んでみよう、といった覚悟で挑んでいく必要があります。

質疑応答

Q:サステナブルHRMの成果を、ESG投資の文脈でどうアピールしていくのか?もしくはその前段階のサステナブルHRMの可視化の方策についてご教示ください。

伊達:人的資本やESGの開示をすることで、投資家が引き上げないようにする、といった動きが世界的に見られますね。神谷さん、いかがですか。

神谷:まず、それぞれの資源領域(環境、社会、人的)に対して、いわゆるKGIKPIを定めないと分析は難しいと思います。さらに、そこに対してのアクションプランを提示すべきです。そしてアクションプランの進捗を数値化して、KGIに対しての影響レベルを分析する。その流れで成果を投資家の方に説明していく。だいたいこんな感じですね。

伊達:そこに難しさがあるかもしれませんね。数値目標の設定にパラドキシカルテンションが起きるでしょうから。

神谷:そうですね。そこはリーダーシップが求められるところで、例えばABC、のKGIがあったとして、現在のアクションプランはBCに対してはポジティブな影響を与えるけれど、Aにネガティブな影響を与えてしまうというのであれば、今年度の目標としては、まずBCを優先させるとか、あるいは、Aじゃなくて別の指標にKGIを変えるとか、そういう対応・意思決定が必要になると思います。

伊達:他方で、それより先にメカニズムを考える必要があるのではないかと思います。こういう目的でこういう施策を打てば、経営的・社会的にこんなインパクトがあり、環境に対してはこういう結果を導き出せる。そうしたメカニズムを構想することで、初めてKPIに意味が出てきます。

神谷:今日の話は抽象的な表現が多いですよね。AとかBとかCとか、そんな例えばかりですみません。イメージしにくいという視聴者の方も多いかなと。でも、なぜ具体的なアクションを提示できないかというと、各社が考えるメカニズムが百社百様だからだと思います。例えば、採用1つとっても各社のKGIやアクションはかなり異なってきます。

私のクライアントのインフラ業界の企業さんは、サステナブルHRMの文脈で、再生可能エネルギーの事業目標があり、技術研究者の採用を1つのポイントにしています。

一方で、食品ロスに取り組む食品メーカーさんでは、在庫管理システムの運用効率化が目標です。システムを再構築するために、データ分析のITスペシャリストをいかに振り向かせるかが採用のポイントになります。

このように事業環境によって(サステナブルHRMとして)提示される目標やアプローチのメカニズムが変わってくるのです。

自社の事業とか自社のステークホルダーを俯瞰して、どういった指標を構築できるのかを個別に検討していく必要があると思います。

Q:最近、困惑したことですが、ESG投資やSDGsといったキーワードに対して、概念や総論では賛成なのですが、人事施策や人事戦略とどう連携させたらよいのでしょうか?

伊達:これは、個別の検討が必要という、今の話とつながってきます。

神谷:そうですね。自社の事業内容やバリューチェーンや近接している自然環境や社会環境を踏まえて、HRMとの接点を検討していくイメージですね。さっきも申しあげたとおりですが、百社百様です。本質的にはやはりオーダーメードで考えていくべきです。

伊達:自社なりにきちんと考えた上で、他社が自社の目指すべきKPIと類似する指標を出していれば使えばいいですね。

神谷:そうですね。サステナビリティHRMの研究では、“With”とか“コラボ”が大事だと言われています。同業他社がどんなことをやっているのか?を考えていくのもアリかと思います。

伊達:サステナブル人事については、やがて経営から何らかの指示が下るのではないかと思います。そうなったときに外部のKPIをそのまま取り入れるのは問題です。そうならないための準備として、自社のステークホルダーの性質や関係性についてじっくり考えておくとよいでしょう。

神谷:経営の観点で人事も考えなければいけないのは、これまでの時代と同じですね。

伊達:戦略人事の話だけでも複雑で実行が困難だったのに、そこに社会や環境などもあわせて意識していくのがサステナブル人事です。より一層、難易度が高い仕事になりそうです。人事だけでは対応できないかもしれません。他の部署、他の会社と連携をとりながら進める必要があるでしょう。

Q:グリーンに対する意識高い系人材を採用要件にすべきか?

伊達:これは企業によりますね。採用時点で、そういう意識を持つ人材を採る必要があるのか。それとも、そうした意識は入社後に醸成できるのか。入社後に醸成できるのであれば、採用時の人材要件に入れる必要はありません。そして、こうしたことは、サステナブル人事だから考えるべき問題ではなく、採用において一貫して考えるべき問題だと思います。

神谷:そうですね。自社の進めようとしているアクションとの兼ね合いもありそうですよね。例えば、知人のいる海外メーカーは、サステナブルの文脈で、あえて開発途上国に工場を出しています。そこで教育レベルを引き上げたり、人材調達コストを安くしたりするなどの目的があってのアクションです。このようなアクションを進めていますから、開発途上国の支援に対してコミットできるか否かが採用では問われます。このように、自社のアクションと関連づけてHRMを考えるべきかもしれません。

伊達:本日は「『サステナブル人事』入門」というテーマですので、本当に入門的な情報に終始したかもしれません。いずれにせよ、近い将来、人事が難易度の高い課題に直面することは予感させます。そのときまでに準備運動をしておきたいですね。

神谷:サステナブルHRMの話をすると必ずでてくる質問は「じゃあどうすれば?」という質問です。具体的に事業内容なども把握していればアイデアも出せますが、こういった公開の場で企業の事業内容も把握していない状態では、「どうすればいいかは各社異なるので、まず各社がどうすれば?を考えて自社なりのアンサーを出せるように組織学習を整えましょう。サステナブルな意識を醸成しましょう」としか言えないのですよね。自分たちのビジネスがどうしたら持続可能になるか?まずは、自分たちで考えて進めるしかないのですよね。そのためにも、今から新しい取り組みを積極的に支援したり、多様な価値観を受け入れられる風土を準備したりしておくことが求められると思います。

伊達:このテーマはまだ研究も進んでいくでしょう。また情報発信ができればと思っています。最後までありがとうございました。

#神谷俊 #伊達洋駆 #セミナーレポート

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