【前編】「成長追求型」の離職とその対策:「なぜ会社を辞めるのか:社員の離職と定着を考えるセミナー」セミナーレポート

2019-3-13

株式会社ビジネスリサーチラボは、2019年1月29日に、株式会社エリクシアと共同で「なぜ会社を辞めるのか:社員の離職と定着を考えるセミナー」を開催しました。本コラムでは、セミナーにおける弊社代表取締役 伊達洋駆の講演内容を2回にわけてお届けします。今回は前編に当たります。

 

 

本日のテーマ;『離職と定着』

 

本日のテーマは『離職と定着』です。(1)なぜ離職するのか、(2)どうすれば離職を抑えられるのか。これら2つの問いに対して、次の3つの観点から話題提供します。

 

  • 「研究」の観点。離職や定着に関する研究は蓄積されています。先行研究の中でどのようなことが検証されてきたのかという観点から話題提供します。

  •  「実務」の観点。今まで離職抑制や定着支援の調査を行ってきました。実践的な知見についても紹介できればと思います。

  •  「データ」の観点。弊社が顧客企業の社員を対象に行った調査の結果を紹介できればと思います。

 

離職の深刻性

 

イントロダクションとして、離職の深刻性について触れておきましょう。離職をせずに長期間働き続ければ、企業内でスキルを形成できます。競争優位の源泉となるスキルを育み、蓄え、引き継いでいくことができます。しかし離職が起こると、競争優位の源泉となるスキルの基盤が崩れてしまう。実際、離職率が高いと企業業績が低いという研究結果もあります。離職意思が高いだけでも企業業績に負の影響があります。

 

 

時代の変化

 

最近、いわゆる日本的な会社から離職要因を探る調査の依頼が増えています。このことはある意味で驚きでもあります。日本企業は従来、長期間働くことでリターンが得られる構造や、「一度入った会社は簡単に辞めるべきではない」という規範など、定着を促す仕組みを持っていたからです。

 

こうした仕組みが一部で「今は昔」の様相を呈してきているのでしょう。人材を確保することが難しい売り手市場が続いていますし、一つの会社に勤め上げることが望ましいという考え方を持たない人も出てきています。そのような中、離職の問題に対処することが一層重要になっているのでしょう。

 

 

2種類の離職

 

それでは、離職の問題に迫っていきます。一口に離職と言っても、2種類の離職を区別する必要があります。

 

  •  「成長追求型」の離職。今の仕事では成長が見込みにくいと考え、成長機会を求めて他社に行ってしまうタイプです。

  •  「疲弊離脱型」の離職。現在の仕事で心身共に疲弊し、これ以上ここにいるとまずい、と脱出するタイプです。

 

成長追求型の離職と疲弊離脱型の離職には、共通点もあれば相違点もあります。以降、それぞれの離職について弊社の調査事例を紹介し、それと関連する研究知見を取り上げる。その後、どうすれば成長追求型の離職を減らせるのか、という順で解説していきます。

 

 

成長追求型の離職メカニズム

 

まず、成長追求型の離職、です。「一人前になった後、若手社員が次々と辞めていく」という課題感を持った企業から、弊社に対して調査の依頼がありました。弊社は社員の本音に迫るために、30名の若手を対象に、1人1時間のインタビューを実施しました。その中には、「離職を既に決めている人」も含まれていました。

 

インタビュー調査から見えてきたのは、次のような離職メカニズムでした。

 

  • 初めの頃は仕事に不慣れで大変な一方、成長実感を覚える

  • 経験を積む中で仕事に慣れ、成果を出せるようになってくる

  • やがて新しい学びが少なくなり、成長の頭打ち感が芽生える

  • 仕事がマンネリ化し、自分のキャリアに対する焦りが出てくる

  • 上司に成長可能な仕事を要望するが、実現はしない

  • 他社のことを調べ始め、成長機会がありそうな会社に出会う

  • 成長機会を求めて、その会社に転職をしていく

 

2つの成長志向

 

このメカニズムを伝えた際に、最初に言われたのは、「うちの社員は、そんなに成長を望んでいるのですか?」という疑問でした。そのこともインタビューでは調べていました。その結果、2つの成長志向があることが分かったのです。

 

積極的な成長志向。自分の可能性を広げ、今できないことをできるようになりたいという志向性です。

消極的な成長志向。成長しないとまずい。労働市場で潰しが効かなくなるという強迫的な志向性です。

 

 

研究知見との照合

 

この会社は「特殊」なのでしょうか。実はそうではありません。研究知見を元に説明してみましょう。

 

成長追求型の離職メカニズムを裏付ける2つの概念があります。一つは「内容的プラトー」です。内容的プラトーとは、これ以上の学習や挑戦を望みにくい状況を指します。よほど高度な専門職を除いて、ほとんどの仕事は3年ぐらいで慣れる、と指摘する研究者もいます。内容的プラトーは避けにくいものです。

 

次に、先ほどの離職メカニズムの中では、自分のキャリアに対する焦りが含まれていましたが、これは「キャリア焦燥感」という概念に関連します。キャリア焦燥感は離職意思をもたらすことが実証されています。

 

 

成長追求型の一般性

 

仕事をする以上、慣れはなかなか避けられず、内容的プラトーが必然的に生じます。そうすると、キャリア焦燥感が生まれる。キャリア焦燥感は離職意思を引き上げるため、結果的に離職へと向かっていってしまう、いうことです。

 

このように整理すると、成長追求型の離職は、弊社の調査した企業だけに当てはまるメカニズムではなく、ある程度広く発生し得る一つのパターンであることが推察されます。

 

 

4つの対策

 

どうすれば成長追求型の離職を抑えられるのでしょうか。4点挙げてみましょう。

 

  • 社員にキャリアの見通しを持ってもらう。キャリアの見通しを持っていると、組織への愛着・一体感が高まります。組織への愛着・一体感が高いと、離職意思は低くなるのです。

  • 社員が現在の仕事を「意味付け」するのを支援する。長いキャリアの視点で見たとき、今の仕事がどんな意味を持っているかを検討すると、眼の前現象に対して別の捉え方ができます。

  • 社員に教育機会を提供していく。教育機会の提供は、離職行動と離職意思の両方を下げることが検証されています。成長実感を改めて高めることにも繋がるでしょう。

  • 時には人事異動も視野に入れる。異動すれば、成長実感はリセットされます。キャリアの見通しを踏まえた上で異動を設計できれば、キャリアの実現にも結びつきます。

 

(後編につづく)

 

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