人事に統計分析が必要なケース3選



統計分析が求められるケースとは


社内の現状を定量的に可視化する組織サーベイが普及し、AIを伴うHRテクノロジーも進展しています。人事担当者は多種多様なデータに囲まれて仕事をするようになりました。


それらのデータを積極的に活用したいというニーズを受け、人事の必要スキルの一つとして「統計分析」を挙げる識者も増えています。


しかし、そもそもどのようなケースにおいて統計分析を行うのが適切なのでしょう。このコラムでは、統計分析が求められるケースを3つ紹介しようと思います(なお、統計分析の中身に関する解説は、このコラムの範囲外です)。



判断の誤りを小さくできるのが統計分析の魅力

統計分析を用いる意義。それは端的に言うと、”判断の誤りを少しでも小さくできる可能性がある”点です。


例えば、組織サーベイの回答データを(統計分析せずに)単純に集計した状況を考えてみましょう。上司からの支援がどの程度得られているか、営業部と開発部を比較すると、営業部の方が支援を得られていることが分かりました。


この結果をもとに、開発部のマネジメントには問題がある、と判断してしまって良いのでしょうか。そのことを定量的に検討する上で、統計分析は大きな貢献を果たします。


統計分析は万能ではありませんが、少なくとも集計のみで判断するよりは、統計分析を行った方が判断の誤りはいくらか小さくなり得ます。


従業員に影響を与える3つのケース

統計分析の意義を踏まえると、統計分析を実施すると良いケースは考えやすくなります。すなわち、判断の誤りをできる限り避けなければならないケースです。


人事の仕事で言えば、それは従業員に対して影響を及ぼす可能性のあるアクションをとるようなケースでしょう。具体的には、3つのケースを挙げることができます。


(1)データをもとに社内の課題を特定するケース


第1に、人事が自社の課題を見出すケースです。そこにおいて特定した課題がもし誤っていれば、その後に検討した解決策は空を切ります。もしくは、従業員に負の効果をもたらすことさえあるかもしれません。


また、多かれ少なかれ課題は、何らかの形で特定の人(たち)に関連しているものです。例えば、課長の支援行動に課題があると特定したら、課題は課長と関連付けられています。この判断が誤っていれば、大変なことです。



(2)データをもとにフィードバックを行うケース


第2に、人事が従業員にフィードバックし、行動改善を促すケースです。既存の行動に問題があると認定したからこそ、改善が必要だとフィードバックするわけです。


しかし、その判断が誤っていたとすればどうでしょう。本当は何の問題もないのに、改善すべきだと指摘された従業員の立場を考えるとやるせないものです。



(3)データをもとに人事施策を立案するケース


第3に、人事が従業員に対する施策を考えるケースです。人事施策は従業員に様々な影響を与えます(あるいは、影響を与えるために施策を打つという言い方もできます)。


とりわけ、制度を変更したり新たに導入したりするなど、影響度の大きいケースにおいては、一層慎重に誤りの可能性を下げる必要があります。



職業倫理を守る手段としての統計分析

前節で挙げた課題特定、フィードバック、施策立案という3つのケースは、その判断に誤りがあると、従業員に「不利益」が発生する点で共通しています。

従業員が不利益を被らないように細心の注意を払うことは、人事がプロフェッショナルとして「職業倫理」を持って仕事をすることにもつながります。

例えば、古典的なプロフェッショナルとしてその地位を確立している医師ですが、(米国における)医療倫理の原則の中には、次のような項目が含まれています(※1)。

  • 医師は法を順守すると同時に、患者の最大の利益と相いれない要件の変更を探る責任を理解しなければならない

  • 医師は、患者をケアするうえで、患者に対する責任を最優先に考えなければならない

こうした医師の医療倫理は、従業員に対する責任と利益を追求する人事の態度と重なります。その意味では、統計分析を用いることは、プロフェッショナルとしての人事における職業倫理を守る手段でもあるのです。

他の方法も組み合わせる必要がある

ただし、最後に大事な追記をしておくべきでしょう。統計分析を行ったからといって、判断の誤りをゼロにできるわけではない点です。

統計分析はあくまで誤りを減らそうとする、数ある努力の一つです。他にも、現場の従業員に対してインタビューを行い、その内容と統計分析の結果を照合してみる、といった努力もあり得ます。

更には、学術研究を参照し、一般に明らかにされている事実との共通点・相違点を吟味するのも有効です。こうした検討の積み重ねが、判断の誤りを着実に小さくすることになるのです。

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※1:American Medical Association. (2011). Principles of medical ethics, AMA code of medical ethics.

https://www.ama-assn.org/delivering-care/ethics/code-medical-ethics-overview


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