【後編】「疲弊離脱型」の離職とその対策:「なぜ会社を辞めるのか:社員の離職と定着を考えるセミナー」セミナーレポート

2019-3-18

株式会社ビジネスリサーチラボは、「なぜ会社を辞めるのか:社員の離職と定着を考えるセミナー」を開催しました(株式会社エリクシアとの共催)。セミナーにおける弊社代表 伊達洋駆の発表を2回にわけてお届けします。今回は【後編】です。

 

【前編】「成長追求型」の離職とその対策こちら

 

 

ある企業からの調査依頼

 

【前編】では、新たな成長機会を求めて転職する「成長追求型」の離職のお話をしました。後編では、「疲弊離脱型」のお話をします。ある会社からの依頼で調査を実施した事例があるので、そちらを紹介するところから始めましょう。

 

人事担当者から、「この数年ほど、課長職の社員の離職が起こっている。最初はあまり気にしていなかったが、何年か続いている。何か原因があるのではないか。今後の対策を考えるための情報が必要。実態調査をしてもらえないか」といった相談がありました。

 

そこで、課長職とその部下に対して、弊社がオーダーメイドで設計したアンケート調査を行いました。150人程度の回答を得て、それらのデータを統計分析しました。アンケートには自由記述も設けていたので、その内容も分析しました。

 

 

 

過負荷の管理職

 

調査の結果、「多すぎる仕事を支援なしに実行し続けている中で磨り減って会社を去る」という、離職メカニズムが見えてきました。

  • 課長職は仕事の負荷が非常に大きい。

  • 一方で、上司、すなわち部長職からの支援は少ない。

  • 次第に心身が疲労していき、その蓄積によって離職意思が高まる。

 

自由記述の分析、及び、調査結果をフィードバックした際の人事担当者との議論の中で、更に生々しい実態が明らかになりました。

 

課長職は何故、過負荷なのか。元々プレイング・マネジャーで多忙だったこともあるのですが、近年の働き方改革において、部下の残業時間を減らすように言われていたようです。ところが、仕事の総量は変わらない。そこで、部下を定時で帰すために、自分が部下の仕事を肩代わりし、課長職は連日残業を余儀なくされていました。その状態で走り続けるうちに、「これでは倒れてしまう」と会社を去っていく様子が見えてきたのです。

 

 

 

バーンアウトの果ての離職

 

このような事態に陥っているのは、この会社だけなのでしょうか。

 

この会社の離職メカニズムに関連する学術概念を紹介しましょう。それは「バーンアウト」です。心身が疲労し、感情が枯渇している状態を主に意味します。先ほどの課長職は、仕事に忙殺されながらも上司からの支援が得られず、バーンアウトの状態になっていた、と捉えられます。

 

先行研究によれば、バーンアウトは2つの「負」の効果をもたらすことが分かっています。

  • バーンアウト傾向が高いと、本人のパフォーマンスが低下する。心身が疲弊すると成果が上がらないのは、直感的にも納得感があります。

  • バーンアウト傾向が高いと、1年後に離職をする可能性が高まる。バーンアウトは離職を促してしまうのです

 

 

バーンアウトしやすい状態

 

バーンアウトが生じやすい状態、というのも研究の中で明らかになっています。特に、次のような仕事がバーンアウト傾向を高めます。

  • 与えられる仕事が多い。

  • 必要とされる努力の量が多い。

  • 沢山の人たちとの対応に追われる。

  • 周囲との関係性で葛藤が生じる。

  • 上司との関係性が良好ではない。

  • 同僚との関係性が良好ではない。

 

更に興味深いのが、「仕事観」によってバーンアウトが促進/阻害される点です。経済的な動機のために働く人はバーンアウトに「陥りやすい」一方、自分の能力の発展や、自分の信念の追求のために働いている人はバーンアウトに「陥りにくい」ことが分かっています。【前編】で取り上げた「成長追求型」の離職をする人は、バーンアウトとは遠い位置にいるのかもしれません。

 

 

バーンアウトの対策

 

それでは、どうすれば、バーンアウトを抑制できるのでしょうか。3つの点を挙げたいと思います。

 

  • 仕事の効率化が重要。業務量を減らさないと、根本的な対策にはなりません。

  • 支援し合う職場を作る。周囲や上司からの支援が得られるようにする。前提として、「周囲が今どんな状況にあるのか」を可視化する工夫が求められるかもしれません。

  • 納得感のある評価制度にすることも大事。努力が報われる制度、そして、過度の努力を是としない制度にした方が良いでしょう。

 

他にも、教育研修の充実、キャリア開発支援、意思決定に参加できる仕事、自律的な仕事、社内外の人脈形成などが、バーンアウトを抑制する上で効果的だと言われています。

 

最後に

 

以上、私からは、「成長追求型」と「疲弊離脱型」の離職という2つの種類に分けて、そのメカニズムと対策をお話しました。調査事例を報告した後、関連する研究を幾つか紹介し、離職を防ぐヒントになる情報を提供しまました。

 

皆さんの会社では、「成長追求型」の離職が多いでしょうか。「疲弊離脱型」の離職が多いでしょうか。それとも、両方が混在している状態でしょうか。いずれにせよ、離職のメカニズムを適切に見極めた上で対策を打っていくことが大切です。

 

(了)

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