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越境学習の科学:越境学習を上手く導入し、効果を高めるには?(セミナーレポート)

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人材育成や人材マネジメントの領域において、「越境学習」に注目が集まっています。越境学習とは、ホームとアウェイを往還する中で学びを得て、事業や組織に変革をもたらすことを指します。例えば、企業に務める人が、ベンチャー企業やNPO・NGOに一時的に出向き、自社に戻るなどの状況があります。

企業が越境学習を導入する際のポイント、そして、越境学習の効果とは何か。ビジネスリサーチラボとともに、経済産業省主導の越境学習に関するプロジェクト(令和元年度 大企業人材等新規事業創造支援事業費補助金(中小企業新事業創出促進対策事業) 指標開発等業務に関する研究会)に参加された、野村総合研究所の岸浩稔さんをお招きし、検討しました。

※本レポートは、20217月にビジネスリサーチラボが開催したセミナー「越境学習の科学:越境学習を上手く導入し、効果を高めるためには?」を基に、編集・再構成したものです。

登壇者

岸浩稔 株式会社野村総合研究所 ICTメディアコンサルティング部 上級コンサルタント
東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻 博士課程修了。博士(工学)。テレコム・メディア領域を中心にテクノロジー起点のイノベーション創出に係る事業戦略・実行支援、人材・組織開発の業務に従事。「49%の労働人口がAI・ロボットによって技術的に代替可能」の研究を担当し、テクノロジーが及ぼす未来像の洞察、DX時代の人材と組織の姿の検討を進めている。著書に『誰が日本の労働力を支えるのか(東洋経済出版社)』、Web・雑誌記事に『AIで劇変! 2030年のオフィスと組織(日経クロステック・日経コンピュータ)』、『AIとの共存に向け多様性を高めよう』(野村総合研究所)』など。

伊達洋駆 株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。近著に『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)や『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)など。


越境体験の目的と位置づけ

岸:

私のセッションでは、大企業の設置する制度・仕組みの中で、人材育成を目的として、大企業に所属する人材がその企業に戻ることを前提に、所属企業とは関係ない外部企業で、おおむね3カ月程度以上フルコミットする。そして元の企業に帰ってきて、自分自身の成長や組織の成長に還元する。このように越境体験を捉えています。 日本企業は大企業化・ヒエラルキー化して、チームを効率的に回していくことによって成長してきました。しかし昨今、デジタル化が進み、イノベーションが求められるようになりました。人材に求められるケイパビリティ、スキル、コンピテンシーなども変わり、創造性を重視するマネジメントをしていかなければならないという背景があります。

こうした背景がある中、経済産業省のスタートアップに関する政策や、イノベーション関連の部門での問題意識として、大企業とスタートアップの人材を還流させることが大事なのでは、という観点があります。大企業とスタートアップでは、会社の姿、組織の形、企業文化が異なります。その中で働いている人々の特徴、スキルやマインドセットなども異なります。それぞれの良いところを得るために、人材を還流させて、お互いの良いところを見て学ぶ、体験して学ぶ必要があるのでは、ということです。 

今回、越境体験の目的と位置付けのキーワードとして、「多様性」を挙げたいと思います。創造的に働くために、イノベーションを起こすためには、多様性が重要であるとよく言われています。企業の中で多様な環境を整える、人材育成における多様性を確保するには、部署のローテーション、留学制度、中途採用、出向など様々な施策を打つ必要があります。

越境体験も、まさに組織の中の人材の多様性、経験の多様性をもたらすための人材育成のメニューの一つであると捉えられます。

また、創造的に働くために必要な要素について、中間管理職層を対象にしたアンケートでは「多様で多彩な社員を揃えること」が1位となっています。ただ一方で、現実的に多様な社員を揃えることは大変でもあります。中途採用者をいきなり多くすることもできません。そこで、越境体験を用いることで、3カ月や1年程度で、人材に違う経験を持ち帰ってもらうことができる、すなわち多様性を確保する機会を得られる一手段になります。

 

越境体験がもたらす効果

越境体験がもたらす人材育成効果を紹介します。こちらは伊達さん、法政大学の石山先生などと議論しながら作った図です。新しい環境での経験は、認知的不協和を生み出し、そこで良質な葛藤を得られる。それにより、その人のスキルやコンピテンシーが変革されていく。

物事を進めていく中でうまくいかない経験で壁にぶつかることによって、「こううまくいくと思っていたのに、なかなかうまくいかない」という乖離、自分が当然と思っていることと現実の乖離をなんとかしたいという気持ちが、イノベーションの原動力になる、という整理をしています。

企業にインタビューすると、越境体験の導入時には、熱意のある人材にチャレンジングな経験、修羅場体験をしてほしいという声が多いようです。越境体験の目的として、修羅場体験をさせて、一皮むけて帰ってきてほしい、イノベーションを起こす人材になってほしい。すなわち、認知的不協和を経験して帰ってくることで、イノベーション創出につなげていきたい。そのような期待が見て取れます。

越境体験の導入後には、やはり様々な経験をしてきて変わった、というケースもよく聞かれます。大事なことは、越境体験をして戻ってきた組織を変革していくこと。自分だけではなく、その周りの人々を巻き込んで変えていくことが、組織のイノベーション創出に必要です。社内の仕組みやコミュニケーション方法を変えたいと主張して行動するようになった、というところまで行くと、とても効果があったと言えます。

また、認知的不協和を基に人間的に成長してほしい、精神的にタフになり姿勢が変わってほしい、といったところを目的としていくケースも非常に多いと感じています。

越境体験の具体的な効果について、人事部が提供するビジネス研修と、資本関係の無い会社への出向、いわゆる越境学習に当たるものによって得られたスキルを比較した調査があります。

ビジネス研修では低いかマイナスで、資本関係の無い会社への出向はプラスになっている、すなわち越境学習が大きく寄与しているところをピックアップしているのが、オレンジの枠で囲った箇所です。

これを見ると、多面的に見る力、意義を感じる力、様々な関心を持つ力、困難な状況でもやり抜く力などが挙げられています。デスクワークではなかなか養うことができない、これらのソフトスキルを、越境学習では養うことができるということです。

なぜ多様性が必要なのか

なぜ多様性が必要なのかについてお話しましょう。以前、私が担当した研究で、将来、日本の仕事が半分無くなるというプレスリリースを出しました。

これについて図を用いてご説明しますと、上がAIによって仕事がなくなる、AIが人の仕事を単純に代替するという考え方です。下はAIと共存するモデルで、AIによって仕事が代替されると、人でしかできない仕事が増えていくという考え方です。仕事が半分なくなるというプレスリリースをしたときに伝えたかったのは、この下側のモデルをいかに考えられるか、という点でした。

分かりやすい事例として、肺がん検知の画像診断があります。いわゆるディープラーニングを使って肺の異常な所を見つける技術です。これを使うと、医者が見るよりも肺がんの検知がよくできるようになっており、CTスキャンの画像診断をするのに、画像を見る時間が半分で済むようになります。残った時間を、診療や研究に使ったりするができるようになるのです。

先ほどの下側のモデルのように、人でしかできない部分や仕事量を上げることができるため、トータルとしての付加価値を上げていく。これがイノベーション創出に繋がる、ということをご紹介したいと考えました。

ところで、冒頭でお話しした効率性と創造性について、どうして今までそれが両立しなかったのでしょうか。それは、「効率性を求めると生産性が上がり、創造性を求めると生産性下がるから」という理由からです。

多様な人たちがいるとイノベーションが起こると言いつつも、仕事が回りません。一方で下記の右側のモデルのように考えると、イノベーションと効率の両立、すなわち多様性と効率性が両立するため、AIに効率性の部分を任せることで、多様な創造性を求める業務のほうに人が集中できるようになります。

このような状況下で求められる人材像は、これまでと変わってきます。例えば、人材採用一つ見ても、今までのような左側のジェネラリスト採用だと、ある程度の専門知識や学歴があって、真面目に会社に来て、言ったことは守って、といった人を採用することになります。

しかし、これからは下記の右側のように、何かに優れたスキルを持った人を採用、評価していかなければなりません。全てがある程度できる人より、特定のスキルで何か秀でているような人を集めて戦っていくのが、将来的な姿であると考えられます。

というのも、生産性や効率性を求めて、ある程度のジェネラリストを採用していくモデルでは、同じ評価軸で競争しているAIが伸びてくることで、多数の負け組が出てくるからです。一方で、AIと共存していくモデルだと、AIで効率性を担保し、創造性を発揮できるスキルで戦っていくことができます。こうすることで多様性が担保されて、それはイノベーションにつながるはずです。

このような動きに連動して、評価の考え方も目標管理から能力管理に変化すると言われています。これまでは、個人の成果が、組織の成果に対応していました。すなわち、パフォーマンスをマネジメントすることで組織の成果を図っていく。目標管理制度によって相対評価を行い、個人の成果を上れば組織の成果が上がる、競争させるという考え方でした。

しかし、これからの時代はパフォーマンスディベロップメントが重要になります。個人の能力を上げれば、組織の成果につながるはずです。その意味で、一人一人のスキルを見ながら磨いていく、得意なものをやってもらう。

そのような能力管理による絶対評価になり、個人の能力の成長そのものが、結果的に組織の成長につながっていく。そういう考え方をしていかないと、AIに支えてもらいつつ、得意なところで戦うような組織にしくことがなかなか難しいと思います。

多様性について、欧米の大企業を見ますと、もはやCSRとしてではなく、企業の競争力向上のために推進されています。ダイバーシティ推進に取り組む理由として、一つは、多様性のある環境を用意することで良い人材が採れ、人材が離れないということが挙げられます。二つ目は本日お話ししてきたとおり、多様性が高まるとイノベーションにつながること。三つ目は、いろんな国籍、文化、バックグラウンドの方が増えると、様々なマーケット情報を気軽に聞けるということがあります。

重要なのは、属性の多様性ではなく、価値観やスキルの多様性です。属性が多様であることが、結果的に価値観の多様性につながる可能性もありますが、大事なのは価値観であり、スキルの多様性である、ということを最後にお伝えしたいと思います。

越境学習は「個人の多様性」に影響する

伊達:

岸さん、ありがとうございました。岸さんのお話をうかがいながら、ダイバーシティには2種類あると感じました。一つは集団レベルの多様性で、いろんな人がいるという状況です。もう一つが個人レベルの多様性で、個人の中に様々な価値観があるという状況です。越境学習は、この二つを促進していくことができるのではないでしょうか。私の方からは、とりわけ個人内の多様性に対して効果があるというお話をします。

経産省主導のプロジェクトの中で、越境者とその人を支援する立場、越境者の周囲にいる方々に対して大規模な調査を行いました。その中で出てきた具体的な話をご紹介します。

Aさんという人が、越境体験をしました。Aさんはもともとの所属組織である程度の経験を積んでおり、仕事自体は覚えていて、今の環境でうまく振る舞えていますが、もう少し成長したいと感じて、越境体験をしました。

結果、越境先で悩むことになります。越境先の業務のスピードが速く戸惑ったり、指示通りに仕事をするものの、それだけでは駄目であると越境先から指摘されたりします。ただ、失敗を積み重ねながら、元の所属組織の常識が、越境先の常識とは違ういうことに気付き始めます。そして、越境先に貢献できるようになりました。

越境後、自分の組織にあらためて戻ったときに、色々と改善すべき点があると思うようになりました。元々の組織に様々な提案を行ったところ、煙たがれてしまう、反発に合ってしまいます。何とか仲間を見つけられるように、Aさんは動いていくようになりました。このような流れが、越境学習のプロセスの一例です。

このプロセスを抽象的に整理しましょう。まず、越境先にやってくる。すると、自社の常識が越境先で通じず、戸惑いや衝撃を受ける。例えば、自分が今までの能力が通用しなかったり、自分の意見が通らなかったりする。そういった厳しい体験をします。

ただ、そんな中でもあがいていきます。例えば、越境先の業務の知識をできる限り早く学ぼうとしたり、越境先の歴史を学んだりします。経営者の思想や理念、キャッシュの状況などを聞いて情報を集めながら、とにかく自分ができることはないかと動いていきます。

このような行動のことを、学術的には「プロアクティブ行動」と呼びます。自分や環境に影響を及ぼす、未来志向で変革志向の行動です。戸惑いがある中でも、プロアクティブ行動を取っていくことが、越境中の特徴の一つです。

何とか格闘してる中で、自分が元いた組織と越境先の組織の両者を、俯瞰して見ることができるようになります。自分の元いた組織の特徴はこうであり、越境先はとこう違っているのだな、など。あるいは、自分の強みはこういうところにあるのか、逆に弱みはこういうとこにあるのか、といったことを内省するようになります。

そうした学びが、まさに複数の価値観を知るという、先ほどのダイバーシティの話につながっていきます。自分の中に、自分が元いた組織の価値観と越境先の組織の価値観など、複数の価値観が生まれてくるのです。これが越境中の学びということです。

越境が終わり、元の組織に戻った後にも様々なイベントが起こります。例えば、越境した人が色々と違和感を覚えたり、あるいは空回りをしたりします。越境して帰ってきた人が、元の組織に物足りなさを感じたり、何か提案したときに反発を受けたりします。

そんな中でもやっぱり自分を信じて行動していきます。まずは行動を起こしてみよう、自分の考えていることを様々な人に伝えていこう、少しずつでもいいから変えていこう、など。そういった行動をとっていくようになります。

さらに、利害関係者とつながり、仲間や協力者を増やしていきます。上司と良い関係をつくるように心がけたり、中には経営層と連携したりする人も現れてきます。社外の仲間を見つけようとする人もいます。

越境学習のプロセスに一貫して言えるのは、「葛藤」が重要であるということです。葛藤が原動力になって、越境者は学びを得ているのです。越境中に葛藤が起きるだけでなく、越境後も葛藤が起きるというのはポイントです。

ここで言う葛藤とは、所属組織と越境先という二つの価値観が衝突して、かつ共存している状態を指します。例えば、自分の会社では、事前に根回しして物事を進めていくべきだという価値観があるとします。ところが、越境先で根回ししようとすると、「そんなのいいから、とにかく実行してくれ」と言われてしまう。そうした価値観を、両方とも自分の中に抱えながら行動していく。これが葛藤の例です。

葛藤に向き合っていく中で、自分の会社の特徴とは何か、越境先の特徴とは何か、あるいは自分の強み・弱みとは何かを省察するようになります。今までは気付かなかった、自分が持っている暗黙の価値観について気付きを得たり、それに対して疑いの目を向けたりすることが可能になります。

ただ、岸さんも認知的不協和という言葉で語っていましたが、葛藤と向き合い続けることは実に大変です。所属組織の価値観が正しいと押し付けようとしたり、逆に、過度に越境先に合わせてしまったりする、という状況に陥る場合もあります。つまり葛藤を手放してしまうのです。

越境学習は葛藤が原動力になっているため、いかに葛藤を保ったままでいられるかが、越境中も越境後も重要です。葛藤を簡単に解消するような関わり方をしてしまうと、越境学習の醍醐味が失われてしまいます。

悩んでいるときこそ学びの種が芽吹こうとしていると思って、周囲は見守る必要がありますし、越境者自身も葛藤したり悩んだりしているときこそ、「自分の中で今、学びが生じようとしているんだ」と考える必要があります。

以上、越境学習の効果が生まれるプロセスを大まかにお話ししました。詳細については、越境学習の効果を可視化する助けとなる「ルーブリック」というツールがあります。PDFで公開されているので、ご覧いただけると幸いです。

※越境体験ルーブリックと活用マニュアル: https://co-hr-innovation.jp/rubric/

 

Q&A

Q1. 越境体験を行った上で、自社へのコミットメントやエンゲージメントをどのように高められるか

岸:

様々な調査をしていく中で、「越境中にどういったメンタリングをするか」が重要であるということが分かってきました。

元の組織の方々、上司や人事が、越境者にどういう期待を持っているかを、会社として伝えることが重要です。具体的には、こういう壁が会社としてあるから、ブレークスルーするために、こういう環境で、こういうこと学んできてほしい、といったことです。

加えて、越境先に入って葛藤を抱えた際、ある程度いい距離感でキャッチボールをする必要があります。この距離感は、実はかなり難しいところです。干渉し過ぎないことが大事だというのも、今回の調査の結論でした。例えば、2週間に1回、月1回ぐらいで1on1の時間をとり、こんなことで悩んでいる、こんな経験したというキャッチボールできる。それくらいのことがあるといいのではないでしょうか。

越境学習のマッチングをしてくれる事業者にメンターの方などもいます。こういう方々はプロなので、新しい環境でどういう葛藤があるかを聞いたり、越境者の気付きを促したりすることが上手です。良いメンターとお話しできたことが良かったと語られている越境者も多かったです。

人事、現場のマネジメント、外部メンターが、程よい距離感で連携していって、会社の期待を伝えていく。そうすることで、自分に期待されていることはこういうことで、帰ってきてこういうふうに役立ってほしいと考えているのだな、ということを感じさせていくのが一番のポイントかなと、色んな調査を通じて考えていました。

伊達:

越境者にインタビューすると、「自分の所属組織は良いところなんだ」と思う方は多いです。越境体験を通じて自社を相対化できるので、良いところも見えてくるのです。

そうした貴重な体験をした越境者に対して、関心を持ちつつも関与しすぎないというスタンスで接していただけると良いでしょう。見守りつつ、無視はしないが、変にあれこれ言い過ぎない、という立ち位置です。必要なリソースがあれば、それらを提供していくといったことが、組織に対する愛着を高めていく上で大事になってきます。

Q2. 越境体験が必ず修羅場にはならないのではないかと危惧しております。どのような越境でも修羅場になるのでしょうか

伊達:

所属組織と越境先の間で、どの程度違いがあるかという点が大事になります。価値観やルール、文化などが異なる組織であればあるほど、越境体験による驚きが大きくなります。すると本人としては、修羅場的な体験をしたと感じます。

もう一つ大事なのは葛藤との向き合い方です。人は葛藤をできれば解消したいと思っています。越境先が駄目だなと思ったり、自分は全然駄目だ、所属組織は全然駄目だ、と思ってしまったりするケースがあります。そうならずに、越境先でしっかりと役割を果たしていこうとすることで、修羅場体験が生み出されていきます。

岸:

先ほど伊達さんからあったような、乖離があるというのは大きなところだと、私もヒアリングを重ねながら思っています。

普段と違う環境に置かれて、いかに自分が思ったことがうまくいかないか。自分の今までの正しいと理解していたこと、うまくいくと思っているやり方が全然合わない、というところが、不協和をもたらす要因になります。そういう場に放り出されてこそ、どうしたらいいのか、という葛藤が生まれます。

また、スタートアップへの移動事例として印象的だったのが、周りの人があまりに優秀過ぎて、本当に自分が無力だと感じたというコメントです。一体自分はどういうパフォーマンスをすればよいのか、できるのか、ということを考えてしまったそうです。

修羅場体験のやり方は様々ですが、前者のお話ですと、社内の文化と現場の文化が全然違ったということが修羅場体験の要因ですし、後者のお話で言えば、元いた組織の人材のレベルと、全然違う方々が越境先にいたという環境の違いも修羅場体験だと思います。 

Q3. 葛藤を解決してはいけないということか

岸:

葛藤を経験することが一番の目的であり、葛藤を解決できたかどうかかは、その後についてくるので、主目的ではないと思っています。

何か不協和があって、葛藤を体験した後に、それが解決でき、成功体験としてその人の自信になるのであれば、もちろん良いです。一方で、解決できないような葛藤を体験するのも、それはそれでその方の刺激になったりします。どちらが良いというわけでもないですし、葛藤であると認識して体験してもらうことが重要であることが調査から分かっています。

メンター、人事、現場の方々との対話を基に、その人がいま直面しているものが、葛藤であると気付かせることが、伴走者の役割として重要です。

伊達:

最後にふさわしい重要な論点ですね。問題と葛藤を区別してもいいと考えています。

例えば、何か問題が起きたとき、それを解決することは、ビジネスにおいて重要です。一方で、葛藤というのは心理的にもやもやしている状態を指します。そういった気持ちをすぐに解消する必要はなく、むしろ、それと向き合っていくことが重要です。

ということで、本日、越境学習の効果と、その導入についてお話してきましたが、岸さんから最後に一言いただいてもよろしいでしょうか。

岸:

越境学習については、まだまだ導入実績の途上ですが、ルーブリックを活用しながら実例を積み上げつつ、どんどん深堀ってケースを分析していくことが重要であると思っています。できるだけ多くの会社で導入いただいて、その振り返り、フィードバックを、ぜひ色んなところで共有できるといいなと思います。今日は、どうもありがとうございました。

伊達:

以上にて終了します。ご参加いただきありがとうございました。そして岸さんもありがとうございました。

 

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