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コラム

AIが変えるマネジメントの未来:アルゴリズム管理の可能性と課題(セミナーレポート)

コラム

ビジネスリサーチラボは、20256月にセミナー「AIが変えるマネジメントの未来:アルゴリズム管理の可能性と課題」を開催しました。

スマートフォンのアプリが仕事の振り分けを行い、デジタルツールが社員の作業状況をデータ化し、AIが業務プロセスを最適化する。これが「アルゴリズム管理」と呼ばれる新しい管理手法です。

今はまだ一部の企業での導入にとどまっていますが、デジタル化が加速する中、近い将来あらゆる組織に浸透していくことが予想されています。

本セミナーでは、多くの企業が今後直面するアルゴリズム管理の全体像を解説しました。効率性向上やコスト削減といったメリットがある一方で、労働者の自律性や創造性にどのような影響を与えるのか。職場の権力構造はどう変化し、そして社員の幸福感や知識共有にはどんな課題が生じるのかを、最新の研究知見に基づいて検討しました。

アルゴリズム管理は、単純な技術革新ではなく、組織の境界や従業員の働き方を変える可能性を秘めています。配送業や小売業での導入事例から、人事評価や採用におけるAI活用まで、研究例を通して「見えない管理」の実態と対応策を学べます。デジタル化の波が押し寄せる今だからこそ、アルゴリズム管理の光と影を理解することの意義は大きいでしょう。

※本レポートはセミナーの内容を基に編集・再構成したものです。

はじめに

AIやデータ分析技術を活用した業務管理の手法が広まっています。「アルゴリズム管理」と呼ばれるこの仕組みは、かつては人間の管理者が行っていた指示出しや評価、勤務計画などを自動化するものです。私たちの日常生活でも、宅配便や配車サービス、テイクアウト料理の配達、物流センターなど、様々な場面でこうした管理手法が導入されています。

業務効率の向上やコスト面での利点から企業に歓迎される一方、実際に働く人々の視点からは様々な問題点も指摘されています。本講演では、アルゴリズム管理が働く環境や人々にどのような変化をもたらしているのか、研究知見をもとに多面的に探っていきたいと思います。

基本的なスタンス

本題に入る前に、私自身のアルゴリズム管理に対する考え方を簡単に述べておきます。私はアルゴリズム管理を無条件に支持することも、全面的に反対することもしていません。新しい技術がもたらす可能性に期待する一方で、その導入に伴う問題点も客観的に評価すべきだと考えています。

デジタル技術の進化は、仕事の能率向上や生産性の拡大、さらには柔軟な働き方の実現といった恩恵をもたらします。例えば、即時の業務割り当てや、蓄積データを基にした最適ルートの設計などは、人間の判断よりも素早く正確に行える場合があります。

一方で、アルゴリズムによる管理体制は、働く人々の裁量や健康状態、職場での人間関係にも影響します。こうした両面をバランスよく理解し、テクノロジーと人間が調和する環境を追求することが大切でしょう。本講演では、こうした観点からアルゴリズム管理の実情と課題について見ていきます。

自由な働き方の理想と現実

好きな時に好きな場所で、自分のペースで仕事ができる。デジタルプラットフォームやギグワークの広告文として見かける、こうした謳い文句に惹かれて参入する人もいます。しかし、実際の状況はどうなっているでしょうか。

アルゴリズム管理が導入された職場環境では、表面上は自由に見えても、実際にはシステムの指示に従わざるを得ない状況があります。ある調査によれば、料理配達サービスのスタッフが一定期間継続して配達依頼を受けないと、次の週の優先配分から外されたり、特定の配達を断ると次回の仕事が回ってこなくなったりする仕組みが存在します[1]。自由を掲げながらも、実際の選択肢は思ったより限られているのです。

倉庫や製造現場などでも、作業の割当てや手順がアルゴリズムによって自動決定されると、これまで働く人が持っていた判断の余地が減少します。以前なら上司や同僚との対話を通じて仕事の進め方を調整できたものが、アルゴリズムの指示が基準となり、個人の判断力が制限される状況が生まれています。

このような環境では、アルゴリズムの指示に従うことが働く人にとって「理にかなった選択」となります。システムの評価基準に合わせなければ、給与や仕事量に響くからです。そこには、指示に従わざるを得ない構造が組み込まれています。

自律性の減少は、情報格差によっても加速します。アルゴリズムが集めた膨大なデータは管理側や分析担当者に集まる一方、現場で働く人々は自分の業務の背景情報を把握する手段を失います[2]。なぜその作業が必要なのか、どのような全体像の中で自分の仕事が位置づけられているのかを理解しにくくなると、仕事への意義を感じにくくなります。

アルゴリズム管理における自律性の問題は、今後も継続的に検証していく必要があるでしょう。技術の発展とともに、人間の経験や判断を活かせる余地をどう確保していくかが課題となります。

アルゴリズム管理と報酬体系

アルゴリズム管理の導入により、報酬や評価の仕組みも変化しています。一見すると、需給バランスに基づく自動調整や、客観的データによる評価は公正なシステムのように思えます。繁忙期には報酬が自動的に上昇し、成果に応じて評価が計算される仕組みは、透明性が高いように感じられます。

しかし、情報の偏りがある場合、この仕組みは必ずしも働く人々にとって明確なものとはなりません。なぜ報酬や仕事の割当条件が変動するのか、その理由を十分に把握できない状況では、戸惑いや不信感が生じます。アルゴリズムの判断基準が不透明な「ブラックボックス」状態だと、自分の行動とその評価の関連性が見えにくくなります。

評価システムがもたらす格差拡大の懸念も指摘されています[3]。評価が高い人ほど魅力的な案件を獲得しやすくなる一方、低評価の場合は収入が伸びにくいという循環が生まれやすくなります。デジタルプラットフォームでは、評価の変動が短期間で可視化されるため、この傾向がさらに顕著になります。

アルゴリズム管理のもう一つの特徴として、業務と時間の細分化が挙げられます[4]。配車アプリや宅配サービスでは、一回一回の業務が細かく区切られ、その合間の待機時間には報酬が発生しない場合が見られます。働く人は次の仕事が来るまでの間、無給のまま待機状態に置かれることが少なくありません。

この「断片化された時間」の構造は、表面的には柔軟な働き方を可能にするように見えながら、実質的には長時間の拘束をもたらします。仕事量自体は限られていても、次の業務を得るためには常にアプリを起動し、即座に対応できる状態でいなければならないからです。サービスの継続的な利用状況が評価に影響する場合、待機時間も事実上の拘束時間となります。

報酬が実働時間のみに対して支払われる形態では、働く人の総収入が低下する可能性も出てきます。業務間の待機時間や移動時間が報酬に反映されないため、一日の活動時間の割に得られる収入が少なくなります。それにもかかわらず、安定した収入を確保するためには常時オンラインでいなければならないというジレンマが生じます。

アルゴリズム管理における報酬の問題は、働く人々の経済的安定に直結する課題です。透明性の確保や、待機時間も含めた報酬体系の構築が求められていると言えるでしょう。

働く人々の心身への効果

アルゴリズム管理は働く人々の心理や行動にどのような影響を与えるのでしょうか。一つは、アルゴリズムの介入度が強まると、サービスの質に対する熱意が低下する傾向があるということです[5]。機械的な評価システムのもとでは、自分の努力が適切に評価されているという実感が持ちにくくなり、仕事への愛着が薄れることがあります。

また、アルゴリズム管理の強い環境では、その仕事を他の人に勧める行動も減少します。アルゴリズムによる指示や評価が支配的な環境で働く人ほど、知人に同じ仕事を紹介しようという意欲が弱まるのです。

身体面への影響も無視できません。ある研究では、物流センターで働くスタッフがアルゴリズムの提示する順序に従って移動する様子が観察されています[6]。システムが示す最適経路に従わないと評価が下がるため、多くのスタッフはその指示通りに倉庫内を移動します。その結果、作業速度を維持するために急ぐ場面が増え、疲労が蓄積しやすくなっていました。

人間の疲労や体調といった、数値化しにくい要素はアルゴリズムに十分考慮されないことがあります[7]。「遅延」や「エラー」とみなされた結果が評価や報酬に直結するため、働く人は自分の限界を超えてでも一定の成果を保とうとするかもしれません。これは、長期的には健康リスクを高めます。

こうした状況に対して、働く人が監視をかわそうとする行動も報告されています。位置情報を操作したり、システムの抜け道を探ったりといった対策を模索する動きです。しかし、これに対してプラットフォーム側がさらに監視アルゴリズムを強化するという応酬が生じることもあります。管理する側と管理される側の思惑がぶつかる図式が見えてきます。

アルゴリズム管理を推進する中で、働く人々のモチベーションや健康を維持するための配慮が重要になっていくでしょう。例えば、休息を促す通知の導入や、身体状態を考慮した業務配分など、働く人の心理や行動を意識した設計が求められています。

アルゴリズムとの共存術

働く人々は、アルゴリズム管理に対して受け身に従うだけではありません。彼ら彼女らの中には、アルゴリズムの仕組みを理解し、巧みに活用しようとする積極的な姿勢も見られます。アルゴリズムの計算方法を試行錯誤で把握し、自分なりの基準を構築しようとする動きは、多くのプラットフォームで観察されています。

例えば、料理配達のスタッフたちは、どのような時間帯や場所で依頼が集中するのか、どのような対応が高い評価につながるのかを、実践を通じて学んでいきます[8]。アルゴリズムが不透明であればあるほど、自分の経験や仲間との情報交換が貴重な手がかりとなります。「あの地域で待機すると仕事が増える」「早めにアプリを起動しておくと注文をもらいやすい」といった推測が、仲間内のメッセージや休憩時の会話を通じて共有されています。

こうした情報は必ずしも正確とは限りませんが、不明瞭なシステムに対処するための集合知として機能しています。アルゴリズムがどのような論理で最適化しているかが明らかにされない中、働く人は自分の体験や周囲の話を頼りに行動を調整せざるを得ません。

一部の働く人は、アルゴリズムを逆手にとって利益を得ようとしています[9]。例えば、「短時間の業務を繰り返して手早く好評価を蓄積する」「特定の時間帯に集中して活動し、需要が高まるタイミングを狙う」といった方法です。これらは運営会社が公式に案内している方法ではなく、情報交換を通じて発見された「裏技」とも言えるでしょう。

このように、アルゴリズム管理のもとでも、働く人は「アルゴリズムを操る技術」を発達させています。使いこなすほどに報酬や評価が向上するため、アルゴリズムの動きを観察し、自分なりの法則を見出すモチベーションが生まれます。アルゴリズム管理は単なる制約ではなく、ある種の「攻略すべき対象」として位置づけられることもあります。

しかし、働く人が隙間を突くようになると、プラットフォーム側も対策を講じます。規約やアルゴリズムを修正し、「裏技」を封じ込めようとする動きが生じます。すると働く人はまた別の方法を模索するという、いたちごっこが続くケースも見られます。

もちろん、こうした「共存術」が成功するかどうかは一概には言えません。アルゴリズムを上手く活用できる人もいれば、振り回されて疲弊する人もいます。プラットフォームによって仕組みが異なるため、ある環境で通用した方法が別の場所では通用しないこともあります。

それでも、アルゴリズム管理に対する働く人の能動的な対応は、テクノロジーと人間の関係性を考える上で重要な視点を提供してくれます。完全に制御されているように見える環境でも、人間は創意工夫を発揮し、システムを自分なりに解釈し活用する余地を見出すものです。

企業がアルゴリズム管理を導入する際には、こうした働く人の主体的な対応も考慮に入れる必要があるでしょう。規則を厳しくすれば従うだけではなく、人間は常に状況を理解し、適応しようとするものだからです。

実は操られているのかもしれない

一方で、働く人がアルゴリズムを「上手く扱っている」と感じていても、実は逆に「操られている」可能性も無視できません。オンラインプラットフォームの利用者の中には、アルゴリズムの不透明さゆえに過剰な自己制限を行う例が見られます[10]。「このように行動すれば不利になるかもしれない」という懸念から、自ら行動を制限しているのです。

例えば、営業の接触をしすぎるとスパム判定されるのではないかと恐れて控える、低い評価をつけそうな顧客は避ける、などの行動が見られます。運営から直接「こうしなさい」と命じられているわけではないにもかかわらず、「アルゴリズムに目をつけられる可能性」を先回りして警戒するため、自由な活動範囲を狭めてしまいます。

この背景にあるのも、アルゴリズムの仕組みが不透明であることです。評価基準やペナルティの条件が開示されていないため、働く人は最悪の事態を想定して、自発的に身を守る行動をとります。しかし、こうした「表立った抵抗ではなく、自ら身をかがめる行動」は、管理の圧力をかえって強固にしているようにも見えます。

興味深いことに、短い間隔で選択を繰り返すという行為自体が、一種の納得感を生み出す効果もあります[11]。アプリが次々と選択肢を提示し、働く人がそのつど「受ける」か「断る」かを決めることで、自分がシステムを使いこなし、主体的に動いているという感覚が強まります。

しかし実際には、その選択肢自体がアルゴリズムによって制限されています。「受けるか、断るか」という二択しか与えられていない状況では、本当の意味での自由な選択とは言えないかもしれません。それでも、頻繁に選択するという行為によって、働く人は自律性を感じやすくなります。

この「限られた選択肢の中での自己決定」という構造は、アルゴリズム管理の巧みさを表しています。働く人々は自分で決めているつもりでも、実はアルゴリズムが設定した枠内でしか動けていない可能性があります。

アルゴリズム管理がもたらす自己規制のメカニズムは、表面的には見えにくいものの、働く人々の行動や心理に影響を及ぼしています。不透明な仕組みへの不安がきっかけとなり、働く人が自己規律を敷いてしまう現象は、ギグエコノミーが「自由度が高い」と語られる裏側で、見えない拘束が働き手を取り囲んでいる可能性を示唆しています。

企業がアルゴリズム管理を設計する際には、この「自己規制の誘発」という側面にも注意を払う必要があるでしょう。透明性を高め、評価基準を明確にすることで、過剰な自己規制を防ぎ、本当の意味での自律的な働き方を支援することが求められます。

拡大する管理手法

アルゴリズム管理の導入が今後さらに広がっていくことは、ほぼ間違いないでしょう。その背景には、このシステムが企業とサービス利用者の双方にとって利点をもたらすという事実があります[12]

企業側にとっては、アルゴリズム管理によって人的コストの削減が可能になります。人間の管理者が直接監督・指示を行う必要が薄れるため、人件費を抑えることができます。また、データに基づく意思決定によって業務の効率化も進みます。リアルタイムで収集される膨大なデータを分析することで、需要予測の精度が向上し、人員配置や在庫管理が最適化されます。

一方、サービスの利用者、すなわち消費者にとっても、アルゴリズム管理は様々な利点をもたらします。例えば、配車サービスでは、リアルタイムで車両の位置が確認でき、到着予定時刻も正確に把握できます。料金も事前に明示されるため、不安なく利用できるでしょう。

料理配達においても、注文から配達までの全過程が可視化され、追跡が可能になります。AIによる需要予測と配達員の最適配置により、配達時間の短縮も実現しています。こうした利便性の向上は、消費者にとって大きな魅力となっています。

効率化とコスト削減、そして顧客体験の向上という強力な動機が働く以上、アルゴリズム管理は今後も様々な業界に広がっていくでしょう。すでに小売業や製造業、医療、教育といった分野でも導入が進みつつあります。

おわりに

本講演では、アルゴリズム管理がもたらす変化について、多角的に検討してきました。効率化や最適化といった利点がある一方で、働く人々の自律性や健康、意欲といった面で課題が生じていることも明らかになりました。

アルゴリズム管理は決して完全な善でも悪でもなく、その設計と運用のあり方によって、もたらされる影響は変わります。重要なのは、テクノロジーの可能性を活かしながらも、人間の尊厳や主体性を損なわない形での導入を目指すことではないでしょうか。

Q&A

Q:アルゴリズムによる管理は、日本の正社員の働き方に今後どう活用されると考えますか。セミナーの例は、ギグワーカーや業務委託のような仕事量を調整しやすい働き手が前提に感じました。

確かに先行研究はギグワーカーのものが多いですが、正社員の職場でもアルゴリズム管理は導入され始めており、例えば物流倉庫では、正社員がアルゴリズムの指示で商品の移動などを行う例が報告されています。

専門知識を活かすナレッジワーカーの業務でも、生成AIなどの技術発展に伴い、アルゴリズム管理が進展することが考えられます。例えば、人間には手間のかかるプロジェクト管理などをアルゴリズムが効率化するイメージです。全ての仕事を代替しなくても、一部をアルゴリズムが担うといった形は十分に想像できます。

Q:アルゴリズム管理が進むと、従業員の主体的なキャリア形成を企業はどう支援すればよいでしょうか。仕事が細分化され、全体像が見えにくくなるのではと懸念しています。

アルゴリズム管理下では、従業員が目の前の作業に集中しやすくなる反面、現在取り組んでいる仕事と自身の長期的なキャリア計画との関連性が見えにくくなる可能性があります。このような状況に対し、例えば、多様なキャリアの道筋を示したり、先輩社員が助言するメンター制度や専門家によるキャリア相談を通じて、従業員一人ひとりがキャリア目標を設定し、主体的に取り組んでいけるよう後押しすることが求められるでしょう。

Q:アルゴリズム管理の導入は、中間管理職の役割にどう影響するでしょうか。管理業務の一部自動化で、マネージャーの意欲低下や存在意義への不安が生じませんか。

重要なご指摘です。アルゴリズム管理が導入されると、マネージャーが担ってきた日常的な業務管理や監督といった仕事の一部は、アルゴリズムが代替したり補ったりする可能性があります。その結果、マネージャーは、これまで多忙で手が回りにくかった人材育成やチームビルディングといった、本来注力すべき本質的な業務により多くの時間を割けるようになるという、前向きな変化が期待できます。

また、アルゴリズムが収集・分析するデータを活用し、部下一人ひとりの状況に合わせた、きめ細やかな個別対応が可能になるかもしれません。ただし、そのデータの解釈や活用方法については、倫理的な配慮と慎重な議論が不可欠です。マネージャーには、部下である「人」と「アルゴリズム」とを効果的につなぎ、より付加価値の高い、人間にしかできない専門的な業務に特化していくことが求められるようになるでしょう。

Q:正社員に対してもアルゴリズム管理の導入が増えると感じています。長期的な雇用関係やキャリア形成への影響を考えると、人事として今後どのような点に留意すべきでしょうか。

おっしゃる通り、正社員へアルゴリズム管理を導入する際は、短期的な業務効率化だけでなく、中長期的な視点で従業員のキャリア形成や成長を考慮する必要があります。重要になるのは、アルゴリズムによって割り当てられた業務が、従業員自身のキャリア目標の達成やスキルアップにどう貢献するのかを意識してもらい、考える機会を提供することです。

具体的な施策としてはキャリア面談などが考えられます。その場で、従業員個人の意向、アルゴリズムからの提案、そして会社全体の方針といった異なる要素を調整していきます。個人が目指す方向性と、アルゴリズムや組織が示す方向性が常に一致するとは限りません。ずれが生じた場合には、本人の希望や適性を踏まえた配置転換を行ったり、新たなスキルを習得するための学習機会を提供したりすることも大切になります。

脚注

[1] Griesbach, K., Reich, A., Elliott-Negri, L., and Milkman, R. (2019). Algorithmic control in platform food delivery work. Socius: Sociological Research for a Dynamic World, 5, 1-15.

[2] Parent-Rocheleau, X., and Parker, S. K. (2021). Algorithms as work designers: How algorithmic management influences the design of jobs. Human Resource Management Review, 31(4), 100838.

[3] Kadolkar, I., Kepes, S., and Subramony, M. (2024). Algorithmic management in the gig economy: A systematic review and research integration. Journal of Organizational Behavior. Advance online publication.

[4] Piasna, A. (2024). Algorithms of time: How algorithmic management changes the temporalities of work and prospects for working time reduction. Cambridge Journal of Economics, 48(1), 115-132.

[5] Lu, Y., Yang, M. M., Zhu, J., and Wang, Y. (2024). Dark side of algorithmic management on platform worker behaviors: A mixed-method study. Human Resource Management. Advance online publication.

[6] Baiocco, S., Fernandez-Macias, E., Rani, U., and Pesole, A. (2022). The algorithmic management of work and its implications in different contexts (JRC Working Papers Series on Labour, Education and Technology No. 2022/02; JRC129749). European Commission.

[7] Wood, A. J. (2021). Algorithmic management: Consequences for work organisation and working conditions (JRC Working Papers Series on Labour, Education and Technology, No. 2021/07). European Commission, Joint Research Centre (JRC), Seville.

[8] Heiland, H. (2025). The social construction of algorithms: A reassessment of algorithmic management in food delivery gig work. New Technology, Work and Employment, 40(1), 1-19.

[9] Jarrahi, M. H., and Sutherland, W. (2018). Algorithmic management and algorithmic competencies: Understanding and appropriating algorithms in gig work. Proceedings of the International Conference on Information Systems (ICIS), San Francisco, CA, December 13-16, 2018.

[10] Bucher, E. L., Schou, P. K., and Waldkirch, M. (2021). Pacifying the algorithm: Anticipatory compliance in the face of algorithmic management in the gig economy. Organization, 28(1), 44-67.

[11] Cameron, L. D. (2024). The making of the “good bad” job: How algorithmic management manufactures consent through constant and confined choices. Administrative Science Quarterly, 69(2), 458-514.

[12] Azevedo, E. S. F., de Souza, D. F., and de Mendonca, J. R. C. (2023). Benefits for whom? A systematic literature review of algorithmic management in digital work platforms. IOSR Journal of Business and Management (IOSR-JBM), 25(8), 17-29.


登壇者

伊達 洋駆 株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。著書に『60分でわかる!心理的安全性 超入門』(技術評論社)や『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)、『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)などがある。2022年に「日本の人事部 HRアワード2022」書籍部門 最優秀賞を受賞。東京大学大学院情報学環 特任研究員を兼務。

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