ピープルアナリティクスの論点(1)良質な仮説の重要性

本コラムでは継続的に「ピープルアナリティクス」に関連する知識を提供します。

※ここで言うピープルアナリティクスとは、(広義の)人事データを分析し、人や組織をより良いものにするための示唆を得ることを指す一般名称です。

第1回となる今回は、ピープルアナリティクスを進める上で「仮説」が非常に重要になる、という点について解説します。

上手くいかないピープルアナリティクス

私たちが(一般的に言われる意味での)ピープルアナリティクスの依頼を受ける際に時折見受けられるのが、「これまでピープルアナリティクスに取り組んできたものの上手くいかず、悩んだ末に弊社へ相談した」というケースです。

例えば、自社メンバーだけで人事データを手探りで分析し続けてきたが、どうも上手く結果が出てくれず、限界を感じて弊社に相談を持ちかけたというケースがあります。また、結果が出たのは良いが、解釈や対策が困難なものが得られてしまい、閉口して弊社に駆け込んできたケースもありました。

分析に際した仮説とその種類

何故このような事態が起きてしまうのでしょうか。私たちが主要な原因の一つと見ているのは、分析に際した「仮説」の精度が低いことです。

仮説とは仮の答えであり、分析結果の暫定的な予測のことです。例えば「従業員の働きがいを高めたい」という目的を持ったピープルアナリティクスのプロジェクトがあったとしましょう。そこにおける仮説は「△△が働きがいを高める」などの形をとるでしょう。

なお、仮説には「概念的」なものと「操作的」なものがあります。概念的な仮説はその名の通り、「概念」で仮説を記述します。「上司からの支援が働きがいを高める」といった具合です。

対して、操作的な仮説においては「多面評価の□□の項目が高いほどエンゲージメントサーベイの○○の項目は高い」のように、実際のデータと紐付けて仮説を表現します。

概念的な仮説だけでは実際にどのように分析すれば良いか分かりませんし、操作的な概念だけでは一体何を分析しているのか分かりません。両方の仮説が必要なのです。

ピープルアナリティクスにおける仮説の重要性

ピープルアナリティクスは概念的な仮説を定め、そこから操作的な仮説を立てた上で分析に入ると上手くいきやすくなります。逆に、概念的な仮説や操作的な仮説を定めていなかったり、定めていても精度が低かったりすると、成果の出ないプロジェクトになる可能性がぐっと増します。

仮説が重要になる理由は、ピープルアナリティクスのプロジェクトの多くが(分析可能な形に十分に整理されていないデータも含めると)膨大な種類と量のデータを扱うことに関係しています。

データの種類と量が膨大になれば、当然ながらそのデータを用いて分析できる組み合わせもまた膨大なものになります。分析すれば分析するほど、必要な資源は増えるため(予算や人員が必要になるため)、限られた資源で効率的にピープルアナリティクスを進めようとする企業がほとんどです。そうなると、「まずはこの辺りを分析してみよう」と当たりを付けなければなりません。

この「当たりを付ける」際に必要になるのが「仮説」です。仮説をしっかりと定めないまま分析に突入することは、地図や方位磁針を持たないまま海へ漕ぎ出すようなものです。そして、仮説を定めていてもその精度が低いというのは、海に出た際に持っている地図や方位磁針が適切ではない状態を意味します。

いずれのケースも、データの海の中でさまようことになり、冒頭で紹介したような「上手くいかないピープルアナリティクス」の事態をもたらすでしょう。ピープルアナリティクスを行おうとする際には、概念的な仮説はあるか、操作的な仮説はあるか、それらは良質かを問うべきでしょう(良質な仮説を立てる方法については次回以降のコラムで取り扱います)。

(2)へ続く

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