無料オンラインセミナー「ジョブ型雇用の心理学」におけるQ&A

株式会社ビジネスリサーチラボでは、2020年9月24日に「ジョブ型雇用の心理学:ジョブを記述すると何が起こるのか?」と題したオンラインセミナーを開催しました。


当日は講師の伊達洋駆から、参加者からの質問に対して順番に回答していきましたが、時間の関係上、多くの質問への回答が残されました。以下、残された質問への回答になります。

※セミナーレポートは近日公開予定です。


1.役割外行動・組織市民行動を向上させるためには組織は何をすればいいのかに関する研究はありますか。


組織市民行動を高める大きな要因は、「職務満足」です(Organ and Ryan, 1995)。「役割外行動をとろう」と直接呼びかけるより、いきいきと働ける環境を作る方が、筋が良いということです。

2.仕事の範囲にこだわる人という意味でのジョブ型雇用と、専門性の高い仕事を少数精鋭で行うためのジョブ型雇用がある気がしてきました。あれこれやらせるのはめんどくさいから範囲を絞りたい社員を見抜くポイントはありますか?こういった面についてどのようにお考えでしょうか?


直接的な回答をするのが難しいのですが、ジョブの「自律性」について考えてみると良いのではないでしょうか。例えば、専門人材であれば一定の自律性が確保されたジョブが適合するかもしれません。

3.「役割外行動を取れる人材」と言う事を考えると、メンバーシップ型採用の利点を強く感じたのですが、いかがでしょうか?


日本の職場では、役割が不明瞭でお互いの仕事が重なり合っています。そうした職場が上手く回るには、お互いの役割を侵食し合いながらやっていくしかありません。そのプロセスで役割外行動を自然ととれている可能性があります。

4.日本のジョブ流動性の向上にはジョブ制は有効だと思われますが、日本におけるジョブ制はどのように進んでいくと思われますか?


理念的なジョブ型をそのまま適用するのは無理があります。ジョブ型を導入したとしても、現場では変化する状況にあわせて柔軟に対応する。そうした制度と実践が連結しない状態(脱連結)になるのが、想定される一つの未来です。

5.小さい組織で兼務が多い場合は、ジョブ型は向いていないと感じました。ジョブ型はどちらかといいうと大手企業(役割が一定程度明確)の方が向いているという認識で良いでしょうか?


環境の変化が大きい場合、詳細なジョブの定義は向いていません。実際に米国でも、変化の激しいIT業界ではジョブを曖昧化するなどの対応がとられています。

6.とても分かりやすいお話をありがとうございました。ジョブ型では、賃金制度との連動が必要不可欠なので、金銭的インセンティブがジョブのタイプによって異なってしまいます。この点について、補足して頂けるとありがたいです。


社内で独自に賃金のロジックを組み立てていた状態から、労働市場をより意識するようになるかもしれません。特に労働市場で広く求められる人材のジョブについては、この傾向が強く現れるでしょう。

7.職務記述書を作成するより、MBO-Sや1ON1をしっかり運用する方が大切ではないかと感じましたが、研究はあるでしょうか?


職務記述書を作成したとしても、MBOや1on1の重要性は変わりません。何故なら例えば、役割曖昧性は職務記述書の作成だけでは下がり切らないからです(Jackson, Randall, and Schuler, 1985)。

8.That's not my jobとなりがちな若者への指導は?


実は、人は自分自身の何らかの利益に繋がると考えて、組織市民行動をとることが分かっています(西田, 1997)。その意味で、役割外行動をとることが報われる職場を作ることが求められるでしょう。

9.役割外行動も評価対象にする必要があると思いますが、代表的な評価方法の事例をあげて頂けますか。よろしくお願いいたします。


評価方法を特段工夫する必要はないかもしれません。人事評価は、客観的な業績より組織市民行動の影響を受けるという研究もあるからです(Organ et al., 2006)。

10.OCB(筆者注:Organizational Citizenship Behavior; 組織市民行動)が重要なのはおっしゃるとおりだと思いますが、これまでの日本企業ではジョブを記述しないことで、OCBが誘発される一方、役割外行動が多くなりすぎ、従業員に過度の負担をもたらすという負の側面があるという指摘もあったと存じます。今回のコロナの問題を契機として、仮にOCBに面では負の効果があっても、職務記述書を明確にし、このような過度な負担を軽減するという主張もありうると思いますが、いかがお考えでしょうか?


組織市民行動を行わなければならない圧力があると、仕事と家庭のコンフリクトなど負の影響が生じます(Bolino, et al., 2010)。職務記述書を作成しても、圧力が残れば負の側面は引き継がれるため、圧力の緩和が重要になります。

11.どういう形にしていくことで、いまの状況下で成果を出しやすくなると思われますでしょうか。ジョブ型をという風潮が高くなっている中で、ジョブ型にしながら、ジョブ型には振り切れないと思っており(おっしゃっていた組織市民活動が高いほうが成果が出ると思われ、職務記述書を明確にすることばかりでいいのか)。


テレワークではフィードバックやサポートが低下します(Sardeshmukh, Sharma, D., and Golden, 2012)。ジョブ型などの制度変更より、職場でのコミュニケーションを増やす実践が、いまの状況では求められるのではないでしょうか。

12.職務記述書に関しては職務変更が伴う異動と転勤が出来ないというのが海外のもの(日本はそれがないから、異動も職務変更ができる)かと思いますが、新卒一括採用などを行っている企業では職務記述書は馴染むでしょうか。


日本では新卒一括採用の後、企業が育成機能を担っています。もしジョブ型の導入で企業による育成へのインセンティブが弱めれば、誰が若手の育成を担うかという社会的な課題が出てきます。

13.キャリア形成の観点から見たジョブ型のメリット、デメリットどんなことがありますでしょうか?


自分の専門領域を意思決定する時期が論点になると思います。ジョブ型によって仮にその時期が早まれば、例えば教育機関における職業教育の拡充などがなければ、意思決定の質が低下することになりかねません。

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